2023年12月17日日曜日

その日は

 その日というのは、2016年7月26日。その日に何があったかを思い出す人も少ないだろう。けれども遺族や事件の関係者はその日が近づいたら何ともやるせない居心地の悪い気持ちになるはずだ。その事件の日は一日雨が降っていた。相模原障害者施設殺傷事件で、被告である植松聖(当時26歳)は、雨の日入所者19人を所携の刃物で次々と襲い刺殺した。また施設にいた関係者26人に重軽傷の怪我を負わせ、その罪(殺人等6つの刑が問われた)により2020年3月16日横浜地裁は、死刑を植松被告に言い渡した。植松はその施設「神奈川県立津久井やまゆり園」で職員として働いていたことがあった。彼のように差別的感情を何時の段階で抱いたかは、私は知る由もないが、事件は起こってしまった。その事件の日が雨だったということは、特に私と息子はよく覚えている。というのは、その日まさに事件現場近くにいたのだから。なぜその日にちょうど相模原に行くことになったのか。元々車(ホンダのNボックススラッシュ)がカスタム車で、その地方に所在する小さな会社がいくつかのカスタム車を手掛けていて、私がその会社のオーナーに問い合わせを行い現地で購入することになったからだった。そして受け取ってから直ぐに初めて川崎大社という所で車のお祓いをしてもらい、その夜は横浜の日航ホテルに泊まり港やレンガ倉庫を見て回った。そして地元に帰ってからある日自分が持っていたDVDの映画「ラストエンペラー」が車で見えるかを試していた。するとCDは読み込めてもDVDにはそのナヴィゲーションシステムが対応していないことが判明した。「あれ、やっちゃったかな?」と社長は言い、修理交換するからどうしましょうと言うので、その夏に行きますよ、ちょうど尾瀬に旅行に行くことにしているから、途中で寄りますと答えた。



写真のワシントン・ポスト紙の記事は「犯人は安楽死させる手立てとして大量殺傷を思いついた」と報じている。

 その日は雨だった。相模原の街の国道沿いにレストラン「ガスト」が目についたからそこで昼食を取り、会社の社長斉藤さんと待ち合わせすることになったのだった。暫くして息子が言う。これ、デジャブだ、と。どういう意味かと問えば以前仲間とこのガストに車で立ち寄ったことがある、ということだった。妙なこともあるものだけれど、無事修理が終わって車を引き取って栃木の日光にナビを合わせ走らせた。日光のいろは坂を登り詰めた所に市営の駐車場があり、そこで今夜は車泊しようということになり、誰もいない街灯だけの暗い駐車場でFMラジオを聴きながらの夕食を取った。まだ雨は結構降っていたから食事を作るにも難儀だった。車内に落ち着き食べながら聞いていると、ニュースが冒頭の事件の概要を伝えていた。私たちは予定どおり翌日日光の東照宮に参詣したり、修善寺湖のほとりにあるイタリア、英国の別荘を見て廻った。もう雨は止んでいて湖も綺麗に空を映していた。そして群馬の尾瀬に行き往復42キロを福島の県境まで歩き、引き返すという結構ハードな歩行軍をしたものだった。今では熊も出没すると伝えられている。

 

 今日(2023年12月17日)はTVニュースでも報道していたが、大阪の北新地(住所は曽根崎新地であるが人々はそう呼ぶ)のビルの一角にあった心療内科に放火され、犯人と院長を含め27人が亡くなっている。私は最近早朝桜橋交差点の角にあるスタバによく入る。珈琲を飲んでそこで自分の創作をiPadに打ち込んでから、南へ約150メートルのところにある堂島アヴァンザにある仕事場まで歩く。ちょうどその間に事件現場の堂島北ビルがあるのだ。最近よく考えるのは、なぜ事件は起きてしまったのか、もしも防げるとしたら何をしたらよかったのか?ということ。京アニの事件も同じ。あそこには当時施設警備の人はいなかったはずだ。もしその日一人でもそういう人がいたら?京アニのビルには当日NHKが取材するアポがあったので、ドアは開放されていた。そのことにより犯人は引火性の液体を入れたポリ容器をカートに乗せて押し、悠々というか容易にドアから侵入したのだった。社長は突然の事件に衝撃を受けた、或いは過去に何度か容疑者から会社に対する抗議を受けていると明かしてはいたが、警備上の何らかの手を打っていなかったのではないか。私はその点が腑に落ちないと今でも思っている。施設警備を厳重にしていたら防げたかもしれないからだ。京都府警のお巡りさんは当時そんな脅迫を受けていたのを知っていたのだろうか、そして立ち寄ったり巡回を強化していたのだろうか?報道の中でそんな内容の活動があったことは一度も聞いたことがない。逆に遺族は全く疑問に思わないのだろうか、そんなことを訝ることもある。もしも….。いくつかの事件でもそういった疑問や、何か一つでも手立てがあったら救える命もあったのではないか、という気がしてならない。



2023年12月11日月曜日

もしも…

 歴史の「もしも」は御法度であるというのが定説になっている。なのに誰しもあの時もしもこうだったら、とか後悔の念をつい口にしてしまう。今まさに自民党の安倍派潰し、もしくは自民の辞任ドミノが止まらない。もしも、自民党が下野して、また立民や維新、その他エトセトラの連立政権が誕生でもした日にはそれこそ、あのジンクスが思い浮かんでしまう。一度目は神戸、淡路で発生した大地震(社会党などの連立政権)、二度目は東北沖の大地震(民主党政権)。もし次に今の野党による連立政権が誕生したら……。歴史は繰り返す。されどそこから教訓を学ぶものはいないと言ったのはヘーゲルだったか?もしも安倍さんが総裁にならずにあの時一度でも谷垣さんが総裁になっていたら?自転車事故を起こさずに安倍さんがキャスティング・ボードを握ることが少しでも延びていたら?もしも、祖父の代から続いていた統一教会への(からの)働きかけがなされずに、森友学園の土地も関与せず、獣医学部を加計学園だけでなく京都産大も認可されていたら?桜の木の下に集まった人達の食事もパーティー券ではないけど参加費を適正に徴収できていたら?あの時安倍さんが西大寺の駅前に行かなかったら?西大寺を管轄する奈良西署で失くなっていなかった拳銃の弾が、誰かが早く見つけて解決し、同僚を疑って無実の罪で精神的に追い込んだことにより記者会見を暗殺事件当日開くことがなかったのなら?

 ケネディ暗殺に関する真実が公表されるのは2039年だそうだ。落合信彦の「2039年の真実」は、そのことを描いたものである。もしも単独犯とされたオズワルドが護送中に警察官に銃で撃たれて簡単に死亡していなかったら?元々日本に来たことのある彼も暗殺の実行犯として「相応しい」人物として仕立て上げられていたのだろう。当時のアメリカ社会は黒人差別とマフィアによる闇社会が蔓延(はびこ)り、そういった社会事象を解決すべく新たな組織としてFBIが誕生したのだった。それからマッカーシー旋風という赤狩り(共産党員をたたく社会現象)に移行していく。その中には作家のヘミングウェイも含まれていた。ベトナムの赤化するのを防ぐという、いわゆる「マクナマラ・ドクトリン」という戦争介入の口実を与えていくのである。当時国防長官であったマクナマラは後年自分自身の名前を冠した理論が間違いだったことを認めている。なぜあんなにも必死になってベトナムに介入したのだろうか?確かにメコン川の三角(デルタ)地域には麻薬の生育に適する肥沃な水域があった。そして次に介入したのは同じ麻薬の栽培に適した(?)砂漠のようなアフガニスタン。日本の戦国時代でも「正義の御旗」と言ったように、戦争を正当化する口実が必要だった。中国は香港を国安法により反社会分子を一掃した。次には台湾を狙っていると言われている。

 私たちは歴史から何を学ぶべきなんだろうか?

 既にロシアは国民に対しこれは合法であり、正義の戦いであると主張して国境を突破しウクライナに侵攻した。プーチンに正義があるというなら、ジェレンスキーにも負けられない正義があるはずだ。そして次にパレスチナがイスラエルに侵攻した。おそらくモサドというイスラエルの世界屈指の諜報機関であるなら全てお見通しだったはずだ。9.11を見れば分かる。アメリカに侵入したアラブゲリラ(テロリスト)の存在はCIAはずっと以前から把握していたし、「泳がせて」いたはずだ。それは日本の大戦に火蓋を切ったあの真珠湾攻撃とも似ている。先手を打たすということは、後に国民に「戦争の大義」を与えることが出来るからだ。イスラエルのネタニアフ首相も当然情報は把握していたはずだし、パレスチナのハマス側の軍事基地を病院施設の地下にあることも把握していたことも頷ける。(2023.12.12更新)



 写真は、今日丸善&ジュンク堂書店梅田店で買った台湾の作家による「守娘(もり むすめ)」です。絵が実に素晴らしい。舞台は清朝時代から続く台湾の世相。気になって購入しました。本当なら12月にお前が行きたかったルミナリエがあるはずだけど、新型コロナウィルスの関係で来年1月に持ち越しとなっている。













2023年12月1日金曜日

主婦のためのQ&A

 1️⃣私人逮捕って誰でも、どんな犯罪でも一般人の私でも逮捕来るんですか?

 このところ、いわゆる私人逮捕系YouTuberが二人も逮捕されている。彼らはYouTubeというTVでは表現できないところで、彼らが言うように「何か貢献できないか」と本来犯罪であれば許しちゃいけないことを、正義のヒーローみたく悪い人の前に踊り出て逮捕する(警察24時の見過ぎか)、出来なければその一部始終をネットに乗せて愛好家の登録者数を増やす、増やすことにより広告収入を得ようとする、その点ではかの参議院議員になってドバイで隠れていたガーシーに似ているとも言える。彼は悪趣味が法を超えた事で御用となってしまったけれど、法を犯して金をせしめると言うのなら銀座の高級時計店に押し入る強盗と何ら変わらない。ここで言う私人逮捕については、憲法第三十三条

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

 この憲法の規定では「何人も現行犯であればできる」と規定してはいるが、刑事訴訟法では各犯罪形態によっては制限が設けられており(例えば軽犯罪法や道交法とか)どんな罪も、そして誰しも逮捕できるという訳ではないことに注意を要するんです。また、これに関してTV番組の中で菊池弁護士が解説していて「私人だし逮捕しますと告げる必要はありませんね」等と言っておられましたが、それは間違いです。警察、私人に関わらず、もし何らかの犯罪で逮捕するのであれば、直ちに「逮捕する理由(何の罪で逮捕するのか)」と、「あなたを逮捕します」と逮捕する旨を告げなければいけません。告げなければならない理由は、被疑者の防御権の行使に対抗するためです。当然と言えば当然です。ただし、私人逮捕系Youtuberが配信していたように、何ら罪もない人をあたかも罪をたった今犯したようにして逮捕するというのは、あまりにも無謀であり、もしも公務員であれば特別公務員暴行凌虐罪に問われます。そしてそれが立証されれば、その時点でその公務員は失職します。

2️⃣地球の温暖化や生態系の変化で、本来山の中で生息していた獣が人間の生活環境の中に降りてきて、最近では威嚇し、ひいては人をも殺してしまう事態になっていますが、解決できるのですか?

 以前に「OSO18」のところでも取り上げていますが、悲しいかな解決には程遠いのが現状です。これは日本の農家や酪農家で被害が出たつい数年前の事態より進んでおり(悪化している)、既に学童の登下校も危ぶまれているし、例えば農家では電気柵を設けているのをご存知でしょうが、そもそも人間が森林の中で彼らの住む棲家を追いやり、植生という概念さえ取っ払って、自分の都合のいいように環境を変えたことに起因します。それを是正するには国や自治体が農家や畜産農家、あるいは山林を所有する人と協働して、本来の人間と動物が共存できる環境を整えないといけないのです。それには時間がかかります。明日明後日に解決するようなことではありません。なぜなら人間が既に山を切り崩し、川を堰き止めてダムを設け、太陽光発電のためと言っては山林を切り開き、風力発電のためと言ってはそこらじゅうの環境を変えてきたんだから今私たちの生活を彼らが急に脅かしているのを何とかして下さいというのもどこか虫の良すぎる話なのです。

3️⃣大麻グミが流行しているように大学や若年層にまで影響が出ていますが、今後新たな問題が発生しますか?

 これについては厚労省は早期に規制を行っている。大阪の販売店を警察などが捜索したり、日本大学のアメフト部が廃部になった(追記;理事会では廃部を決定しているが、学生等の反対にあい立ち往生しています)ように大麻が浸透しているのは事実です。アメリカや諸外国で大麻が合法化していると主張するのは営利目的であって(政府や自治体であれば税収が期待できるから)、大麻や覚醒剤などの薬物が人間の中枢神経に影響を及ぼし、殆ど廃人化するのだということはもっと認識すべきです。大麻の薬理作用は人間に薬に対する強い依存性をもたらします。先日も学園前から乗車した客で電車の車内で薬物(おそらく大麻)の影響により、十歳は老けて見えるおそらく十代の女性(同じ人物が10日程して同じ時間に乗っていた)がソワソワして落ち着かなくゆっくり座っても居られない状態でいるのを目にしました。おそらく西成にいる売人から薬物を受け取るのだろうと推測しました、日本橋で降りた(その後メトロ堺筋線に乗り換えたはず)ので。一応大阪の鉄道警察隊には連絡してますが。

 おそらくお金儲けが目的の大阪の販売店が摘発されましたが、中にはそれを使用している男性が街頭インタビューで「時々眠れないことがあるのでおれも使っています」と答えている人もいるくらいだから、今後安易に薬物の使用が広がる懸念があります。そしてこの種犯罪は必ず若年化します。その昔少年のシンナー中毒が社会問題化した時期がありましたが、今どきそんなものを吸引したりする少年はいません。それにとって代わったのが大麻だということです。

4️⃣AirTagで探して ペアリング

 夫が浮気していたり、持ち物が直ぐにどこかへ行ってしまう、迷子や迷い高齢者の捜索にも使えるAppleの商品です。このエアタグをカバンとかにくっ付けるのに適したグッズがあるけれど、そこにうまく収納すればOKです。ただ最初このAirTagというものは携帯電話(相性であればiPhoneがいい)のBlootooth 機能を利用するのだけれど、これが中々難解な代物です。検索したら色んな人が書き込んでいるが、要するにケータイの「設定」の中の「Bluetooth」で「自分のデバイス」に表示されないからです。表示されるとしたら、Apple Watch と AirPods Proくらい。あとは未接続と表示されているのは今手持ちでないデバイスです。実はセキュリティの関係で表示されないようになっているのです。「ユーティリティ」の中に「探す」というアイコンがあり、そこをクリックすると例えば最初にAirTagの電池に付いていたシールを外すときに名前を付けるのですが、適当な「kenのバッグ」と名前を付けていたら、その「持ち物を探す」のなかにちゃんと「自分が所持中」と出ます。やったことないけど、callすることも可能だとか。


5️⃣離婚に際しての諸問題について

 実は今朝夢を見た。それはショッピングセンターの中で、母親がベンチに座り居眠りしている、その前に娘が立っているシーン。そこにぼくがいて、高校生の彼女にいう。「きれいだね」娘「そう。綺麗でしょ。でもお母さん、離婚するんですよ」それだけの会話だったけど、その女の子(16か17歳くらい)は屈託なく、笑顔が明るく、育ちが良いということが分かる。その子のお母さんが眠っているのは、買い物や仕事やらでちょっと疲れたからかも知れない。お前もいつもそばで眠っていたからね…。

 離婚するということは、それまでの辛抱した期間があると思う。最初は仲の良い上司と愛弟子がいるのを彼がやっかんだりして何とかその愛弟子を手に入れることが出来たし、彼女のお母さんも喜んだ。彼女も結婚願望もあったしそれはそれで良かったと思う。前途有望な青年なら特にそうだし、そして子供が産まれてマイホームを建てることも出来た。卓球の愛ちゃんについては以前書いたことあるけど、彼女も最初は確かに幸せ一色だった。

 そのように夫も順調に出世コースに乗り、子供も育っていく。何不自由ない暮らしというものが手に入っていたはずだ。夫が浮気しなければ。そのうちいつしか不自由な生活に転じてしまう。ローンの支払いもあるから取り敢えず転職して次に備える。そのうちやっぱり別居して離婚という結論を出す。そこで誰しも問題に直面するのは、夫婦の「財産分与」という事。マイホームに離婚後住むのが夫か妻かで変わるが、夫が続けて住むなら、自宅がいくら売れるか現在価値を試算して財産として妻に半分を分ける。これは即金で現金でなければならないと弁護士は言うはずだ。現在2千万円で売れたと仮定したら、それぞれが1千万円ずつに分ける。ローンについても負債も一応資産に入るから相談して分ける(でも慰謝料とかの問題があれば相殺することも可)。あとは子育ての問題。うちは当時ぼくが育てるのに自信がなかったというのもあったけど、妻が二人とも自分についてくると言うのを信じて親権を争うようなことはしなかった。争ってまでしたくないというのもあったと思う。一応調停で財産分与は決められた。元々退職金の半分は二人の子供に渡すと妻と合意が出来ていたし、大学に入るための学資保険だったかを郵便局でしており余裕があったけど、息子の私大の学費は自分の時父親がそうしたようにずっと面倒を見ていた。家はぼくの父親の持ち家だったけど、その辺だけはスムーズにいったように思う。妻ももしかして退職金を上手く三人で分割したのかも知れないけど。その後も子供二人を扶養しているのに扶養手当が付かないという時期がずっと続いた、切れるまで。今朝の夢では娘さんもあっけらかんとしていたし、あまり深刻に考える必要はないかも知れない。ところで父親が亡くなって七回忌に息子を引き取る必要が生まれた。それは息子というのは父親との交流がどうしても必要であり、父親の愛情がなくなればおかしくなるという事があるのだとはじめて理解した。確かに色んな諸問題は生まれるのだけれど、お互いにもし別れた方が母としての自分にも、そして子供にとっても別の道(それぞれの幸せ、必ずしも離婚したから絶対不幸になるということはない)があるからね。娘は大学へ進学しなかったことをぼくはずっと気にしていたけど、自分のしたい道があると専門学校に入りそのため学資保険とは別に高くついたと後で母親から教えてもらった。愛ちゃんの場合はもう別の道を見つけているし(週刊誌的なバッシングは聞かないことにして)人は変わるからそれでいいんじゃないかと思う。ぼくは(こう言う言い方似合わない)今の本屋さんの仕事し出して、今更ながら改めて色んな分野に興味を持ち出した。英語、コンピューター(イラストレーターのようなデザイン、マルウエアのようなネット犯罪やらエトセトラ)。歴史(英語で書かれた歴史の本も中古で注文した)や人生論的なやつ、書店で買えなければネット(メルカリとかブックオフ)で注文して手に入れている。世の中には変わった事する人もいて、わざわざ本を裁断してスキャナーで1枚1枚読み取ってデジタルファイル化している。そのバラバラになった本を買うこともある。

 朝夢の中で出会った娘さんにもそのいくつかは教えられるかも知れないね。お前に似ていたよ。居眠りもそうやけど、よくため息をついていた事を思い出すなぁ。それについては謝らんとあかんねんけど….。仕事で毎日平均1万5000歩だと結構足にくるわぁ...。でもマッサージは月一にしているから。

娘さんが好むであろうPCデスク環境

6️⃣東芝はなぜ上場廃止になるのですか?

 東芝問題は奥が深いと思う。例えば、ぼくが台湾観光で訪れた109というビルディングのエレベーターは、一時期コマーシャルでも10円硬貨がずっと床の上でたったまま最上階まで人々を案内してくれるEVだと宣伝していて、当時の人々はこの世界的な安全と信頼度を誇る日本の東芝のエレベーターを誇りとしたものだった。また昔はサザエさんのスポンサーだったし、東芝日曜劇場も日本ではずっと日曜には馴染みの代表的なドラマだった。そんな電機メーカーでパナソニックやソニー、日立などと並ぶ大企業に翳りが見えたのはやっぱり時の社長の行状が企業の行方を左右したからなのかも知れない。松下幸之助は何百年という先を見据えた企業経営をモットーにしていた。中華に身売りしなければいけない程の何があったのだろうか?詳細ついては別の機会に譲ることにしますが、アメリカのウエスティングハウス社の原発を競って傘下に治めたのはいいが、9.11の事件後の耐久費用が高くつき過ぎて手放したいくらいに予算が膨れ上がった。原発は親方日の丸で、最後は必ず国が面倒を見てくれるという企業の甘さがある。そして会計上はそういう時に企業は「のれん代」とか言って、別の小さな企業でも買って傘下に治めたように見せかけて、その買収費用をそれまでの損失と相殺する。シャープでも中華に身売りしたが、ただオリンパスや東芝の医療機器の部分は国内メーカーが抑えている。アイデア商品ではシャープと言われ、我が家もシャープ一色にした時はあった。

 今日は12月1日で、上場廃止が12月20日だからクリスマスまで待ってくれない。つまり東芝の株を持っている人はその株券は今年紙屑になってしまうということです。

東芝上場廃止に

  11月28日付の東芝に関する最新情報には、「レアメタルを使わずに超急速充電が可能なリチウムイオン電池を世界で初めて開発したと発表しました。5分間で80%までの充電が可能で、6,000回以上の充放電にも耐えられるとしています。開発したのは「LNMO」というタイプの電池で、電気自動車への応用も可能な高い電池容量も見込めるということです。東芝は、2028年の実用化を目指すとしています。」(テレ東BIZ)






2023年11月13日月曜日

Escape

   Alexaが「何からエスケープですか?」と女性に問いかける。女性は黙っている。Alexaが更に「あなたは今、日常のさまざまな束縛から逃れたいから私のところに来ているんです。一つの答えが欲しいからなんです」とあの調子で話しかける。そしてすかさず更に「今あなたが思っている事をここで私に話しかけて下さい」と丁寧に言う。なおも黙っている女性にAlexaが「口に出すことで、もうあなたの一番やりたいことが何なのか答えが出てきますよ」と促すように女性に言う。「それを一緒に考えましょう」何か今までAIにそんな風に語りかけられた経験がないから半ば内心女性は驚いている。「きっと様々な束縛、特に家庭のこと、子供のことやそれにまつわる色々なこと、配偶者のこと。最近あった事や過去の出来事や環境からの束縛。そういった束縛があなたが一番したいことを妨げているのでしょう。違いますか?」女性は少し涙目になっているのが自分でも分かった。でもなぜAIにそんな風に言われて、感情が少しでも乱されるんだろうと考えてしまう。「それであなたはここにやって来たのですから。もう答えは出ているようなものですよ。あとはあなたが決心するだけで」

 女性は初めてそこで「はい」と答える。「あなたの笑顔を取り戻して欲しい。誰かがそう言ってますよ。あなたにも聞こえているんじゃないですか?魂の声が。」

「魂の声ですか?」と女性はAlexaに問いかけてみる。「そうです。あなたの背負ってきた苦労を取り払うのは自分だと言ってますね。その人が誰だかあなたもよく知っている人ですね?」

 女性は心当たりがあったから静かに頷く。「その人は前世から一緒だった人です。せっかくあなたと現生で出会ったのに別れなければならなくなって悲しんだはずです。実はあなたもそうだったんですよね。それは私にも分かります。その人はそれでも何とか自分なりの道をつけているところです。あなたはその道を照らす灯りになって上げなさい。それがこれからのあなたの使命です。」一気に語りかけるようにAlexsaが話すと、何だか女性は気持ちがすーっと軽くなったような気がした。心に重いものがずっとあったのが何だか軽くなって、笑顔を取り戻すことができそうな気がした。

     Illustrated by Ken

 Alexaは話すときにその丸い形が青白く回りながら光っている。女性はそのぐるぐる回る光を見つめながら自分の気持ちを確かめていた。そうだ自分はここにやって来たのは、誰かに自分の今の気持ちを聞いてもらって少しでも負担を和らげたいと思ったからだった。自分より頭脳明晰なAIが自分のことをまるで全て知り尽くしているのが不思議でしょうがなかった。「エスケープ。エスケープ。」二度ばかり同じ言葉をつぶやく。「アレクサ、ありがとう。助かったわ。」Alexaは「いえ、どういたしまして。私にできる事ならいつでもお手伝いします。またいつでも私に話かけてくださいね。」と優しく女性に答えた。 


Borne Supremacy







2023年10月21日土曜日

Paypayアプリに注意⚠️

    ネットで検索したり、音楽を聴いたり(今はapple music)するのが誰しも普通のことで疑わないし、当たり前と思っているから、使い勝手がいいとそれに頼ってしまう。朝改札を入る時には財布ごとピっと鳴らす。そこにはPiTaPaカードが入っている。難波から梅田まで大阪メトロ御堂筋線では apple watchをかざす。アプリで(関西の人はカードが手に入らない)Suicaカードを反応させる、ピッって。

 ポイント・カードが最近アプリになっていたりする。ドコモのdポイントや(Tポイントはカードで)UNIQLOやダイキのDCMなどたくさんのアプリがあるのも誰でも同じと思う。どこにアプリがあるか直ぐに見つけられない人は「🔍アプリライブラリ」の中に「ゆ」と入れたらユニクロのロゴが直ぐに見つかるから。そして今日のお話はペイペイのアプリについて。ちょっと前に日曜の昼の番組で上沼恵美子が「私ペイペイ使ってるのぅ、あの声でペイペイ!っていうとそれで決済、いいわあ」残高どれくらいですか?「まあ50万くらいかしら?」煙に巻く。庶民は6、7万で右往左往する羽目になってしまう。私もそのPayPayアプリを時々利用している。

 もしソニーのサイトであなたがクリスマスも近いことだし、今売り出したタイミングでプレイステーション5という新型のゲーム機を買おうとすると、次に決済手段を何にするかを選ぶことになる。クレジット払いでもいいし、PayPay(カード)でもいい。そこで一つ問題が起きてしまう。このPayPayという決済手段はあくまでもクレジットカードであり、アプリではないことが重要です。というのは、決済手段としてペイペイを選ぶと、ケータイにダウンロードしているPayPayアプリが作動してしまうからだ。するとどうなるか。もちろん新型ゲーム機は6万以上いるから必要な金額を残高にチャージすることになる。この時に重要なことは、先ほども言ったようにソニーサイトでもAmazonにしてもPayPayアプリとは紐付けられていないのだ。「PayPayカードは、PayPayカードライトとは違う」ことが調べたら確認できる。いくら残高を増やそうとしても、ペイペイアプリ上は「決済が完了しました。ソニーストアに支払い 2023年10月21日19時16分56秒 67850円」と表示される、ことはされるが、そこからソニーに画面が戻らず、従って「My Sony」で自分の取引履歴を確認してもいつまで経っても表示されず「え?!」となってしまうだろう。この辺は、ある人はPayPayアプリのトラップtrap(罠)と呼んでいる。誰も教えてはくれないし、PayPayアプリには約一時間もすれば決済が出来ていないから返済されるから安心はするが、途方に暮れることになるかも知れない。

 結論を言えば、通常のクレジット決済を選ぶしかないということ。もし仮にアプリに7万円余りが入ってしまっても、もう出せないから、今後は「ヤフーショッピング」などで商品を買うか、ロフト等で文具を買ったりした時にPayPayアプリが使えると思うから利用すれば良いと思われる。元々、Yahooあるいは親会社のソフトバンクは、Yahoo BB!というネット機器のモデムの販売から業績を拡大させ、携帯電話の販売などで販路を広げていった。私がまだソフトバンクでiPhoneを利用しタイに行っていた時に通知が届いた。このままだと10万円の額が課されます、というもの。落ち落ち観光も出来ないので、直ぐに電話をしたら、こう言われた。「違約金が1万円になりますが、今回はこれで完了とします」みたいな解決案を出してきたのだ。誰しも10万円取られるくらいなら1万で済んだんだから胸を撫で下ろすところだと思う。つまりこの辺が悪どい業者たる所以である。ここには書かないけどネットではGMOも殆ど詐欺まがいと言っても決して言い過ぎではないだろう。ヤフーオークションはヤフオクに変わり、今でもメルカリと並んで国内では人気の売買サイトである。そして当時早くもフリーメールで名を馳せ、それが犯罪を誘発するにも一役かった。ライブドアも似ている。そうして世界一のaolのメールは日本から消えた。


 少し今回の話題とはそれるけど、梅田の紀伊國屋書店などで何がブームかと言えば、コミックなら「葬送のフリーレン」や「シャングリア・フロンティア」などで、雑誌なら「Myojo」。過去には「明星」が走りであるが、集英社の今でも超売れてる芸能雑誌だ。昨日のこと、ある女性は発売されたばかりのその雑誌を10冊以上もまとめ上げて買って行く。あなたはその意味がわかりますか?この現象は今の時代を象徴しているかも知れない。一冊にはジャニーズJr.の投票券が入っているのだ。だから彼らに少しでも多く投票してランクを上げようとするファンならではの行動なのである。まもなく街はクリスマスを迎えるが、私は昼2時を過ぎたら時々新梅田食堂街で特上の親子丼を注文しようと券販機の前に立つ。既にそこには中国人の男性が千円札を一枚一枚入れて4人分のボタンを押してお釣りを取る動作を繰り返す。それでも美味しいから文句は言わない。毎日1万5千歩以上を歩く足をそこで休めて、また歩いて街に消える。思えば高校一年で万博があって、三番街が出来て、川の流れる街が地下に出来、動く歩道moving pavementが出来て、周辺には茶屋町の商店街が生まれて少しは風景は変わっているが基本的には変わっていない。クマが人を襲うニュースが流れる度に気になる自分ではあるが、少しでもより良い環境にしたいとお前のことを思いながら今日も一日が過ぎていく。










2023年10月15日日曜日

Where's Wally? ウォーリーをさがせ

   10月10日から新たな職場で頑張っている。と言っても毎日1万5千歩で足が棒になってしまう。だから時々ちょっとだけお前の肩をかしてくれる?どこにいるって?だいたい梅田の紀伊國屋か堂島のジュンク堂か、梅田の丸善&ジュンク堂にいるよ。DEISELのリュック背負ってる人見つけたら声かけてね!お前の好きな京極夏彦の新刊が分厚くてビニ本になってたり、これも新刊だけど「楽園の犬」という本を見つけた。紀伊國屋は平面だけど、ジュンク堂の梅田店は何階層にもなっていて誰かが「図書館」て呼んでた。目を付ける本といえば、写真集かな?あとは断然コミック。また中東では戦争が始まった分けだけど、日本は平和過ぎるのかもな?  

 イスラエルは、第3次中東戦争で最も勢力を拡大して、第5次まで戦争が続いた。最終的には拡張した分グッと狭まったんやけど、例のガザ地区とヨルダン川西岸が陣地になった。対するパレスチナはこれまでずっとインティファーダを繰り返していたんだけど、PLOの後には暫定政権が出来て、アッバス議長が統率していたかに見えたけど、ずっと弱腰と見ていたイスラム原理主義のハマス(ムスリム同胞団)が、サウジとイスラエルが握手を交わした直後に(イランがけしかけたと言われている)イスラエルへの侵攻を敢行した。それはかなり計画的なものだった。本来なら世界最強とも言われているイスラエルの諜報機関モサドが察知して何らかの手を打っているはずなのにどうしたのかという人や、いやいやそれは日本と同じで先制攻撃をさせといて(9・11もそうだったけど)相当な被害が出た後にゆっくりと反撃を行うというやり方だという説もある。ただ対イランの関係ではアメリカが二隻の空母打撃軍を派遣しているし、ハマスやイランの後ろには中国もチラついていると来ている。あとゴーンが逃げ隠れしているベイルートのあるレバノンには「ヒズボラ」(イランと同じシーア派)が早くもイスラエルと一線を交えていることが報道されている。つまり、ウクライナ対ロシアの戦いがここに来て、多極化して来たということ。

 

 展覧会限定アート ”Anniversary Ball for Japan” (2017年)

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2023年9月24日日曜日

心機一転がんばります!

  この言葉は、よく転勤や転職する際に別れの挨拶として繰り返し用いられてきた。そういう私も何十回も(?)繰り返しただろうか。そして最後の最後(?)にここ大和郡山を出て「新天地」で頑張ろうと、大阪市内に志を新たにしている。きっとお前も最低2回は言ったはず。


 なぜこの言葉を取り上げたかと言えば、いわゆる「ジャニーズ」問題の第三者委員会の調査結果を踏まえて新組織に移行する挨拶、そして「ビッグモーター」の社長の交代劇。ジャニーズ問題について言えば、まだまだこれからも尾を引きそうな気がする。新組織にするなら「ジャニーズ」と言う名前にしなければまだしも、過去を引きずった感があり過ぎで、今でも被害は止まるところを知らない。新社長である東山の過去のスキャンダルやいち早く抜け出て新組織を創り上げたタッキーも加害者疑惑が出ている始末。紅白に韓国と演歌だけじゃつまらんという声もSNSでは早くも上がっている。ビッグモーターは、損保ジャパンと一蓮托生の仲で、金融庁の立ち入りや、警察の捜索が今後も続きそうである。

 日大はどうだろう?アメフト部は過去に手痛い失敗があり、理事長をすげ替えたが、内情はあまり変わらず、旧態依然とした組織運営で日本一の私大の名に恥じるようじゃ学生も居心地が悪いはずだ。世に文春砲がなければ「こぞって悪の道に走る」という状態に今の日本はなっている。思えば、よく使う「コンプライアンス」や「法令遵守」とかは太平洋を挟んだ彼の地で起こった大企業「エンロン」の不正会計が発覚した時に、二人の議員であるポール・サーベンスとマイケル・オクスリーが法案を提出した「2002年サーベンス・オクスリー(SOX)法による。

 日本版SOX法なるものが作られたが、経団連などが既得権益を損なうおそれがあり弱腰だったり、個人が不正を告発できる「公益保護法」なども日本の風土には中々定着しなかったし、そのことこそが電通の悪しきパワハラ体質を放置させたし、企業では今大きな節目に立っている東芝の不正会計、その前に暴かれたオリンパスの不正会計問題が明るみに出て初めて人々の認識が少し変わったと見えるが、妙な立身出世主義や派閥や忖度などいつまで経っても日本人は変わらないと見た方が正しい認識だろう。

 内閣改造も自民党総裁はとっておきの「隠し球」を用意したつもりなんだろうけど、世間は引いた。件の木原官房副長官は「辞退する」となっていたが、その実「幹事長代理」(党内では実質の幹事長と囁かれている)と「政調会長特別補佐」というW要職に就くことになった。令和3年から官房副長官となっているのは栗生俊一氏である。内閣人事局長も兼ねている。現警察庁長官の露木氏は7月の記者会見で言わなくてもいいのにわざわざ「法と証拠に基づき適正に捜査、調査が行われた結果、証拠上事件性が認められないと警視庁が明らかにしている」そんなことはない。木原氏の妻が「ホンボシ」である疑惑があるからこそずっと警視庁捜査一課が捜査してきたのだから。かつて警察庁長官暗殺未遂事件の被疑者をオウム真理教の犯行だと断定して警視総監自ら指揮棒を振って2回も誤認逮捕を繰り返したことがある。一度誤ったら、その上に糊塗するのは「ウソ」でしかない。どこの刑事でも「誤認逮捕」してしまう失態を演じたら二度と刑事には戻れない。ただ一部には例外があるようだ。


    内閣官房ホームページより


 栗生氏は、官房副長官と一番下にある「内閣人事局長」(彼の情実人事は有名)と、一番上にある「内閣感染症危機管理監」を兼務している。既に影響力はないという評価が高いが、今後の動向が注目される。












2023年9月8日金曜日

あるアルピニストの死

    女性アルピニストの谷口けい(43歳)は、2015年12月22日北海道の大雪山系黒岳(標高1984メートル)で滑落死した。2007年にはエベレストに登頂し、女性で初の「ピオレ・ドール」賞(世界の登山界の最高の栄誉)を受賞している。明治大学時代には登山よりサイクルスポーツに目覚め日本中を走り回っていたし、その後バイクツーリングや憧れた植村直己が眠っているマッキンリーやマナスル(野口健とエベレストの清掃活動に従事)登頂など休むことなく活動した人だった。最後の黒岳では3人のパーティの一人で、積雪の中いわゆる「お花摘み」(用を足すこと)の最中に誤って足を滑らせて滑落し帰らぬ人となった。

 43歳という年齢は、山を極めた登山家に共通していることを私は最近になって知った。1984年2月植村直己がアラスカのマッキンリー(標高6190メートル)登山中に亡くなっているが、私がまだ若い頃(彼の死の6年前)彼が犬ぞりによる北極点到達した際に僅かながら支援者の一人であった。彼も43歳で亡くなっているが今だに遺体は発見されてはいない。彼から送られてきた記念のシールはどこに行ったか不明だ。彼は言った。「私の中の劣等感が私を極地に駆り立てるのです」と。

 そして、この人は絶対死なないと信じていた人も同じ歳で亡くなっている。ヨーロッパアルプスの三大北壁であるマッターホルン(4478メートル)アイガー(3970メートル)グランドジョラス(4208メートル)の冬季単独登頂(世界初)を成し遂げている長谷川恒男。この人もエベレストで亡くなってしまった。

 ただ亡くなっていない人もいるにはいる。ヒマラヤ山脈 the Himarayan range = the Himaraya Mountains は有名なエベレスト一つではなく、多くの山々が連なっているのである。日本の代表的なアルピニスト竹内洋岳(ひろたか)は、エベレストをはじめ14座すべてを登頂した登山家である。14座とは、エベレスト(8848メートル)K2(8611メートル)カンチェンジュンガ(8586メートル)ローツェ(8516メートル)マカルー(8463メートル)チョ・オユー(8188メートル)ダウラギリ(8163メートル)マナスル(8163メートル)ナンガ・パルバット(8126メートル)アンナ・プルナ(8091メートル)ガッシャーブルムI(8080メートル)ブロード・ピーク(8051メートル)ガッシャーブルムII(8035メートル)シシャパンマ(8027メートル)である。彼がその山々を征服する前に一度雪崩に巻き込まれ遭難している。その時偶々外国の医師の男女の登山家2名に遭遇し助けられ(パーティの他の2名は死亡)、奇跡的に生還している。つまり一度は死んだ男なのだ。

 人はなぜ山に登るのか?例え凍傷で手を失ったとしても。これは山登りの人にとっての永遠の命題だろう。「そこに山があるから」と答えたのは英国の登山家ジョージ・マロリーである。日本の谷川岳一ノ倉沢は、登山家にとってどうしても一度は登らなくてはいけない難所であり、自分の目標とした山と思った登山家は限りなく多いし、それだけに山がそういった人たちの意志を拒んで命を絶った人も限りなく多い。谷川岳にはそういった人たちの碑が立っている。それでも日本の山に飽き足らず、五大陸五大峰を登頂するとか、アルプスの冬季単独登攀とかをやる冒険家が日本人にはいたのである。

 今日本ではジャニーズ問題を新体制で出発するという記者会見や来週内閣の改造があるが既に留任が公表された木原官房副長官(補足;後に本人が固辞)の妻の問題、秋本衆議院議員の収賄容疑での逮捕と様々な興味深い話題がマスコミを賑わしている。そういえば、2年前の2021年10月24日に岐阜県の北穂高岳(標高3106メートル)に登頂しようとしていて遭難していた内閣府大臣官房審議官の酒田元洋氏(53歳)が遺体で発見されている。この人が遭難したのは、ちょうど入山中に発生した震度4の地震が高山市であり、その最中であったことも関係があったかも知れない。ちょうど「桜を見る会」の問題で経緯を説明する任務を負っていた人でもあったので様々な憶測を呼んだ。

 山はただ人間の味方ではない。動物や植物も含めた自然の中で脅威に感じることもあるだろう。それは人間が大自然の中で本来畏れを感じなければいけない存在であるからであり、少しでもそれに逆らったならば命を取られることを意味する壁のような存在でもある。

 日本の女性登山家で渡邊直子(42歳)は現役の看護師であり登山家でもあるが、現在13座を征服しており、あと1座と残している。もし残すシシャパンマの登頂に取り付いたとして、無事に帰って来て欲しいと、本当に心から願うばかりである。

 追記;明日(9・10)放送のTBSテレビ「情熱大陸」には彼女が登場する。

追記;2024年10月9日無事シシャパンマに登頂し、14座制覇した、の報が届いた。

日本の女性看護師、ヒマラヤ13座征服!


        写真は、谷口けい「Picasaの写真」ブログwww.east-wind.jpより

  







2023年8月28日月曜日

OSO18

    北海道のオソツベツ地区で2019年に28頭(1400万円の被害)の乳牛が襲われ、その後33ヶ所の範囲にわたり計66頭もの牛が殺されたとして、駆除を生業とする漁師はあるヒグマの行方を追う羽目になった。映画なら「明日に向かって撃て」のような件(くだり)である。ヒグマの名前は、コードネームで「OSO(オソ)18」と呼ばれた。オソツベツ地区で被害があったのと、足跡の大きさが18センチ(実際は20センチ)あったことからそう呼ばれることになった。北海道大学大学院(獣医学)の坪田敏男教授はいう。「人への対応を十分学習している、ちょっと変わったクマ」であると。そのようなクマは今まで一頭もいなかったし、それだけに脅威でもあった。何故ならそのクマは、夜間にだけ行動し気配を残さず、沢を移動して足跡を残さない。いわゆる「忍者グマ」と呼ばれて恐れられた。通常ならばヒグマは、ドングリ等の樹木の実を食べたりして牛を襲ったことなど一度もなかった。体長は優に2メートルを超え、体高は1.2メートルの大きさだった。そのクマが最近捕獲された。道民は安心したと言う者もいたし、「遊びじゃなくて生きるためだったから、ちょっと複雑だなぁ」と呟く人もいた。

 人の生活圏にクマが山から降りてきて、人を襲ったりすることが多くなり、そういう事例が全国的に拡大した時に、人々は恐れると共になぜそうなったのかと考えはじめた。本来なら森林に生息する野生の動物は「植生」という自然界の営みの中で人と共存していたはずだった。いつ頃から、クマや猪、鹿や猿たちが人の生活圏に現れて田畑を荒らして人の脅威となったのだろうか?OS18の実例は、おそらくそれだけに留まらない要素を孕んでいる。人が水力発電のためダムを作るために(あるいは太陽光発電の名目で)森林を切り開き、植生を壊し、本来の自然の領域に生きる動物たちを追いやることを始めた。今は農作物は電気柵なしには守れない程になった。環境を破壊したのは人間であり、動物ではないという点が大事な視点である。

 人間は勝手な生き物である。先ごろも、政府は漁民の反対を押し除けて原発処理後の汚染水を海に流す決定をした。「安全」だとか「安心」だとかいうが、それはきっちりと納得がいってのことだろう。東京都も神宮の森を伐採する決断をしたばかりだ。故坂本龍一や村上春樹といった著名人の反対意見も押し潰して、100年も育てた樹をあっけなく伐採することにしたようだ。これも「都民ファースト」なのだろうか?(流石に都民の反対にあい、伐採計画は頓挫している)

 

       写真はヤフーニュースより(標茶(しべちゃ)町役場農林課林政係提供)

 しかし待てよ、と私は考えてしまう。何かが変だ。OSO18は多分復讐だったのではないだろうか?彼の身近にいる守るべき肉親を人間に殺されているかも知れない。乳牛の殺し方だって、ライオンやハイエナのように十分食べ尽くすというような食べ方はしていない。昨日だったか、どっかのニュースでOSOが食肉として出されていることを伝えていた。人の通常の食として出されたことに違和感を感じた。これで全ては解決したよ、退治したんだからどうぞみなさん召し上がれ。そんなこと言った分けでもないだろうけど、これが解決とは程遠いし、処理水も海に捨てても基準値の放射能は検出されませんでしたから大丈夫と言われてもねぇ。問題はそんなに単純じゃない気がする。それだったらなぜそもそも原発を推進してきたの?(私は朝日や毎日の回し者でもない、ごく普通に生きて普通に疑問を持っている者です。)核融合発電の技術にもっと早く本腰を入れるべきだったのではないか。産経新聞をはじめ(私は産経デジタルを購入している)原発推進のキャンペーンは半端ない。なぜそこまでと首を傾げたがるがそれが日本人の「大多数」の総和だと言うなら、それも認めよう。軟弱な地盤の夢洲にカジノや万博を誘致する維新、外国人に参政権を与えようとするれいわ新選組、9月に総選挙を実施したい自民党はこのままでは統一教会の信者の力を借りないと当選しないんじゃないか?既に若者はつまらないバラエティしか放映できないからTV離れが出ていることだろう。いやYouTubeだってしっかりとした他人のマネではない独自のチャンネルを持っているユーチューバーは少ない。

 魅力ある国にするには、まず動物と共存できる自然を回復することが先なんじゃないだろうか?処理水に関する中国人の動静を気にするよりも、もっと日本人がもう一度落ち着いて考えないといけないことがあるはずだ。

 ※ 先に私は核融合発電について触れていますが、下のリンク先で小出氏は、その核融合発電も危険であると指摘しています。

 参考文献等;米田一彦著「人狩り熊」(つり人社刊)

 YouTube動画1️⃣ 十和利山熊襲撃事件

 YouTube動画2️⃣ 小出裕章氏「原発汚染水はなぜ流してはならないか」

 追記;10.26   NHK特集で「OSO18」を見た。集められた老練なハンターが言う。捕獲されたクマの前足が20㌢なのもおかしい、腫れているし、痩せていたと。大学関係者の研究も含めて考察するに、群から「爪弾きにされた」まだ9歳にしかならない彼は、周囲の自分がいる領域では生存出来ず群れを遠く離れて、何も食べずに単に職員に簡単に仕留められたのだろう。そして彼を含めて他の動物を食べる事を身につけてしまったクマは哀れだし、何らかの事後の対策も必要であると研究者は言う。何故ならクマという生き物は本来なら森の豊潤な植物を主食にしており、決して動物は食してはいなかったから。今やそれが人も襲って食べる術を身につけてしまった。

 このOSO18の事例は単に北海道の一地域に起きた特別な事ではなく、(秋田のスーパーKが有名)これからも彼のような個体は現れるだろうし、もう一度森のあり方を問い直さなければいけないし人間の未来もない。子供たちや子孫が既に危険に晒されているのだから。

 







2023年8月13日日曜日

百合と回転式銃

    昨日8月12日に梅田のT・ジョイで映画「リボルバー・リリー」を観てきた。フロント大阪の人混みと比べれば、館内はひっそり閑としていた。小曽根百合は、細見欣也(水野寛蔵と同一人物)という男が作り上げた諜報機関「幣原機関」に属していて、三年間で57人もの人を殺害したという曰く付きの殺し屋であり、20歳で行方を眩ましてから陸軍からも別の殺し屋からも付け狙われる羽目に陥る。大正時代の台湾が舞台になっているが、山本五十六は当時大佐の身分で出ている。ラスト近くで百合が五十六に銃を突きつけ面と向かい、人が人と殺し合う世の中になるのではなく何とかして戦争を回避して欲しいと頼み、彼の言質を取りつけるシーンもある。歴史は決して彼女の理想どおりには進まなかったが…。陸軍と海軍は元々仲が悪かったが、水野が握っている資金源を巡る争いに百合も巻き込まれることになる。それは百合が愛したスパイの上官細見が実は水野であり、理想家の水野の家族を皆殺しにされる中で唯一逃した息子を命懸けで守ることを彼女に託したからだった。息子が狙われるのは、軍の機密情報を身に纏っているという事もあった。百合の脇を彼女の支援者(弁護士岩見や女中達)の何人かが援護射撃して固めている。陸軍の大勢の軍人とは別に、南という一匹狼の男(清水尋也)と繰り広げた死闘は何より見ものだった。彼女が女将である花街の銘酒屋でレコードがかかるシーンがある。我々でも懐かしいエノケンの歌(小学校の頃TVのコマーシャルソングだった)で、その曲に乗り射撃シーンが始まる。

エノケン(榎本健一)の「東京節」(大正生まれの婆さんはバナナをよくパナナと言っていた)

 彼女が手にする S&W M1917リボルバー という拳銃は六発の弾丸を弾倉に入れ、打ち終えれば排莢子桿を指で押し直ぐに薬莢を押し出し新しい弾丸を装填する。最後の方の海軍省前での陸軍との死闘ではその仕草を繰り返すシーンがある。イタリアの拳銃ベレッタも登場するが、彼女のはアメリカ製のスミス&ウェッソン社の45口径の銃で銃身が結構長くて命中度は上がるが、本当なら女性には向かないはずだけど。撃った人ならわかるけど、凄い反動で片手で撃った瞬間銃身が十センチ以上は上がるから。両手把持でなければとても無理、が本当のところです。余談ですが、同じ会社製で「SAKURA」(M37エアウェイト)があるけど、現在の日本の警察官が所持しているもので、昔のニューナンブと比べても命中精度は格段に低い。何故なら銃身が4センチ程度で、至近距離から発砲しても5メートル程度なら当たるが5発しか装填できないし、実際にはただ軽いだけの使い物にならない銃なのだ。日本はアメリカと違い、銃規制がしっかりされているからそんなに銃所持事案を心配することは少ないが、それでもナイフを手にして攻撃されれば、もう拳銃よりその辺にある椅子とか棒切れの方がマシ。よって「地形地物を利用せよ」と言われているのである。

映画「リボルバー・リリー」秘蔵映像

 

  写真は、2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズより

 綾瀬はるかは、銃でも刀でも(映画「ICHI」)かっこいい。格闘シーンも含めてハリウッドのアンジェリーナ・ジョリーよりも優れていると思う。取扱注意の奥様でも好演していたし、今後が楽しみの女優である。この映画の新調された礼装の白色のドレスを纏った彼女の戦闘シーンは、血だらけになり実に勿体無いと思った女性が多かったんじゃないだろうか。

 そのドレス、衣装担当の黒澤和子がデザインしたものらしい。

衣装デザインが決め手

 でもいつになったら、隣にお前が座るんだろうか…。



2023年7月15日土曜日

怪物だ〜れだ!

  「怪物」は誰の心の中にも住んでいる。夫を亡くして自営でクリーニング店を営む麦野早織(安藤サクラ)は小学生の息子と一緒に住んでいるが、毎日が格闘である。「お父さんは生まれ変わったら何になるかな?」などと母親に質問する。仲良くもあるが、捉え所がなく母親も困ってしまうことも多い。子供には子供の領域もしくは領分というものが存在する。それを大人は判ってくれない。いつの時代でも。母親は学校の担任教師が息子に体罰を与えていると勝手に思い込む。一人学校に乗り込むが、相手にされない。みんなが手を組んでいる。担任の保利(ほり)先生(永山瑛太)は、口止めされたために余計に誤解が誤解を生み、マスコミ沙汰になるにつれて担任も外される。息子の麦野湊(みなと)は父を失ったという疎外感もあるが、教室の中でも馴染めないでいる。だから本当のことを言わなかったりもするし、自分にもまだ自信が持てないから友達にも辛くあたったりもする。星川依里がみんなからイジメにあっても助けて上げられない不甲斐なさを味わうことにもなる。そのうち何で彼はこんなに教室で爪弾きになっても強いんだろうと思ってしまう。ネットの解説には複数の人がLG BT Qなどをテーマの一つに扱っているが、もっと自然に、素直にこの作品を見ればいいと思う。家庭にも学校にも溶け込めないという二人が秘密の基地に集う。そこで「怪物だ〜れだ」とカードで遊ぶシーンがある。何気ないシーンであるが教室では表現できない二人ならではの得意な表現方法である。嵐になって母と保利先生は必死になって子供を探すが、本人達は意に介さずに自分の領域を形作ることに精一杯だ。湊が友達に教わるヒュンヒュンという音がする手作りの「楽器」や校長から教わるトロンボーンという「楽器」もアイテムの一つである。ここでは韓国映画じゃないから、最後まで「怪物」は登場しない。それは一人一人の心に存在するものだから。そして湊は依里が本当の友達であることに次第に気付いていく。共に自信を持って未来を切り拓いていけるんじゃないかということにも気づく。それは彼の亡きお父さんがそう教えているのかも知れないし、残されたお母さんの愛情の所以なのかも知れない。いつかは誰もがわかってくれるだろう。そう思わせる何かがこのドラマにはある。火災があり、それは放火かも知れないとの疑念も生むし、教師である校長だって犯罪者というより人間としての存在意義が問われるが、映画では犯人を探す事はしていない。ただ火災のシーンが遡って表現されているが、カンカンという消防車の音は現場を経験したものなら分かるがいつも必ず生の音である。緊急執行のサイレンの音を消して表現することでreplayがうまく伝わったと思う。

 昔子供が小学生の時によく黒姫の童話館で童話を読み(私のお気に入りは「泣いた赤鬼」)戸隠にキャンプしていた夏休み、いつも研究課題に何をしようかと考えていた。野尻湖にはナウマンゾウ博物館があり、それを見せて、近くで「関東ローム層」(岩宿遺跡に似た)を土台にした遺跡群が発見されて見学会がありそれに参加したことがある。子供と一緒に帰ってまとめたものが秋に教育委員会の賞を取ったと記憶している。息子が大人になって、二人でカヤの平高原キャンプ場に行ったら、夏は常駐している学者の方がおられ5千円で案内を引受けてくれるオプションに参加した。白樺と湿原と日光キスゲ、そこに生息する虫たち。団体で散策する人達も何故かしばらく先生の話に聞き入る。とにかく先生の博識のある説明が圧巻で写真にまとめるとこりゃ「夏休みの研究課題」になるなと苦笑するくらいの代物だった。その翌年、翌々年には妙高とキャンプしたり、尾瀬の湿原を福島まで歩いたり、たくさん思い出を作ったが、その息子も今年離れて行った。

 他人への無理解やそもそも人を愛することが出来ない心が「怪物」を生んでいくのである。この映画では、衣装デザインには黒澤和子が当たっている。NHK大河ドラマを初め日本の衣装デザインの第一人者である。黒澤明の孫二人が彼女に添っている。そして坂本龍一の音楽が優しく奏でている。彼の遺作となった。脚本は、本年カンヌ映画祭のコンペティション部門で脚本賞(脚本;坂元裕二)を受賞している。この夏休みにも多くの子供の目に触れたら良いと思って帰ってきた。難波は人と暑さで凄い土曜日になっていた。デパ地下に入って涼しくなったけど混雑は同じだった。

 それからさ忘れてたわけではないけど、誕生日おめでとう。年は気にしなくていいからね。


少し変えた。こんくらいにしとこかな…少しふっくらになってしまった。


「あれからずっとそばについているよ。お前が荒地の魔女だとかハウルだとか言うからさ、いつも聞き役だよ」
「いつも何してるの?」
「ここ1年くらい月1で映画見てるよ」
「じゃ私は要らないね。」
「絶対言うと思ったよ、そのセリフ。一人で見終わった時の味気なさってさ、横に誰もいないんだからね、いつも。でもさ、オレ本当は知ってるよ。お前が一人になりたくてうずうずしてるってこと…。ハウルに尋ねてごらん、きっといい答えが見つかるはずさ」
 こういうとお前はすぐ「ふ〜ん?」って答えるけどね。




2023年7月10日月曜日

政治家がらみの事件について

    前回週刊文春の報道ネタについて少し触れたが、そのネタの中に現内閣の中枢にいる人物がいる。彼は内閣総理大臣補佐官として実質的に総理のブレインとして枢要な立場にいるので、どうしても関心を向けられることになるのだが、この種報道が難しいのは昔から捜査機関の上層部から、これからという時に圧力が加わり、道半ばで事件捜査は終結してしまい、報道自体もそこに同じような圧力により萎縮してしまい、まるで何もなかったかのような状態に陥ってしまうのが通例だからである。今回文春デジタルが報じた「内閣官房副長官」である木原誠二氏の妻が、かつての夫であり同居中の深夜に何者かに惨殺され、事件が未解決になっていたものを、警視庁の未解決事件に光を当てる(ドラマにもなった)特捜が事件を洗い直し、新証言から妻を殺人事件の本星(直接手を下さなくても共犯でも同じ)として強制捜査に着手したのを並行して取材したものであった。

 ここまで書けば、似たような事が昔あったなと気付いた方もいるかも知れない。まだ安倍総理が存命で、周りから「忖度」を受け、政治家でなくても側近のような存在であれば「守られた」人物もいた。山口敬之氏はTBSワシントン支局長当時、ニューヨークで記者の見習いとして来ていた伊藤詩織氏と会う。彼女が帰国後山口氏と会食する時に薬物の影響で意識不明に陥り、ホテルで介抱した山口氏から性的暴行を受ける。山口氏は彼女の承諾があったと主張するが、そんなことはないレイプされたと言って警視庁に告訴するのである。事件の捜査は、まず現場であった所轄署が捜査をすることになる。そして当時の強行犯係が捜査して逮捕状を請求し空港で逮捕する直前までに至る。そこから事件はあっけなく萎んでしまう。当時の警視庁刑事部長(警視監)であった中村格氏の指示により捜査はストップしたのである。山口氏の著作である「総理」は出版したタイミングが安倍氏に対する宣伝効果と安倍氏から直接聞かずに出来ない類の内容であり反響が良かった。中村氏は菅前首相にも近く、刑事部長になる前の2012年には菅官房長官の秘書官をしている。中村氏は父親が福岡県警のいわゆる「たたき上げ」であり父親の後ろ姿を見て育ったはずである。警察は「正義感」が強いだけではなく、法に触れるようなことは絶対してはいけないし、もし彼もたたき上げの警察官だったらそれを実行したであろう。既に裁判官が許可した「逮捕状」という許可状は、逮捕出来るまで更新してこそすれ執行を放棄するようなことは絶対してはいけないはずである。なぜなら、被害者から被害届が出され、捜査を尽くして証拠を集め、裁判で有罪に持ち込むだけの時間と労力を注ぎ込んでいるし、何より血税が使われているからである。よって許可状であるからそれを執行するかどうかは裁量による等通用しない。警視庁は汚点を作ったとしか言いようがない。刑事部長としての彼の配下には何百、何千人の刑事がいて、臍(ほぞ)を噛んだ者も一人や二人ではないはずである。中村氏は「実績」が評価され、後に警察庁長官に登り詰めている。父親は喜んだだろうか?しかし奇しくも在任中に元安倍総理が銃撃を受け(何か因縁めいた気がしないでもない)、その責任を取って長官を辞任することになってしまった。「天網恢恢疎にして漏らさず」という諺を、私がまだ若い頃に上司が述べている。「どんなに悪い奴でもな、それを見逃してしまうことになったとしてもな、何時かはそいつはどっかで裁かれることになるんや」と。だから悔しい思いをしてもその者はきっと天から裁かれるのだと。ニューヨーク領事を経験したその上司はまだ若い五十代で亡くなっている。世の中には許してあげたい人と、許してはいけない人がいる。今回の渦中の人を見ていれば、まるで映画「砂の器」やもっと昔に作られた水上勉原作の名作「飢餓海峡」を思い起こさせる。日本は一夫多妻制ではない。しかし彼が住んでいる政界という世界には彼の法律があるようである。

 映画「飢餓海峡」は、戦後間もない時期に発生した台風と火災を利用して犯行を隠蔽した犯人を求めて北海道警の老刑事(伴純三郎)が定年前にギリギリの捜査を行うが果たし得なかった。その後に捜査を担当した若き刑事(高倉健)が、まるで弔い合戦のようにジリジリと犯人の居場所を追い詰めていくのだ。「砂の器」もそうだったが、人間が幸せを求めるがために過去の自分を、上り詰めた今の人生から切り離そうとする事がある。

 官房副長官もその妻もまるで逃亡者のように過去を否定し、過去から逃げるのに必死になっているかのようだ。この事は衆議院選に影響があるだろうか。東大卒、財務省とエリートコースを歩み、一度は落選の憂き目にあったものの(統一教会の集票効果もあったのであろう)返り咲いている。そして今は、総理のブレーンとして盤石の地位に上り詰めている。襲撃事件一年を経て安倍派である清和政策研究会は領袖を失い混迷を深めている。同様に彼の属する宏池会が「財政健全化」を押し通し、清和会の「積極財政」とは一線を画する。内閣支持率も、サミット後に身内の不祥事から「健全化」を失いかけ、マイナンバー不祥事と続き、立て直しに必死である。貿易黒字で、世界からも株価高騰で沸いている日本で今総理には難しい舵取りが任されている。

 


       画像は、That’s Entertainmentエキサイト より。





2023年7月6日木曜日

バラバラ殺人事件に見る世相

    今年7月に入って発生した札幌のホテルでの猟奇殺人事件は世を賑わせている。6月には猿之助の一家心中事件があって、世間の注目を集め、広末の不倫やジャニーズ事務所の性被害事件と合わせてタイミングよく週刊誌が続報を打つことで、TVやYouTubeがこぞって取り上げて、国民皆古畑任三郎的な状況になりつつある。ただ性被害を取り上げたことで著名な作曲家が活動を制限される事態が生まれていることはまた別の問題を孕んでいる。

 ちょっと前に、職場にいる元小学校の先生が「女性セブン」の記事を親にどうしても読ませたくないことから、家族会議と称して睡眠薬を過剰に摂取して(実際にビニール袋を被せて確実に死に至らしめている)一家心中を図ったのではないかと仰るので、先生それ殺人になってしまうやんと答えたことを憶えている。

 今回の札幌の事件もネットの書き込みがマニアックで、謎解きの嗜好家がかなりいるようだ。

・「殺人事件の現場は札幌市中央区南8条西5丁目のラブホテルで「LET’S(レッツススキノ)」202号室である。」札幌に行った人なら知ってるでしょうが、市街地が区画整理されており、東西南北が一目瞭然であるのがすごい。

・「62歳の男性には争った時に起きる防御創がない。ホテルの浴室で刃物で一撃されて、頭部が切断されて持ち出され、同時に所持品も全てなくなっている。(※文春チャンネルによれば、男性は女装していたらしい)」

・「大きなスーツケースを運んだのは、小柄の女性でつばが大きな女優帽を被っていた。」

・「犯行は、ホテルにチェックインした22時50分から翌日(7/2)の2時ころの間である。被害者は、犯行前には16時から22時までディスコのイベント会場にいて相手の女性と合流したものと思われる。」(補追;その後合流したのはホテル近くであることが分かっている)

というように、まるで実況しているかのような事件の詳細を地図や写真などを取り入れて解説しているのである。この「大きなスーツケース」という道具立ては、ヒッチコックの映画「裏窓」Rear Windowを思い起こさせる。友人の刑事ドイルにも愛想尽かされ、骨折して身動きできないカメラマンのジェフ(J・スチュアート)が恋人のリサ(グレース・ケリー)と協力して犯人に挑んでいくのであるが、彼がグリニッジ・ビレッジのアパートの裏窓を通じて日常の何気ない生活の中で見たある不審な男の行動を監視し、男が死体を切断して大きなスーツケースに入れて運んでいると推理するところはドラマのクライマックスに当たる。

 ところで身体をバラバラに切断するというのは、古くは佐川君のパリでの猟奇殺人とか滋賀県の琵琶湖岸で発見されたバラバラ死体遺棄事件が有名であるが、確かに尋常ではない。娘が母親を殺して胴体以外はバラバラにしてゴミにして捨てたという事件も滋賀県で発生している。母親が娘のためをと思って医者にするべく医大進学を強く勧めるが、娘にはその気がない。そして結末として悲惨な殺人事件に至るのである。この事件については、共同通信の女性記者が本にしており、末尾に掲げるので興味がある人はぜひ一読して欲しい。

 多分殺した後に身体をバラバラにする理由は、一室で行われた殺人という犯行を隠すため、移動する必要に迫られてのことだろう。だから車のトランクとかスーツケースが必要になってくる。

<速報>2023年7月24日事件解決;29歳の不登校だった娘と59歳の精神科医の父親が逮捕された。頭部も自宅で発見されているが、まだ死体領得の動機は不明のまま。いちばん謎なのがこの辺だ。よほど卑劣な相手でもない限り、死体を遺棄してもそこまでする必要性がない訳だし、当時女装していた被害者はバイク仲間では人望も厚かったらしいけど、パパ活しないとも限らないし、まだ若いし娘との間で何か金銭的な或いはストーカー的な行為があったのだろうか?

北海道警の緊急記者会見

 今日も真夏日だったけど、明日は「七夕」。夏の大三角が晴れたら見られるところだけど、週末は梅雨の中に埋もれそうな気配。(追記;実際夕方には雨になった)

 

 ぼくが今どこにいるか分からない程途方に暮れていても 君のことだけは

 忘れてないから ずっと思い続けているから そっと ぼくの横に

 座るだけでいいから 安心していいからね そんなに

 たくさんの喜びをくれなくても いいよ

 そばにいるだけでいいんだから

 君の元気な笑顔を見るだけで いいんだからさ


   アイスキューブ・ニュートリノ観測所(南極)の背後に見える天の川とオーロラ(YUYA MAKINO, ICECUBE/NSF)

  (Forbes Japan の記事から)

 ギスギスした世の中ではなくて、誰もが幸せを満喫できるように、明日の七夕には輝いた星々がどこでも見れますように….

  参考文献;齊藤 彩「母という呪縛 娘という牢獄」(講談社刊)

 <追記>7.8 半年が過ぎて改めて思うことは、人々が「われ先に」という志向を変えていないことだ。とにかく自分firstである。昨日も危うく事故になりかけた。前の車が急に指示器を出して左折したので、バイクで直進の私は加速して直進しようとした。そこに対向から右折の車が塞ごうとして、急ブレーキ。バイクは右手の前ブレーキと右足の後ブレーキを踏んで制御する。タイヤが焦げるような臭いを出し、ハンドルは右へ、左へと振りながらやっと停止した。そして当該車両はそのまま右折して何食わぬ顔で進んで行った。人々は「煽り運転」には敏感である。でも自分が原因を作っていることには殆ど無関心である。今日はTVでは大和西大寺駅前を映して今の模様を伝えている。彼が安倍元総理を銃撃して、私たちは初めて統一教会という団体の実相に気付いた。テロが悪いと声高に言うなら、同時にこの宗教団体と政治家が永遠に縁を切らないと片手落ちになる。今だにこの宗教2世問題は解決していない。今日は地元に出来たガーデンハウスに母と草花を見に行った。草花を見るだけで心が落ち着くのは不思議だ。

<補追>2023.7.22  「報道特集」より 政治家の集会に統一教会はなくてはならないの件

https://youtu.be/q5QmGDbY6U4







2023年5月15日月曜日

世界の基軸通貨(経済学 番外編)③プラザ合意

    特に日本とアメリカの経済的情勢について考える時、どうしても基本に立ち返るというか、その頃の両国の関係というものを振り返ってみる必要があるように思うが、その時点が「プラザ合意」ではないかと思っている。

 1985年9月22日、先進5カ国の財務大臣などがN.Y.のプラザ・ホテルに集まり協議して「為替レート安定化に関する合意」を決めた。この年まだお前は生まれてなかったけど、私が31歳で、今日誕生日を迎えた母は58歳だった。

    写真は、wikipedia から。最近少しだけwikiに応援カンパしました。

 そして当時中曽根内閣で蔵相(財務省は大蔵省)だった61歳の竹下登は、前日澄田日銀総裁らと成田を飛び立った。午前中にゴルフをしており、そのままの格好で(記者を撒くために)パンナム機に乗り込んでいる。ちょうど安倍晋三外相が国連総会のため同じ日にニューヨークに飛び立っていた。当時の日本の対米貿易黒字は400億ドル以上あった。レーガン政権のアメリカは当時「双子の赤字」(貿易赤字と財政赤字)に苛まれていたから、このプラザ会議は特に日本に対して、ヨーロッパではドイツに対して減税と金利引き下げ(→内需拡大)を要求していた。つまり分かりやすく言えば車や家電を国内で売ってアメリカには輸出しないで下さいねということである。この急先鋒に立っていたのが米財務省のベーカーであった。ただこの男お構い無しで行く先々で言いたい放題言い、それがそのまま市場の動向に反映するという有様だった。トランプがよく口にしていたAmerica first の方針は当時と全く変わっていない。翻訳すれば自分ファーストと同じである。都民ファースト、同じく。竹下はじめ大蔵省側6名と出向組等3名、日銀側4名がいた。しかし敗戦国日本の弱腰外交というものはアメリカには見透かされていたと言ってよく、ドイツの中央銀行であるブンデスバンク(マルクはECの基軸通貨)はギリギリまで自国の主張を貫いていた。そしてベーカーはじめ米財務省はFRBとは違いを見せて、政治家としての強気の姿勢でアメリカの弱体化した経済状況を何とか優位に持ち込もうとしていたのだった。

 1987年10月19日の月曜日、ニューヨーク証券取引所では一斉の株売りが出て、508ドルという史上最大の下げ幅を記録した。翌日の日本でも日経平均が3836円の史上最大の下落となった。(ブラック・マンデー)これはベーカー発言により市場が3国の協調体制が崩れたと見てドルが暴落する不安に怯えたものと言われている。

 同年10月29日、日銀は短期金融市場で2千億円もの買いオペを実施して資金を供給し、実質金利を下げた。(1ドル=137円台)

《ベーカー発言》

⚪︎1986年2月18日「さらにドルが下がったとしても、そう困らない」→1ドル=180円を割る。

⚪︎ 1987年3月22日「ドル相場の目標は定めていない」→ドル下落と市場は見て1ドル=148円にドルは下げた。

⚪︎ 同年4月9日、IMF暫定委員会「為替相場のこれまでの変化は、基本的に秩序あるものだった。それは巨額の貿易不均衡の減少に役立つと言える」→翌日、1ドル=142円へと急落。

⚪︎ 同年11月4日、通信社のインタビュー「アメリカの金融緩和策を変更してまで、ドル相場を維持するつもりはない」→事実上のドル安容認と受け取られて、11月6日1ドル=134円に突入。

《ドル・円を巡る動き》

1985年11月7日 日銀は短期金利の高め誘導を行った結果、1ドル=202円となった。

※1ドル=200円で輸出13業種が赤字になると言われ、190円を超えると、自動車、コンピューター業界まで赤字になると言われていた。

1985年11月13日(財務省高官)1ドル=190円になれば対米黒字が170億ドル減ると予測している。

 市場は、翌年1月23日竹下蔵相が「1ドル190円になっても大丈夫か、個々によっても違いはあるが、それを受け入れる環境ぐらいはある」と述べたことが伝わり、市場では1ドル=201円から198円まで落ちた。その後195円となり、2月に入り190円を割る。そして2月中頃には180円を割ってしまう。

1986年3月17日1ドル=175円40銭と円が戦後最高値を記録。日独が協調利下げをしたものの、それを嘲笑うかのようにドルは売られ急落する。

1987年12月15日 市場は、アメリカがドルの維持に関心がないと見透かして、1ドル=127円台に落ちていく。

 1ドル=137円19銭(2023年5月17日現在)

 現在G7広島サミットが5月19日から3日間行われるため要人が日本に向かっているが、既に新潟では財務大臣・中央銀行総裁会議が行われた。プラザ合意後のベネチア・サミット(1987年6月7日開催)では、G7を定期的に開催することや、年初において各国の成長率、内需、為替レートなどの経済指標に基づく政策の見通しを示すことが決められた。結果的に見れば、アメリカが推し進めてきた円高:ドル安の政策は成功したかのように見えたが、威勢よく世界の主導となって推進していくはずの基軸ドルが弱くなっていき、強い円を背景に敗戦国日本がそれに変わって発言力を増していくのである。

出典;野口均「日米通貨交渉2000日」

2023年5月14日日曜日

世界の基軸通貨(経済学 番外編)②ブラック・マンデー

    流れで言えば、ここで「プラザ合意」を取り上げるつもりでいたのですが、世界恐慌に似たような世界の経済現象といえば、このブラック・マンデーがあります。最近ではサブプライム・ローンやCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が直ぐに浮かぶあの「リーマンショック」があります。まさに「歴史は繰り返す」です。この辺が経済学の面白いところなんでしょうか。つまり門外漢にとって、外から経済事象を見るということが出来るということなんですね。ところで、このブラック・マンデーをなぜ選んだかと言えば、それは私と深く関わっているからなんです。別に証券マンでもない私がどこでどう関わっているか、詳細には言えないにしても、それは日本での当時の世相を見る必要があります。日本ではマネーが株やパチンコなどの娯楽、不動産や絵画などへの投資に流れた時でもありました。先に1980年代の音楽は、という題でお話ししたのですが、天皇陛下が崩御された1989年の平成元年になり、やがてバブルは崩壊してしまうんですが(資本主義国でない彼の国でも似たような事が起きています)、この80年代というのは、日本でもフォークソングが終わりJポップが花咲きましたが、ちょうど昭和56年が1981年です。カセットテープで竹内まりあを聴いていたけど、翌年に赴任して7年目で昇任試験に通り、昭和63年の秋に、ある事件と関わりました。


  写真;fu.minkabu.jp より転載

 前年のブラック・マンデーに端を発して日本ではそれに絡む事件がいろいろ発生しました。不動産が高騰し、土地を求めて暴力団が暗躍し、彼らと結びつく銀行もありました。住友銀行です。地上げ(底地買い)がまかり通り、住民を金を産む箱から追い出すために彼らが使われたのです。住友が関東に地盤を築きたかったという理由もあります。イトマン事件はまさに銀行と闇の勢力が合体した事件でした。経済事犯の陰には必ず彼らがいる。東京が兜町なら大阪は北浜。北浜の風雲児と呼ばれたコスモ・リサーチ社長の見学和雄は当時43歳だった。彼も経済ヤクザの一人だった。運用資産1千億以上(文春online」2021.3.5 記事)「仕手戦」と呼ばれた株の操作で億のマネーが右へ左へと動く世の中だった。強盗事件の被害額は1千億であるが、見学の所有する一部に過ぎない。また被害を申告するには憚られる類のお金だったのだ。実行犯は暴力団組員で、現場にいない共犯として投資顧問業の男が捕まる。しかし実際には十人もの共犯者がいたのだった。そしてその殆どが大卒者であったのに驚かされた。見学社長は1988年1月彼の運転手と共に殺害される。この年には他にも経済事犯が矢継ぎ早に発生した。コスモポリタン社長の池田保次も同年失踪してから未だ不明であるが、おそらく消されたのだろう。いずれもが繁栄と狂乱の末にアメリカ発で世界に飛び火したブラック・マンデーによって引き起こされた事件と言えなくもない。

朝日新聞デジタル2018.12.27付記事

 そろそろ平成が終わり年も暮れようとしていた12月25日に強盗殺人事件の死刑囚二人の刑が執行された。既にオーム真理教の麻原ほか幹部の死刑が執行されていた(令和になる前に執行するという命題があった)が、私には二人の執行が文字通り平成の終わりを告げる象徴的なこととして印象に残った。末森博は、自ら「投資顧問業」と名乗っていたが、面と会っても強盗殺人を犯した被疑者とはとても思えない男だった。彼だって、もしあの頃にちゃんとした仕事をしていれば人並の幸せな生活を手に入れることが出来たに違いないと思う。一つ歯車が狂ったために、その幸せを手に入れることが出来なかった。当時彼はまだ37歳だった。中学校の先生が強盗殺人を行った(2023年2月24日)が、末森は黙秘している彼とは違って、取調官には全て洗いざらい話すつもりでいた。それがせめてもの被害者への罪滅ぼしであると思っていたからだった。

2023年5月12日金曜日

青い空の下 青い海は果てしなく続く

青い空はどこまでも続くよ だけれど時に哨戒は他に転ずることがある

青い海も深く 青い空を映す いつの間にか我が身体(み)は

深い海の中に沈んでゆくけれど 青い空は遠く はるか上空に浮かんで見える

お前達には この島を守って欲しいと願っている

今ここに 水中深く 探査機で潜って来たのは 全く理由がない訳ではない

全ての望みを絶って来たとしても 

我が息子よ 娘よ 妻よ 父よ 母よ

声は届いていないと嘆かないでくれ ただ静かに耳を傾けて欲しい

海はどこまでも ただ果てしなく続いているから

全ての民は繋がっていることを 今は感じることが出来る

争いのない 静けさが世界を覆っていることを 今はここにいるみんなは信じていることを 

希望を持っていることを 全ての人に伝えて欲しい

まだ 戦っていない 敵にも等しく 伝えて欲しい


そして いつかは お互いが分かり合える日が来ることを

手に手を取って 共に笑顔で会えることを 喜んで抱き合えることを

ずっとここで 信じて待っているから もう嘆き悲しまないで

Deep Travel

 MAG2 NEWS ;スペインのカナリア諸島ランサローテ島の海底に眠る彫刻が展示してある海底ミュージアム


 なお、詩は、消息を絶った陸自ヘリUH60JA乗組員らを悼んで詠んだものである。2023.5.12

(追記;その後、遠い昔に大西洋の海深くに沈んだタイタニック号を見にいくツアーが企画され、乗り込んだ参加者が水圧に機体が耐えかね還らぬ人となった。実験機として探査することが無謀として科学者や研究家が非難している。)タイタニックに夢を馳せるのはPCのソフトの中で良いと私は思う。


 ずっと後の追記(2024.4.22)海自ヘリ二機が夜間訓練中に衝突して墜落したようだ。乗組員はそれぞれ4名ずつ。既に1名が死亡を確認され、他の乗組員は行方不明になっている。こういう事故が忘れた頃に起きてしまう。早期の救助が報われることを願っています。




世界の基軸通貨(経済学 番外編)①世界大恐慌

 ヘーゲルいわく「経験と歴史が教えてくれるのは、民衆や政府が歴史からなにかを学ぶといったことは一度たりともなく、また歴史からひきだされた教訓にしたがって行動したことなどまったくない、ということだ」(板谷敏彦「金融の世界史」より)

 米大統領が広島サミットに直接は参加しないと表明した(5月13日時点では参加するに変わった→いつの時代でもそうだが、為政者の一言が大きく経済動向を変えるということは肝に銘じていなければいけないと思う)。5月1日にはFRBイエレン財務長官が「議会が債務上限の31.4兆ドルの引き上げ乃至停止を決めなければ、米政府は債務不履行(デフォルト)に陥るリスクがある」と議会に異例の勧告を行なったことに関係する。同日、米地銀のファースト・リパブリック・バンクが経営破綻(JPモルガン・チェースが買収して決着)した。今アメリカは失業率3.4%、マネーストック(M2=預金を含めたマネー残高)が前年比−4.05%で世界恐慌以来90年ぶりに悪化している。2008年のリーマン・ショックでは25行の破綻で債務合計は3736億ドルであったが、今回の4行の破綻(シリコンバレー・バンクとシルバーゲート・バンク、シグネチャー・バンクを入れた)の債務の合計は、既に5485億ドルに達している。

 歴史は繰り返す。今回は、まず世界大恐慌について取り上げたいと思います。

 1929年 世界大恐慌

 ウォール街の大暴落(10月24日の木曜日)Black Thursday から世界に広がったのであったが、時代はアメリカではベーブ・ルースとルー・ゲリックがNYヤンキースの黄金時代を作り、リンドバーグが無着陸大西洋横断を成し遂げた一方で、アル・カポネをはじめギャングがアメリカの夜を支配していた。FBIが活躍し出したのもこの頃で、世界に先駆けて、スーパー・マーケットに人々が殺到し、電化製品や自動車が売れ、そのための割賦販売と株式の信用取引がバブルを押し上げ、繁栄と狂乱の時代が始まったばかりだった。映画もサイレントからトーキーに移ってはいたが、その陰で失業者が既に1400万人もいたのである。株価はピークを迎えようとしていた。バブルが始まった1924年から5年が経っていた。お金を借りてまでして元本以上の投資をすることをレバレッジと呼ぶが、さらに投資家は証拠金取引を使って借金してまで株を購入していたのである。誰も歯止めがかからない状態に陥っていた。

 GDPは1929年9月の大暴落により、1933年までに4分の1に大きく落ち込んでいる。

 次に世界恐慌時に「現役」だったケインズについて触れたい。いつの時代でも、どの国にでも(中国でも)そうだけれど、経済が収縮均衡の状態である時には、人件費削減のために「大量解雇」という切り札を使うことがある。経済学でいう古典派は失業問題においては「神の手」が「需要と供給の関係」に従い、賃金を一人当たりカットすれば上手く作用すると考えた。しかしケインズは、そもそも緊縮均衡が問題なのであり、経済を拡大することでなければ解決されないと考えていた。このことに関しては日本でも国鉄が大量解雇して解決を図ろうとした時代があった。あの松本清張が描いだ戦後間もない混乱期に発生した殺人事件「下山事件」で迷宮入りを目論んだ警察と、不審点を洗い出そうとした検察の攻防を思い描くのもいいかも知れない。
 賃金カットという処方箋はその場限りのもので、それはそのまま売り上げ減となって企業に跳ね返って来るというブーメラン効果となる。当時迎え入れられたルーズヴェルト大統領はこの大恐慌を治めるために大幅な公共投資を行なった。いわゆるニューディール政策と呼ばれるものであるが、これはケインズ的な考えを推し進めたという訳ではないようだ。実際には恐慌を解決したのは、第二次世界大戦だったと見る人もいる。(長沼伸一郎「現代経済学の直観的方法」)



出典;板谷敏彦「金融の世界史」
   長沼伸一郎「現代経済学の直観的方法」
   デイリー新潮の記事ほか


2023年5月7日日曜日

世界の基軸通貨(経済学 後編)

 アベノミクスを押し拡げてきた黒田日銀は、0金利政策という金融緩和を続けてきた。松田日銀に変わっても、しばらくはこの政策を維持する見通しだ。

 前回で政府又は日銀が為替介入する「不胎化」介入の話をしたけれど、これは殆ど政府の外国為替資金特別会計 でドルなど外貨建て資産を購入する建前になっている。

 2003年に政府・日銀による35兆円を超える大規模な為替介入(=不胎化)を行なったことによって為替レートは2005年から1ドル=120円の円安に転じ、輸出が増大し(税収が増えた)物価下落も歯止めがかかったことになった。逆に輸入物価は上昇することになる。関連企業はこの時利益を圧縮することもあるが、賃金カットをすることで凌ぐ方法を取ることもある。20年も経っているが、当時の経済情勢と今と実はそんなに変わっていないのではないか。どうしてなんだろうか?chatGPTなら為政者に都合の良い施策を提供してくれるのだろうか?

 最近の日本で物価は上がっても中々賃金が上がらない、だから結局消費者の購買力に結びつかないという議論がよく行われる。確かアベノミクスではデフレ脱却を叫んでいたと思うが、消費者にとっては物価は安いに越したことはない。スーパーに行けば、野菜や生鮮食料などが次第に高くなっていく。これは原油高やウクライナ侵攻による原料の値上げ(小麦粉やバターなど)やそれに伴う中国の買い占めその他別の要因もあるだろうけど、家計が物価高に喘ぐのは共通の消費者意識だろう。

 日本が0金利政策を採っている時に、海の向こうでは金融引き締め政策により高金利を続けてきた。そのことが相次ぐ銀行倒産になっているが、それでも今回のFRBは金利を上げた。

 私もドラマが好きだし吸血鬼の女性と結婚したらどうなるだろうかと気を揉むけれど、いつまでも何も考えず馬鹿でいられる訳でもない。

  野口悠紀雄氏は本の中で説く。「インフレターゲットとは、インフレを起こすための政策ではなく、物価が上昇し過ぎないように金融政策でコントロールする」という政策である、と。日本の場合、イギリスなどと違い「物価の引き上げ」が目標とされている。だから、いくら金融緩和をしても物価を引き上げることはできない、実現不可能な目標を設定していることになる、と。FRBの元議長ベン・バーナンキはこのインフレターゲット論者だった。彼はヘリマネ(ヘリコプターからマネーをばら撒くこと)を推奨したと思う。しかし野口氏は、この「ヘリコプターマネー」の有効性を、それを拾った人が使ってこそ意味があり、貯金してしまえば意味がない。(最近⚪︎⚪︎payが支払いが流行っているが、それか地域振興券にすれば意味があると思うけど)それより政府が公共投資などに直接投資する方が効果があると主張する。
 
 前回で仄めかした話だけど、Goldに関して野口氏の著作「マネーの魔術師」に面白い記述がある。それは、「金準備」のため各国の中央銀行が金を地下に「退蔵」(流通せず溜め込んでいる貨幣などのこと)してあるという話。
「各国の中央銀行が保有する金は、世界金評議会によって正確に把握されている。世界最大の金準備を持つのは、アメリカであり8,133.5トン。ドイツは3369.7トン。IMFが2814トン。日本は9位で765.2トンである。」
 有史以来人類が採掘・精製した金の総量を「金の地上在庫」と呼ぶらしい。2017年現在で19万40トンということらしい。そのうちの約15%の金を各国が地下に眠らせているということである。そしてアメリカが公的に保有する金は、ケンタッキー州フォートノックスのFRBの金庫とニューヨーク連銀の地下金庫に管理保管されている。面白いのはドイツは戦争で敗北したから、国内にはなく戦勝国であるアメリカ、英国、フランスの中央銀行がそれぞれ預かっているらしい(ソ連の強奪から防ぐために)。だからドイツ政府の要人も本当に金があるのかさえ知らないそうだ、見せてもらえないらしい。日本の金も戦勝国に預けられているらしいが、現実にあるかどうかさえ不明なのだという。金に関しての面白い話は、昔日本でも警視庁が捜査して迷宮入りした天皇陛下御在位60周年記念金貨偽造事件があるが、話が長くなるので今回はこれまで。


出典:野口悠紀雄著「金融緩和で日本は破綻する」
   同    著「マネーの魔術師」


2023年5月4日木曜日

世界の基軸通貨(経済学 中編)

   今度はドルの基軸通貨についてYoutuberのモハPワールドがアップしている。

YouTube「世界経済情報モハPチャンネル」

 よって今回は別の観点から取り上げてみたい。教材としては、長沼伸一郎氏の本を活用して。現役の数学者や物理学で何らかの仕事に携わっている方なら知らない人がないんじゃないかなぁ、この人は。東大大学院教授でも一目置く人と紹介しておきます。

 通貨が現在のように国の代表である地位を与えられたのは、諸説あるとしても、かつてモンゴル帝国が13世紀初頭に初代皇帝についたチンギス=ハンから数えて五代目に皇帝に就いたフビライ=ハンが、その勢力を大ききく伸ばしてペルシャ(今のイラン)まで統一した際に自国通貨というものの有用性を既に認めていて、大英帝国より先に国として通貨を発行していた。バックにはフビライ軍が存在するということが、より流通経済の地盤を強固にしたようだ。

 変な話、私が中国の北京北駅から初めて電車に乗り「頂上駅」に着いて、あの無用の長物と謳われた「万里の長城」を見学しての帰り、今度はタクシーでホテルまで帰ろうと運ちゃんと交渉していた。彼は100ドルを要求した。50ドルという人もいたと交渉し、75ドルに値切った。ところが高速のパーキングで両替した後に彼は車内で女性と繋がったケータイを渡しやっぱり100ドルに吊り上げてきた。結局渋々了承していたが、もう私には彼がチャイナマフィアと見当が付いていた。北京の市街地に入ってから交代したタクシーの別の運ちゃんに分け前を手渡していた。余程「100ドル紙幣」が満足で嬉しかったのだろう、本当に得意げだった。単純に言えば、メーターのない車の運転手に日本で言えば1万円札を払ったのだから。



 長沼氏は本の中で「現代のドルは、『核兵器という電磁石によって磁化された特権的な世界通貨』なのであり、第二次世界大戦後の国際経済の中で、最初はイングランド型の国際通貨として出発したドルは、いつの間にやらこの種のモンゴル型の国際通貨に変貌を遂げてしまっていたのである」と説明する。元々自国通貨であるはずのドルを国際通貨としてしまったところに無理が生じていると言うのである。お前が生まれた頃に「ソビエト」が崩壊の兆しを迎え、1980年代はこの核兵器という力のバランスを背景にアメリカは一人勝ちをすることになる。つまり単一のドルという基軸通貨が資本主義の経済体制の中で生き残っていくことに繋がったのだ。一中国人がドル紙幣を得てほくそ笑んだように、双子の赤字を抱えたレーガン政権のアメリカは、尚もドル高というそれだけで生き残っていく。そして2000年代に入り、かつての「核の時代」はコンピューター・ネットワークの時代に様変わりし、ドルが売られてしばしば「円高」の時代へと向かっていくことになっても、もちろん核兵器を持たない日本の円は基軸通貨としての raison detre (存在理由)は持たないということになる。

 誰しも「マネー」には興味が尽きない。先に取り上げた暗号通貨(仮想通貨)であるビットコインも、様々な人間の発明した貨幣の「成れの果て」である。そして騙されるものと騙すものという構図も、現代の貨幣を介した流通と言えなくもない。今日仕事中に母親から電話があった。女性の声で「通帳が使われています」というもので、確認して下さいとも言うから電話を切って連絡をしてきたのだ。特殊詐欺とピンときたので、最寄りの生活安全課の当直の方に自宅を訪ねてもらった。得をする人もいれば、損を被る人もいる。長沼氏は本の最後で現代の暗号通貨の特徴についても記述している。数学的知識はなくても資本主義の本質を理解することは私たちにも出来る。後編は、また別の経済学者に登場してもらい、少しまた別の角度でこの問題について話していきたい。 

出典;長沼伸一郎「現代経済学の直観的方法」講談社刊


2023年4月30日日曜日

世界の基軸通貨(経済学 前編)

  1ユーロ=150円、1ポンド(英)=170円、そして1ドル=136円(4月30日現在)。昨日YouTubeで妙佛DEEP  MAXが取り上げていた世界の基軸通貨=ドルからの脱却を世界が模索しているという話があったことから、ここでも取り上げたいと思います。詳細は次の動画で確認をして下さい。

妙佛DEEP MAX「ドル支配からの脱却」

 その昔、僕が小学生の時は1ドル=360円という固定相場の時代だった。そのうち180円となった時に誰かが半ドルなんて例えたことがあった。この頃世界は金本位制と呼ばれていた。

 ブレトンウッズ体制とは、戦後の国際通貨制度のことで、米ドルを資本主義国家の基軸通貨として、その根底に金1オンス=35ドルと定めたもので、金(為替)本位制は、各国通貨がドルに対して固定したものなので、日本も1ドル=360円という固定相場を行っていた分けです(1971年のニクソン・ショックまで)。この1971年12月に何があったかというと、ワシントンのスミソニアン博物館(行ったことがあるけど、あまりに広大な博物館で飛行機が展示してあったり度肝抜かれてしまう)

に10カ国の蔵相が集まったのです。この時の会合で、日本も1ドル=360円から308円に切り上げられ(相対的にドルの値打ちが下がった)、各国も順次2年後までにこれまでの固定相場を変動制へと移行していくことになったのだ。そして1番最初に書いた対ドル比較を円で例えれば、1人民元=約20円で、ロシアの1ルーブルは2円弱でしかない。


 元々貨幣は世界中で商慣習の必要から生まれ、日本でも奈良時代には鋳造技術を大陸から取り入れてもいる。8〜10世紀には宋の貨幣を輸入したり、或いは禁止したりしつつ鎌倉幕府も貨幣経済を認め、金座・銀座があった江戸幕府に継承され、商業が盛んに行われると手形が発行されるようにもなった。金という鉱物は、銅などとは違いお金に変えたら価値がある物だったんですね。

 歴史的には1816年イギリスが1ポンドの貨幣(金貨)を鋳造したのだけれど、この金貨と同額の紙幣が発行され、また一定量の「金」と交換できるということになった。これが金本位制の始まりだったのだ。つまり植民地を世界に拡大し貿易国としてのイギリスが、金に裏打ちされた英国ポンドという貨幣で決済したことが世界でこの制度(金に基づいた貨幣経済)が構築された最初だったのです。日本の金本位制は明治に入ってからだった。何とかの埋蔵金なんて言い方が存在するけど、実はまだまだ世の中には認知されていない不思議なことが存在するらしいんだけどその話は後に譲ることに。

※「金属地金の裏づけのない、もしくは裏づけが不十分である通貨を経済に導入することによる経済学的な帰結を考察することは、最も重要な研究課題の1つである。」(「教養としての経済学」より、齊藤 誠編)

 日本はアメリカに対してよく貿易黒字といって攻撃の的になっていた時代があったけど、ここでちょっと難しい話をすると、そういう時には貿易赤字のアメリカは貿易黒字の日本に対し債務分として金(Gold) を輸送する必要があったんです。もし日本が黒字に転じたことで金の保有が増大するのでインフレという現象が起きるとすれば、インフレを抑制しなくちゃいけないから、「不胎化介入」ということが行われるのです。通貨の量を為替介入することで輸出品の価格を維持し競争力を強化しようとするのです。現代は金本位制ではなくても「不胎化政策」は日本の政府も行っており、各国でも行われているんです。結局米ドルが世界の基軸という足枷が招いたことなのかも知れない。まさに金利引き上げの末アメリカの銀行が次々潰れている昨今、ヨーロッパでもクレディ・スイスが破産し「AT1債」が紙クズになってしまったなんて話が拡散されており、世界のマネーから目を離すことができない時代だというのも事実のようです。


 出典;横山和輝名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授著「日本史で学ぶ経済学」
東洋経済新報社刊


2023年4月11日火曜日

そして僕は途方に暮れる

 1980年代ヒットソング ベスト4

大沢誉志幸「そして僕は途方に暮れる」 (1984年9月リリース)

この歌には、当時の僕の気持ちがそのまま投影されているような気がする…何か悔しいような、どこかもどかしいような…

大瀧詠一「キミは天然色」(1981年3月リリース)

南佳孝「スローなブギにしてくれ」(1981年1月リリース)

岡村孝子「夢をあきらめないで」(1987年2月リリース)→この曲は、お前が今でもずっと夢をあきらめずにお前らしく前を向いて生きていることを思ってここにあげるな

 1980年代に何があったか。大学生の自分は免許を取って、柔道を始め、一人旅をしていた。その頃は、ちょうど歌謡界には松田聖子という歌姫が登場する。それはラジオの番組がきっかけで、呉田軽穂という人が楽曲を書くことで(主に作詞は松本隆で編曲は松任谷正隆が担当)彼女が本格デビューを果たすことになる。作詞も手がけるその人はのちにユーミンとして一世風靡する。僕は相変わらず大学生活でバイトしながら週刊誌のグラビアを見たりしながら将来を夢見ていた。松任谷正隆という人もその時期にそのようなことをしていたようだ。僕がシナリオを描いたり童話を描いたりしていたのもこの時期だった。そして週刊誌では80年代の音楽とは何かを問う論文を募集していた。どうせ通らないけど、当時映画音楽を作曲もしていたギタリストの中林淳正という人の音楽が気に入って、その曲を取り上げて評した。1979年の11月ごろだった。結果は写真のごとく千人以上の応募で2名だけが選ばれた。ただ行けるはずの西海岸が、夢と消え大人になっていくのだけれど、ただあの時の少しの自信が今の自分を形成しているようにも思えるのだ。悔しい気持ちがバネとなって。

※この行けなかった理由を今更ここに挙げるつもりはないけれど、もしかして、何か渡米することで災いが降りかかったのかも知れないと考えることもできる。そして渡米できなかった事実は、後に2005年のN.Y.行きとなって結実する。誰かからThis is New York という童話もらって納得する自分もいた。このように僕の人生は、ずっと先のどこかでやっと実を結ぶ、と言うようなことがあったりする。






 話がちょっと飛躍するかも知れないけれど、宇多田ヒカルが登場して(1980年代に生まれ1998年Automaticで衝撃デビュー)、きっとこれまで日本のポップスを牽引してきた小室哲哉は衝撃を受けたのだと思う。それがああいう形で一時姿を消すことになってしまった。安室奈美恵が最後に歌う歌 Finery を作るまでは。昨夜YouTubeで映画「世界の終わりから」の完成舞台挨拶で主演の二人と監督が舞台で気持ちを伝えているのを見た。特に印象的だったのは紀里谷和明監督の話だった。ちょうど2002年に彼は宇多田ヒカルと結婚する。そして5年後に離婚。彼の心の中で2004年から今までの人生を振り返ってとても辛かったことを舞台で打ち明けていた。その気持ちはちょうど自分の年月とぴったり重なっている。だから妙に彼の一言一言に頷いている自分がいた。2004年には肉親(兄)を亡くしてもいる。そしてやっぱりその後の離婚がいちばん彼の人生に影響したと思う。なぜなら手を伸ばせばそこに最愛の人がいたのだから。そしてなぜその人を手放さなくてはいけなかったのかも一人苛まれていたことだろう。僕にとっては三十五という人が離れて行ったのだから...。 明日は彼のその最後と称する映画を見にいくことになっている。

 そして昨日(4月12日)夜勤明けの朦朧とした頭もそこそこに、梅田のイーマの以前ブルク7と言ってた映画館(今はT・ジョイ梅田というダサい名前)で紀里谷監督の世界の終わりから、を観た。

 最初は確かに黒沢映画を彷彿とさせる騎馬シーンがあったり、いじめを許さないヒロインを守る女性刑事も登場する。タイムカプセルやカセットテープといったアイテムやタイムマシーンといった構想、未来のシーンではUFOとかも出てくるけど、本筋はと言えば、今の世界はもう誰も救いようのないところまで来ているんじゃないのか、というのがテーマなのだろう。連想するのはやはり、紀里谷氏が居住していたニューヨークを舞台にしたマット・デーモン主演の「アジャストメント」だ。「本」の中に人の未来を決める運命が刻印しているみたいな風なところは非常によく似ている。影響受けているのかも知れない。ヒロインも最初は抵抗していたけれど、次第に「運命の力」に押し流されるように従っていく。それは「夢」の中で自分の分身であるはずの幼い少女と出会うことで不思議な力を得て、自分の「運命」を悟っていくのだった。Ajustmentという映画は対照的に主人公が「運命」だとされていくのを「いや違う自分の人生は自分で切り開いていくんだ」という熱い胸に秘めたものを感じられ感動したから何度も見たのだった。そして

 ウクライナ侵攻というロシアの一方的な侵略戦争というのであれば、確かにそれはかつてはアメリカの専売特許だった。ベトナム戦争は英仏から米に主力を変えた戦争(ベトナムから言えば民族紛争)だったし、イライラ戦争(イランvsイラク)中東戦争(イスラエルvsパレスティナをはじめとしたアラブ)、アメリカのクエート侵攻と続く湾岸戦争。9.11後のアフガニスタン侵攻とイラクのフセイン打倒。そして今でもイスラエルとパレスティナは毎日のようにミサイル合戦を繰り広げている。(また中国が仲介を申し入れているが…)

    かつて広瀬隆氏は「地球のゆくえ」という本で、毎年どこかで戦争が起きているということを語っていた。今もその事実は変わらない。だから紀里谷監督の言いたいことは、人類はもう行き詰まっているのだ、もう後には引けないと解釈できなくもない。現にロシアによるウクライナ東部や南部への攻撃と侵略は収まりそうもない。だからプーチンが死ぬまでどうしても侵略をしないでいることが出来なかったという事実は、逆に言えばそれを傍観者として我々が手をこまねいてそれを許しているのと同じことだ。お前が、「世界中(の人)に幸せを」もたらしたいと思っていたのも理解できるし、実現が容易じゃないからその言葉は今でもそれが色褪せてないのだと思う。映画の最後で問いかけていた。世界の人は滅びる前にどうしたいのかと。作者は世界を救う道として愛を説く。今朝政府が北鮮がミサイルを発射したとJアラートを北海道エリアに発令した。結果は誤報ではないが「正確」な情報を確認できずに終わった。その時頭の中をよぎったのは、ちょうど昨日映画の最後のシーンでミサイルのようなものが尾を引いて次々に投下されているというシーンだった。

 もしかしてキムという気狂いの指導者にミサイルの頭に核弾頭というおもちゃを乗せるように仕向けたのも、実はアメリカなのかも知れないのだ。

2023年4月5日水曜日

推定無罪とは

    被疑者・被告人は、刑事裁判において有罪が確定するまでは、「罪を犯していない」人として扱わなければならないという原則を「推定無罪」と呼ぶ。

 2019年6月16日午前5時38分。吹田警察署千里山交番前で警察官を刃物で刺して拳銃を奪った強盗殺人未遂の罪で、当時33歳の男について一審の大阪地裁は懲役12年の刑を言い渡したが、今年3月20日大阪高裁はそれを破棄して、36歳となった被告人に無罪を言い渡した。事件当時被疑者の父親が関西テレビの重役であったことから逮捕の翌日被害者に対して謝罪のコメントを出している。高裁の判決理由は、被告人は「重い統合失調症で犯行当時心身喪失状態にあった」として刑事責任を問えないと判断したのだとされた。検察は上告を断念している。

 犯人は、まず「空き巣に入られました」と虚偽の通報を行い、指令により同交番の2名の警察官が現場に赴き、26歳の古瀬巡査は少し遅れて現場に向かおうとしていたが、手薄になった交番を狙って交番前でバイクに跨って出発しようとした巡査に犯人は「おい」と呼び止め、即座に所携のナイフで腕、胸など7カ所を刺して転倒させ、それでも所期の目的である「拳銃を奪う」ために、倒れた巡査を刺し続けて拳銃を奪い逃走した。非常に計画的な犯行であった。当初大阪府警は事の重大さ(警察官が殺害されようとしたことと既に拳銃を奪われていること)に鑑み、これまで発令されたことがない府下全域において「特別配備」(全体配備と呼ぶ)を敷き、警察官を全員体制で動員し犯人の補足に努めている。その後古瀬巡査は、意識不明の重体で病院に運ばれているが一命は取り留めた。

 犯人はといえば、前日には沖縄をゴルフをするために旅行し出会い系で知り合った女性と有償の性的交友を行なっている。もし被害者の巡査が、肺の一部を摘出するほどの手術の過程において死亡してしまったならば、どうなっていただろうか?それでも裁判は被告人の生命を一番に守ることを重視しただろうか?巡査は数分の時間で運悪く被害に遭ってしまったが、被告人に対しては山上容疑者と同じく精神鑑定のため鑑定留置(3ヶ月)の措置が取られている。

 似たような事件は次々に起きている。遡ること1976年10月18日午前2時20分頃警視庁管内の東村山警察署の八坂派出所で事件は起きた。少し酔った風情の男が派出所前にいたので当直勤務中の55歳の巡査部長の男性が声をかけたが、男の目的は、警察官を殺して警察手帳と拳銃を奪って強盗を行うことであり、職質の際に所持品検査をされることを嫌がり、咄嗟に「今不審なアベックを見たんです」と虚偽申告をし誘き出しを行なった。現場に着くと、すでに用意していた金属製の棒で殴打し格闘の末警官の胸を突き刺し、「拳銃と警察手帳」を強取しようとしたが、警官の悲鳴に近隣住民が気付き男を制止し、犯人は犯行を断念し逮捕されている。警察官は出血多量で即死であった。この事件の最高裁判決は死刑であり、「被疑者の性格に著しい精神病質等があったとしても、精神病には至らず判断能力がある」としている。 

 これまで警察官が襲われて拳銃を奪われた事件は数多くある。1984年9月4日の午後0時50分頃十二坊派出所から近い京都の船岡山公園で当時派出所に勤務していた鹿野巡査長が「誘き出し」に遭い(本来は二名勤務であったところ1名は昇任試験で不在であった)、かつて同僚であった廣田元巡査部長によりナイフで滅多刺しの上殺害され、奪われた拳銃で背中を一発打たれて死亡。廣田はその銃で大阪の京橋のサラ金業者に押し入り、応対に出た社員の「冗談でしょう」の言葉も虚しく即死させている。京都の事件はあまりに悲惨で可哀想な事件だったので、私が若い頃鹿野巡査長が殺された船岡山公園に赴き花を手向けたことを覚えている。

 それから東村山署の事件の16年後の1992年2月14日午前3時20分頃同じく東村山警察署の旭が丘派出所で勤務中の巡査長(当時42歳)の男性が襲われて首や胸等を刺されて殺害されているが、2名勤務の1名は通報事案に出ており、その際に狙われ、拳銃が奪われているが、道案内をしていること等から計画的犯行が伺われた(2007年公訴時効により未解決)。

   
 毎日新聞本社へりから千里山交番を臨む(大西達也氏撮影)右後に阪急千里山駅がある

 2018年6月26日深夜の2時10分頃富山県(中央署奥田交番)でも起こっている。46歳の警部補が30ヶ所を刺されて殺害され、奪われた拳銃でその後小学校を警戒中の警備員が犯人に射殺されている。

 殺人は裁判員制度の対象事件である。他に強盗致傷、傷害致死、危険運転致死、現住建造物等放火、身代金目的誘拐、保護責任者遺棄致死、覚せい剤取締法違反の8つが対象事件である。裁判員制度はアメリカ陪審員制度に似ている。今の日本の裁判員制度では有罪の判断が、裁判官と合わせて過半数必要とされる。ただ一審で有罪とされたものが、吹田事件のように二審で無罪となることもあるのだ。あまりにも計画的な犯行を無罪とさせたものは、常人が窺い知れないいくつかの見えない要因があるはずである。

 「十二人の怒れる男」は、1957年(白黒映画)社会派のシドニー・ルメット監督の映画で、主演はヘンリー・フォンダ。うだるような暑い夏で、ほとんど狭い会議室の中で個性派の俳優が熱弁を振るうというのが見せ場だったが、陪審員に選ばれた男達が殺人犯とされた黒人の若者について議論する。初めに決を取り11人が有罪としたが、「臍曲がり」の男(主演)だけが、それでも議論を尽くそうとみんなに言う。「おいおい、ナイターが見れなくなるぞぉ、なんでこんな馬鹿げた事時間かけてやらなきゃなんないんだよ。こいつバカじゃないのか。有罪に決まってるじゃないか!あんな奴」ところが、一人一人、有罪としていた者が、若者の現場での行動を再現していくにつれて無罪に変わっていくのだった。最初のタイトルの「推定無罪」については、この映画を見れば理解できる。ただいつの世でもそうだけれど、まず被害者ありきではないかと思う。被疑者の人権ばかりが叫ばれるが、被害者の人権が先ではないかと弁護士の先生に言いたくなる。その上で、取り調べの可視化とか、有罪とされるべき証拠の存在を重視されるべき(事実の認定は、証拠による)であろう。

 先頃最高裁が、袴田事件について再審開始の決定を下している。公権力の濫用は許されないし、恣意的な逮捕権の運用は控えるべきである。Winny事件のところでも取り上げているが、かつては警察庁長官襲撃(殺人未遂)事件でも、警視庁の逮捕権の乱用と見られる事例があった。最初からオーム事件に結びつけてしまい同じ人間を再逮捕したのだが、2回とも東京地検はそれでも被疑者を不起訴にしている。公判に堪え得ないからであった。捜査を尽くせば別に犯人はいたのだが、警察は真実を見失い時効を迎えてしまった。

4月5日補追;付け加えて言えば、日本は英米と同じくcommon lawにおける「判例主義」に基づいている。戦前まではcivil lawでドイツの大陸法をモデルとしていた。現憲法の下に過去の判例が最優先になり個々の事件が裁かれるのである。よって前例がない事件が起きると、それが判例となり、また前審を覆すような判断がなされれば、新たな判例となるのである。


参考文献;鹿島圭介「警察庁長官を撃った男」

     NHKスペシャル「未解決事件 File.7」

     原雄一著「宿命 國松警察庁長官を狙撃した男・捜査完結」








2023年3月30日木曜日

デジタル通貨(CBDC)について

    ナカモトサトシは、いったい何者なのか?

という疑問はさておき、中央銀行である日銀は有識者会議を開き、当面の課題として「デジタル円」の発行を行うための民間を含めた実験を行う予定であることが本日(2023.3.30)発表された。そもそもデジタル通貨(CBDC)は、仮想通貨というものが誕生しての結果として、また共産圏、資本主義圏に関わらず世界の潮流として本格的に法定通貨に変わる新たな通貨として議論され始めたのだけれど、特に最近注目されたのはアメリカの旧facebook(現在はMeta社)の暗号通貨リブラLibra(現在はディエムDiemと呼ばれる)を発行しようとしたことがあって、その時は政府下院により中止を求められ頓挫していることだった。なぜなら「世界の基軸通貨」であるアメリカのドルが暗号通貨の発行によりどうなってしまうか分からないとの懸念があったと思われるが、犯罪収益のマネーロンダリングやテロリストの資金源などに利用されることへの対応が不十分であったとも言われている。

 しかし既に国の法定通貨として仮想通貨を流通させている国もある。エルサルバドルは、2021年9月7日に仮想通貨(現在は暗号通貨と呼ばれる)として「ビットコイン」を採用した。ところがビットコインが暴落の憂き目に遭い、現在IMFは見直しを求めているようだ。リブラと違って資産価値としての裏付けを持たない通貨である点で暗号通貨は不安定な動きをすることがある。最近では、FTXの創始者が起こした詐欺事件があるが、日本でも過去において暗号通貨に投資をしたが一夜にして預けた資金がネットの不正アクセスにより簡単に消えてしまうといった事などが発生している。かつては、マウント・ゴックス事件(70億円相当の仮想通貨が流出)やコインチェック流出問題(580億円相当の仮想通貨が流出した)などネット環境の脆弱性をつき、暗号通貨そのものの管理に関して信用性に疑問と問題を投げかけたこともあり、日本では金融資産を暗号資産に投資するということは行なっていない。

 既にデジタル通貨を発行している国もある。カンボジア、バハマ、東カリブ、ナイジェリアである。中でも、カリブ海にあるバハマは人口40万人で、700以上もある島国で、各島の金融サービスがうまく機能しておらず、輸送コストも高く、ハリケーンなどの自然災害が起こればATMも利用できなくなる等の問題もあり、通貨のデジタル化、QRコード(発明者は、日本のデンソーウェーブの原昌宏氏である)決済利用による送金システムにより、国民のための金融サービス向上につながっているという事例もあるようだ。(Impress Watchの記事より) 

 

          写真は、Paul M氏のTwitter投稿より

 そもそもビットコインという暗号通貨は、ナカモトサトシが考案したのだったが、それは中央銀行というものを通さずに通貨の交換が出来るかという課題をクリアしたことに画期的な意義があった。そのためにブロックチェーンという技術が使われ、誰かが誰かにビットコインを売買するという時に、ハッシュ関数というものを使い暗号化して、誰もがそれを見れ得る状態にすることで安全な交換であることを証明するというものであった。この時に第三者による取引の承認と正しく取引がなされているかという確認作業が必要になるが、それをマイニング(=採掘)と呼び、膨大なコンピューターで作業するから、かなりな熱量というか消費電力が必要になるといったマイナス面もあるが、採掘者はそれにより新たなビットコインを報酬として手に入れることが出来るようだ。そして2140年がくれば、発行量が2100万BTC(ビットコイン)に達し、それ以上発行されることはないとされている。


 もし、初めに書いたように日本の中央銀行である日銀がデジタル通貨を発行するというようなことになれば、もはや中央政府を介さない「暗号通貨」の必要性を唱えたナカモトサトシも地球上のどこかで苦笑いをしていることだろう。彼は、1975年4月5日生まれの47歳であるとされているが、今日誰もその正体を見た者はいない。

参考資料;杉井靖典著「いちばんやさしいブロックチェーンの教本」インプレス刊



2023年3月24日金曜日

WBC 日米の対決 アメリカンドリームと日本の夢

    準決勝でのメキシコ戦では辛くも村上のサヨナラヒットで決勝進出という夢を勝ち取った侍ジャパン。ほんとに強かったと、決勝戦を振り返って誰しもが思った。そこにはある勝因があったと気づく人もいた。全勝での完全優勝。

 今年のWBCを優勝に導いた立役者は誰だったか?MVPを獲った大谷翔平選手(今大会打率.435、本塁打1、打点8)であり、ベストナインに輝いた大谷と吉田正尚選手(打率.409、本塁打2、打点13)を挙げられるが、サヨナラヒットと決勝の本塁打を打ったのは村上宗隆選手であり、イタリア戦で2塁進出でアウトになった(H&Rのところをサインミスだったと帰国後の会見でコーチが明かした)岡本和真が、名誉挽回すべく5回に放った左翼スタンドに入る3ランも強く印象に残った(この時大谷が意表を付くバントヒットをして出塁していた)。更に決勝でも彼はソロHRを叩き出してもいる。でも帰国後の岡本の会見ときたら圧巻だった(笑)。ただメジャー選手4名が米国に残り華々しい凱旋を果たせなかったことは少し悔やまれた。

 アメリカは1番から9番まで大リーガーのベストメンバーを集めていたし(これは日本が過去に優勝した時とは全く違っていた)控えのクローザーも他国とは格段に違っていた。そんなアメリカに日本はなぜ勝ったのかという疑問が残る。それは、ヌートバーをはじめ全員の気持ちを一つにできる野球(始める時には必ず毎回円陣を組んで選手交代で檄を飛ばしていた)いわゆるチームワークの勝利だったと言えるのではないか。だから勝てば奇跡と言われる対戦相手にも少しも物怖じせず突っ込んで行けたと思う。それにはもちちろん大リーガー選手4名を擁していたのもある。みんなでタッちゃんTシャツ着ていて、塁に出たらペッパー・ミルをやっていたから、世界でも羨むほどのチームワークが徹底していた。イチローが称賛したようにダルビッシュが牽引役を買って出たこともある。彼は大枚叩いて(食事代だけでも2千万円を超えていた)チームの選手を引き連れて野球以外の場所でも結束力を強める働きをしていた。そして大谷がいるから、というのがやっぱり大きい。大谷はダルをリスペクトしているが、ダルも投球フォームを大谷から研究しているのだ。各選手、山田にしても大谷にしても以前ならただHRを打ちたいという選手が多かったが、良く球を見ていて、四球を選び、結果的に打順がクリーンナップに繋げていた。村上が4番から5番になり吉田に地位を奪われたような感じがしても、結果的にはいい位置にいたはずだ(だからさよならヒットに繋がった)。アメリカのメディアも戸郷や高橋や伊藤大海など投手陣を羨む声があった。監督は何より8回、9回は自ら投げるという声に任せたと言うし、そもそも二刀流をここまで育て上げた監督だからチームを引っ張ってこれたのかも知れない。

 大谷は大きな夢を引っ提げて日本球界にやって来た。彼にしてみれば人生設計でいう予定のコースに過ぎなかったのだが。彼は日ハムと交渉する際に二刀流(栗山監督が推したという説もある)とメジャー移籍を条件にした。当時まだ日本という国は(アメリカだって同じ)閉鎖的で、winnyのところでも記したと思うけど、特異な才能を持った人が現れると「出る杭は打たれる」ごとく潰しにかかる風潮がある。仮に「二刀流」が許されたとしても、日本球界では不可能なことだと思われていたし(野村監督はそう見ていた)、今に潰れるのが関の山と見られていた。アメリカの本場では、かつてはベーブ・ルースがいて、その再来と呼ばれている彼は、今では米本国でも熱狂的ファンが多い。渡米した当初はスランプに陥り、イチローに助けを求めた。イチローも最初は振り子打法を変えた。同じように大谷も打撃フォームを変えたことによりスランプから脱したのだった。チームメイトのマイク・トラウトは、どちらかと言えば大谷をあまりに知らなさ過ぎると彼の存在をアメリカの野球ファンに知らしめた程で、9回表の最後のバッターでその親友との因縁の対決となった。9回表一人目がマクニールで4ballで出塁し、2番手のベッツがセカンドゴロでgets2になり、トラウトが最後のバッターとなったことがマンガみたいだと称された。大谷のDH解除しての登板に全く不安がないではなかったと思う。

 決勝ではリプレイ検証が2回あった。1つは、村上が一塁に送球したのがアウトになったものが「セーフ」に、また大谷がヒットして一塁に出塁したのをアウトではないかとされたものが「セーフ」と判定された。準決勝での甲斐捕手が送球して源田壮亮が刺したが、メキシコのトレホ選手の技巧プレイには舌を巻いた(最初セーフだったのが「源田の1ミリ」と謳われがアウトとなった)。この時敵の選手も天晴れだったけど、海外メディアは彼が既に指を骨折して出場していたことを知り、これぞサムライと言って称賛していた。右手小指は反対向いていて、本来なら病院で欠場なのを、コーチは彼のどうしても出場するという信念に押されてしまった。


<彼の夢>

20歳 メジャー(年俸15億円)

 →28歳2023年の年俸は550万ドル(推定43億円)     

22歳 サイ・ヤング賞                               

23歳 WBC日本代表                                

24歳 ノーヒットノーラン 25勝をマーク                     

25歳 世界最速175km/h                                                                                                                         

26歳 ワールドシリーズ優勝 結婚                         

27歳 WBC日本代表 MVP                                                                                                                  

28歳 男の子誕生(現在28歳)                          

29歳ノーヒットノーラン2度目の達成

 

 WBCについては、新型コロナの関係で開催が遅れたし(人生何が起きるか分からない)、現在のところノーヒットノーランやサイ・ヤング賞も達成できてはいない。MVPについては一昨年は大谷翔平で、昨年はアーロン・ジャッジ(NYY)が選ばれている(それも手伝ってかWBCでは大谷がMVPに選ばれた)。サイ・ヤング賞については、これまでダルビッシュが最有力に目されたことがあるが(当時ダルの妻の一言でスランプから脱したことを知っている)、まだ日本人選手では入賞者はいない。

 思えばメジャー移籍は珍しくなく、昔から誰しも日本人選手の憧れの舞台であったし、成功した人もいる。レッドソックスを世界一に導いた投手の一人に上原浩治や松坂大輔らがいる。先鞭を付けたのは野茂投手であり、江夏投手でもあった。(お前が生まれた1979年の日本シリーズでは、9回裏に江夏が広島カープの投手として投げた21球は有名で、山際淳司が短編ドキュメント小説に表している)。3年後のWBCが早く来ないか、侍ジャパンの勇姿をまた見たいと子供達は強く望んでいるに違いない。

「最後まで自らが望む未来、可能性を信じ抜くこと。そうすれば、物事は必ず望んだ方向へと進みはじめます。」誰かが言ったその言葉を、おれも信じている。


写真は、NHKニュース、東京中日スポーツ、Number Web、Getty Images より






2023年3月18日土曜日

Winny 新たなる挑戦と挫折

    昨日(2023.3.17)梅田のtohoシネマズで映画を観てきた。その日は本当は昔の部下の一人が焼きそばが好きやったからご馳走しようと呼んだんやったけど、急な出張で叶わず予約していたので一人で実行したのだった。(そこはリバープレイスで、お前と一緒にBY08キャッチしたの覚えてるやろ)三十五と知り合う前の2000年ごろに、映画の主人公の彼はプログラマーとしてファイル共有ソフトなるものを立ち上げて一般公開した。当時このソフトは思わぬ反響を呼び、このソフトを利用して誰もが欲しがる情報や違法な楽曲などをアップロードする者もあり警察は著作権侵害とする利益侵害の当事者からの要望もあり取り締まることを余儀なくされる。

 違法ダウンロードとは、例えば当時人気の宇多田ヒカルの楽曲がCDを手に入れなくても無料で手に入るという代物だったからだ。それだけに中には警察関係者からのアクセスも有り、大変な状況になりつつあった。真っ先に食い物に晒されたのは、京都府警と北海道警だった。それは、気付かぬうちに2チャンネルの掲示板に公開されては困る公文書がアップロードされてしまったからだった。つまり京都府警の場合は、ひったくりの被害者の供述調書であり、北海道警の場合は交通事故の実況見分における被害者の調書だった。その違法なアップロードは次々に全国の警察官が所有するPCに及び、愛媛県警や岡山県警にも波及し、警護計画書の概要や捜査情報等ありとあらゆる情報を見なくてもいい者までもが共有するという現象が起きる結果となってしまっていた。実際にはそれぞれの警察官が自宅に帰って残業した際に、たまたまこのファイル共有ソフトを同じPCで開いたことで起きたものだった。つまりファイル共有ソフトとは、文字どおり無料で宇多田ヒカルの歌や見たいアニメや映画もダウンロード出来るが、その代わりに自分が繋げているPCに入れた情報も不特定多数の全国のPCに曝け出してしまうというものであった。そこまではこのファイル共有ソフトの作者は想定していなかっただろう。通称「金玉ソフト」というものは、さっき言ったネットに繋がっているものなら何でも吸収してしまうというウイルスで、このファイル共有ソフトを通して可能となるもので、利用者が気付かぬうちに個人情報が盗まれてしまうという想定していない状況を作り出していたのだった。

 ただそういう想定を予想していなかった、Winnyというファイル共有ソフトを作り出し公開した当時東大助手である金子勇氏には大きな夢があったに違いないと思うが、思わぬ事態(警察の身内が情報を拡散してしまうという不手際)にはまだ気づいていなかった。著作権法違反の幇助の罪で逮捕されるまでは。映画は、彼が逮捕され、著名な弁護士が不当逮捕を訴え法廷闘争するも地裁で罰金の有罪判決を受ける結果となってしまうまでを詳細に描いている。そして映画の最後で金子本人が出て語るシーンがある。最高裁で彼が無罪を勝ち取るまで10年の歳月を要したが、その1年後には彼の夢を実現することもなく短い一生を終えることになる。

 映画を見た翌日、最近私の周囲から消えた一人のプログラマーにメールした。彼は社会適応がしにくいが自分の夢を追っている。それが金子氏に通ずるものであると思ったからだった。

  「Winnyを昨日梅田で観た。当時京都府警が、また時の政府が、日本にとって有用な存在である金子勇という人を、そんな存在であることを認識出来ずに死に追いやってしまったんだなということを感じて涙した。p to p の本来有るべき状態を、彼の死後にも誰かが構築しなければならないことも感じた映画やった。2ちゃんという掲示板も当時は問題化したし、世界はその後Youtubeが出現し、今またTwitterに変わるものが出てこようとしている。Microsoftは新しい検索エンジンであるGPT-4を最近公開した。映画の最後で彼は言う。『今でも私は、科学技術はすばらしいものだと信じています。新しい技術を生み、表に出していくことこそが、私の技術者としての自己実現であり、また、私なりの社会への貢献だと考えているからです。10年前にWinnyを作っても、検証ができなかったでしょうし、10年後にWinnyを作っても、ありふれた技術だとみなされたでしょう。Winnyの開発は早すぎたのでしょうか。それとも遅すぎたのでしょうか。Winnyは将来的には評価される技術だと信じています。私が、Winnyの開発中断を余儀なくされてから、すでに2年以上にもなりますが、その間にも世界中で、さまざまな新しい技術が生まれ、私の方でも新しいアイデアを思いついています。ですが、それを実際に形にすることすら出来ません。私にはそれが残念でなりません。』(支援者が全国から募り、被告人としての彼は保釈されたがPCを自由に使えず親族とも交流出来ずにいた。私が涙したのは、彼の夢を威信をかけて阻んだ警察が、同じように私文書を偽造しても組織を守るというところに無念の気持ちがはたらいたからだと思う。」

 当時私たちは行政文書は「一太郎」という文書作成ソフトを重宝がって使っていた。しかし毎年一つずつバージョンアップしたし、その度に価格が転嫁された。有名なAdobeソフトもそうだったし、著作権を保護している側のソフト開発会社は懸命に守っていても、利用する一般ユーザーはその度に利益を吸い取られる不利益を被っていたのも事実だった。取り締まっていた警察だって一太郎からやがてOfficeに文書作成ソフトが変わっても、似たような現象が起きてユーザーと似たような立場に置かれたはずだ。だから「もうウィニーは使いません」という誓約書を全国警察の全署員に書かせていたはずだ。この映画の中で、もう一つ愛媛県警の不祥事が描かれている。出張旅費とか捜査費という名目を携わっていないはずの警察官が金額を書いて会計に提出するというもので、それを正義感に燃えた一介の警察官である仙波巡査部長が告発していく。県警や警察庁が真っ向から否定し彼を逆に陥れていくのだが…。しかし何とWinnyによって一番警察が困る本物の領収証という内部情報が暴露されていく。




 また2階の部屋で一人「やまとなでしこ」を見ている自分がいた。

 三十五は、桜子より強かったと思う。だって桜子は結婚ギリギリで思いとどまって欧介のもとに走ったんやから。第9話の最後で欧介が桜子に言う「きっといつか辛い事忘れることが出来る日が来るから。きっと来るから!」と。それに答えて桜子は「ずっと小さい頃から思ってた。きっといつか王子様が現れるって。でも貴方じゃないわ」欧介は「分かってます」と優しく流す。そんな欧介に桜子は顔を埋めるしかなかったのだった。魚屋であるが数学者でもある欧介はそんな時でさえ自分の気持ちを素直に表現できないのだった。もしも欧介が奪ってでも桜子を自分のものにすれば人生は変わっていただろうか…。でもどちらにしても桜子は欧介を選んだけれど…。占い師(このドラマの脚本家も占い師でもある)はいう。

 人と人のご縁は不思議なもので、お互いの大切さや魅力を知るために、一旦離れなければならないこともあるのですから。恋人として付き合うだけでなく、別れを経験しなければ見えてこないこともあるのですね。これから先、また新たな関係を築いていくうちに実感できるはずよ。別れという経験も、お二人にとっては欠かせない要素だったのだと。そして、その経験を共にしたからこそ深まっていく愛情があることにも。

 

 




2023年3月17日金曜日

象の嘆き

  誰しもが思った。タイやインドの奥地で、そして市街地にさえ現れた象は遂に気が触れたのだと。

  多くの象のうち一頭だけが暴れたのは、人間のせいではないと。

  しかしいつの時代でも人間は、自分の都合の良い考えでまとめてしまう。決して人間のせいで

はなくて、奴らが悪いんだと。バスや乗用車や無辜の市民を襲ったり普通はしないはずだ。だ

から根っから野蛮な生き物なんだと。

  動物園の飼育員が動物に襲われて死ぬようなことがあった時も、奴らは怖い野蛮な生き物なん

だとされるのだ。

  パンダが契約を終えて日本から中国に返された。あんなに可愛いのになぜ私の前から連れ去っ

てしまうのかと人は問う。その前に、あなたはパンダを中国の奥地からなぜ竹林のない所にわ

ざわざ運んでくるのか問わないのだろうか?年間1億円の動物の契約はそうはない。六本木ヒル

ズに住む女性国際政治学者なら普通に年間3千万円程度の賃貸契約なら結んでいることだろう。

  人はいつの世でも勝手な生き物なのかも知れない。昔からそうなのだ。法に触れなければいい

と、法を作ってしまう。象も犀も、トラだって、別に来たくて日本に来たわけじゃないはず

だ。

  本当は自分の昔いた場所、いたい場所、落ち着く場所に帰りたいはずなんだ、きっと….。

          写真は、gigazine.netから






2023年3月4日土曜日

超一級の行政文書です

    これは、3月3日の参議院予算委員会において、立憲民主党の小西洋之議員が、高市大臣に対して発した言葉です。総務省所属の者から小西議員が付託を受けて(第三者が介在したかも知れない)提示した行政文書を「まともな」文書であると信じ込んで参議院において披瀝したもので、この件は国会中継もされて国民も知るところとなった。知るところとはなったが、この文書の信憑性については未だ解らない点が多い。彼が総務省の課長補佐時代には、この文書の登場人物である安倍内閣で首相補佐官をしていた礒崎陽輔氏も課長職にあった。礒崎氏が主導した民放(特に安倍首相が生出演したサンデーモーニングなど)のあり方を是正する必要に迫られて、放送法に基づき(或いは改編し)本来のあり方を追求しようとする安倍首相をはじめとする内閣主導でなされた当時の放送事業のあり方に関し、主管である総務省と内閣の対立を明らかにしようとするのが今回の行政文書に残されていると主張し、白実のものにしたのが小西議員である。

 しかし大見得を切り大舞台で演じていた小西議員に対し、文書は「捏造」と高市大臣が決めつけたのだから、議員(大臣)辞職に追い込もうとした小西議員もいささかトーンダウンした格好だった。私は、彼が在職していた総務省の職員から受け取ったとされる約80ページに上る公文書についてなぜもっと精査しなかったのだろうと思った。きっと一人で悦に入っていたのだろう。こういった類の文書は公にする前に複数で精査されるべきだろうし、矛盾点を追求しなければいけないはずなのだ。もし刑事事件であれば刑事が、或いは新聞記事なら記者が、ガセネタもあるだろうから裏を取ることが必ず必要になる。その上で白日の元に晒す、という手順を踏まないと同じ轍(過去にはメール問題)をまた踏むことになってしまう。

 この点について早速YouTubeで高橋洋一チャンネルで取り上げていた。いくつかの項目で少し行政文書らしくない箇所があると指摘していた。つまり「取扱厳重注意」を「厳重取扱注意」としていたところとか、配布先に参加者の名前がないとか、総理と電話をしたメモを秘書官でなく参事官がしたこと、電話した正確な時刻が記されていないことなど。また以下の放送では、飯田浩司アナが高橋洋一氏に聞き、旧郵政省と旧自治省の根深い争いが根底にはあるとの見方を紹介している。その争いが現下の統一地方選に影響を与えていると。

ラジオ「ニッポン放送飯田浩司のOK!Cozy up」(3月8日付をPodcastで配信中)

捏造というよりデタラメな行政文書だと高橋氏が指摘しているところと、上記根深い闘争が今回の統一選と無関係ではない点がこのチャンネルを視聴すれば分かりやすいので、リンクを貼っておきます。

長谷川幸洋&高橋洋一のNEWSチャンネル

 この膨大な文書がまともなところとそうでないところが混在していることがこれらの文書に関しての注意すべきところなんだろう。数ページが捏造されているのではないか。ひょっとしてこれを議員に渡した人物と公文書(の一部)を作成した人物は異なっている可能性もある。昨年だったかJAXAの中で発表した研究論文が捏造されたものがあったというニュースが報じられた。かつては理研の研究発表が捏造であると指摘され、担当の教授が自殺し、かの新進気鋭の研究家小保方さんが現場から去らざるを得なかった、とかも思い出される。今回の行政文書を流出させた職員が国家公務員法などの内部規定に反するのは別にして、仮に公文書を偽造していたなら、有印公文書偽造で1年以上10年以下の懲役と重い。総務省は刑事告訴をするのだろうか?(補追;偽造ではなく総務省が公文書であると改めて認めたことでその可能性は無くなった。)※ただ都合の悪いところは総務大臣や事務次官も見れないようにして作成していたということである。これが、総務省の行政文書であった。

  昨今太陽光パネル問題で言えば、夫が逮捕されるかも知れないとマスメディアに顔を出すことも無くなった三浦瑠麗氏とは違って、中国のスパイに金○○を握られてしまっているんじゃないかと噂されている橋下氏はフジや日テレに恥ずかしくもなく毎朝顔を出し、同じく外務大臣に至っては大事な国際会議に出席もせずのらりくらりしている様を見ていると、こんな問題なんかどうでもいいやんかと言いたくなる人もいるだろう。ただ外相のインド行きを阻んだのは世耕参議院幹事長とも言われており、既に外相も力を失っている証拠なのだろう。次期総裁には茂木幹事長が名乗りを挙げているとかいないとか。(補追;既に岸田下ろしがはじまっているという見方もある)

 その昔国会でメール問題で追求した民主党議員がいたが、ネタ元が虚偽だと判明して敢えなく去ってしまった前歴がある。要するに立民(当時の民進党)の山尾(現菅野)志桜里議員が「保育園落ちた日本死ね」という発言とか、前出したメール問題では民主党の永田寿康議員がホリエモンのメール内容を信じ込み国会で追求したものの、ガセネタであったことで執行部が退陣に追い込まれているが、民主党の系譜からなる立民の議員は昔からこの種のガセネタで与党を追及するということをやりたがる傾向がある。売れない記者が大スクープによりデビューするようなものだ。今回で言うなら、高市大臣が辞めるか、小西議員が辞めるかどちらかである。(結果的にはどちらも辞めないということで幕引きになりそうだ。)

補追;3月7日高市内閣府特命担当大臣が記者会見を開いた。各メディアが本当に「ネツゾウ」で良いかというダメ押しの質問を行ったが、「4ページの私が関連するところと、安倍首相との電話連絡に関するくだりについては有りもしないことを事実として記載したものでネツゾウです」と答えた。一方同日総務省も総務大臣が記者会見を開き、小西議員が公表した文書は総務省が(デジタル)保管している文書と同一であるとの認識を示しマスキングなしに公開した。ただその中で「記載内容の正確性が確認できないもの、作成の経緯が判明しないものがある点にはご留意いただければと思います」と慎重な姿勢を示している。


更に補追(2023.3.21)小西文書について「事務方が大臣に無断で首相官邸と取引して法解釈を決めるというのは、議院内閣制であってはならないことだ。」(池田信夫アゴラ研究所所長)アゴラの記事



 何故今回の写真がカメレオンなのか?この動物の販売価格は何と39800円もする。(画像「爬虫類カフェらぷとる」より)実は最近昔見れなかった「やまとなでしこ」というドラマをどうしても見たくなって探してたら、DVD6枚組(全11話)が売られていたから、それをamazonで手に入れた。字幕に簡体文字があったけど非表示に出来る。数日で一気に見てしまった。このドラマで出てくるアイテムがカメレオンである。毎日のように合コンを主導するスッチーの松嶋菜々子扮する桜子がラストシーンで、数学の研究のためニューヨークに行った堤真一扮する中原欧介を追いかけて気持ちを伝える場面で、カメレオンの人形を渡すシーンがあるが、そのカメレオンを逆に欧介は桜子に投げて返す。このアイテムは、欧介が桜子に買って上げたおもちゃだけど、桜子が期待していたロレックスの高級時計「カメレオン」を勘違いした物だった。それでもそのロレックスをプレゼントした金持ちの御曹司東十条司こと東幹久の好意を退いて魚屋の欧介に次第に惹かれていくのだった。主題歌はMISIAのEverything この曲は彼女がこのドラマのために書き下ろしたもので今でも色褪せていない。出演した俳優の中で押尾学がMDMA過剰摂取による女性の遺棄で逮捕されて実刑判決で収監された事件は、ネットでは森喜朗元総理の息子が絡んでいると言われているから、今流行りのドラマ「罠の戦争」を連想させる。押尾学と結婚した矢田亜希子はそのことで離婚することになってしまった。欧介に恋心を抱いて失恋する彼女が本当の愛を手に入れたはずだったのだけれど。

(補追3.9)そういえば不祥事と言えば、桜子を愛する東十条家の御曹司がスキャンダルに見舞われたことがあった。発端はタモリのテレフォンショッキングというコーナーを見た女性が、出演した俳優の東を見てピンと来たのだそうだ。あまりにショッキングなので載せれないので後はご自分でネット検索して下さいな。第3話で家に呼ばれた桜子が司の母親から「桜子さんは司のどこが気に入ったの?」と聞かれる場面があった。そしたら桜子は「ええ、嘘をつかないところです」と言った。この時点で既に欧介も桜子自身もアウトだったのだけれど…。

ドラマ「やまとなでしこ」主題歌 

追記;そういえば、まだ二十代の頃世の中に合コンという言葉はなく、バブルがまだ弾けてなくて、私は本部の可愛い受付嬢二人と共に行きつけのフランス料理のレストラン(もう存在しない)で4人で食事会を開いたことがあった。文殊(訂正→文珠)というその変わった名前の友人の女性はまだ二十歳を越えたばかりで、結局それ以上発展しなかった。最近彼女が現役で同じ姓を名乗っていていることを知った。ずっと将来現れる女性の守護霊が発展を阻んだのかも知れない、今思えば。その女性にはペアリングを贈ったことがあったけど、私のも含めてまだ現物を見ずにいる。






2023年2月14日火曜日

MRJ失墜(世界を駆け巡ることが出来なかったジェット)

    なぜいけないんだろう?どこが間違っていたんだろう?自分たちの過去において何かをしようとして、例えば事業を始めようとして失敗した人もいるだろうと思う。その時に自分自身に何かの言葉を投げかけていたとして、皆さんはどういう言葉を投げかけてみますか?(そんなことをある記者会見を見て思ってしまいました。)

     国産初のジェット旅客機のこと。実は私はニューヨークに行った時(2004年8月)滞在スケージュールが1日余ってしまっていて、それでワシントンに行けるかどうか思案したことがある。1日で行けるかどうか?取り敢えず直ぐに実行したがる性格から、ラガーディア空港に向かっていた。そして空港カウンターで質問した。今朝ここを出発して今日中に帰って来れる便はありますか、と。そしたら直ぐに返答が返ってきた、あります、と。一も二もなくその運行スケジュールで1日を組み立てて、ビジネスマンがよく利用する小型ジェットに乗りワシントンに飛び(約1時間)、有名なスミソニアン博物館とケネディ大統領が眠っているウェリントン墓地を訪ねることが出来て満足したのだった。ワシントンのその博物館は、ライト兄弟の初飛行機や、子供を身代金要求されて殺された悲惨な体験もした(それは「オリエント急行殺人事件」の元になった)リンドバーグの大西洋無着陸飛行を実現したスピリット・オブ・セントルイス号、日本に二発の原子爆弾を投下したエノラゲイ号、それに宇宙ロケットで月面に初めて着陸したアポロ13号の機体やスペースシャトルも展示できる日本と違うスケールの大きい博物館であり、それらを目の当たりにして興奮もした。中でもトム・ハンクスが監修したジェット機に関するものや宇宙もののIMAX映像は圧巻だった。

 本題は、「MRJ(三菱リージョナルジェット=現スペースジェット)が事業を正式に撤退」というニュースについて。1兆円もの開発費を投入した「日の丸ジェット」は大きな期待を背負い、JALなど国内の航空会社も含め400機の納入を見込んでいた。2月7日泉澤清次社長は会見で、あっさりと様々な事業計画を断念せざるを得ない理由を挙げて、開発中止を判断したと述べた。既に受注していた航空会社などは蚊帳の外であったし、名古屋空港近くに設けられた量産工場にしてもそうだが、部品メーカーでも旭精機工業といった会社は22億円をかけて神戸に主翼の部品を加工する工場を設けていたのだったが閉鎖せざるを得なかった。ちょうどパナソニックがTV製造のために尼崎の海沿いにどデカい工場を作っていたのを湾岸高速を通るたびに見ていたのを思い出した。シャープをはじめ次々に国内のTV産業は当時韓国や中国などの国際競争に負けて撤退することになった(その時にずっと後のことを考える余裕があったらソニーのように次の主力製品を生み出せたはずだった)。

 社長は失敗の要因として、型式証明のことでの経験不足や脱炭素化等で巨額の資金が必要になった、「開発を再開するに足る事業性を見出すことが出来なかった」等語っている。

 しかし、例えばTBS NEWS DIGというBS番組では ①自前主義に拘った②市場への向き合い不足③国際環境の認識の甘さ④協業体制の弱さ⑤技術偏重などがあったと指摘する。更に

 ・日本の製造業がビジネスが出来ないための問題点

 ・dicision making(意思決定)=決断能力の弱さ

 ・責任の明確化が出来ていない→誰も責任を取らなかった

などの指摘を行なっている。それとは別に当初から社員がこのMRJの失敗を見越して他社に転出した人が続出したらしい(ホンダへ?知らんけど)。「型式証明」とは、航空機が一定の安全基準を満たしていることの認証で米連邦航空局がチェックするもの(国内のボーイング787MAXという欠陥ジェット旅客機の製造には甘いのは合点が行かない)で、それについても国交省のバックアップが手薄であると言われている。ちょっと性質が違うが、東芝が、ウエスティングハウスという米原発を手に入れようとして失敗(購入後9.11後のテロ対策に莫大な費用がかかってしまったから)した事例があるが、その時対照的に三菱重工は早期に引き上げて救われていたのを思い出す。

 誰か識者も似たようなことを言っている人がいたけど、もしジェットがダメでも宇宙産業で繋げていけたんじゃないかと私も思う。さすがというか親方日の丸だからか、あまりに企業が大きすぎて失うものがないと思うのか知らないけれど、発想が貧弱なのはどうしてなのだろう?躓いた時の対処が出来ない人間はダメ人間になるが、会社も同じである。かつてカナダのロンバルディアから訴訟を提起され、その後和解して共同で製造することになったという経緯も思い出されるが、ホンダ・ジェットが輝かしく飛び出して行ったのとは好対照なのは何とも皮肉だと思う。各界のリーダーも今回の撤退を悔しがって見ていることだろうと個人的には思っている。


       上がホンダ・ジェットの最新モデルHonda Jet Elite II、下が改名したMRJ

 ホンダジェットのCM このCMの曲は、ワンオクのタカが作って歌っている。

 私が今いる食品会社ではコージェネco-generationという機械がある。ガス会社と協働で三菱のターボエンジンがエネルギー(熱)を生み出す仕組みである。(関連会社;三菱重工エンジンシステム(株)、三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株))、大阪ガス(現Daigas Group)

 それは、今後原発に変わる次世代の軽水炉として注目されているが、核融合発電も水素を燃料として安全性に優れたものとして注目され三菱重工が中心となっている感がある。だから余計に惜しいのは、企業が大きすぎていざという時に知恵を絞り出すことが出来ていない状態にあるから。国産の主力戦闘機についても日本は後手に回ったことがあったが、いつの世でも遊ぶことに熱心で金儲けに走ったりする社長(例えばゴーンのような男)しかいなかったり、一票のためにどっかの宗教団体に頼ることしか知らない政治家しかいないからなのかも知れない。

 私が特に言いたいのは、「一度乗りかけた船」なんだから、例え様々な困難を伴う諸問題があったとしても(Quoraではそのような指摘がされており無理もないと擁護されている)、途中で放棄しないで最後まで責任を持ってしなさいということです。「三菱」は、戦前からそのような重大な国を背負った責任を背負っているからに他ならない。

補追;初号機はアメリカにおいて本年3月8日に解体され、テストされた他の関連機も以後順次解体される。国内に残った関連機については、知見をいかし社長の判断で次期戦闘機の開発に活かすこととされている。




2023年2月2日木曜日

飾りじゃないのよ涙は、あっは〜ん!

    そんな曲が昔あったっけ..。数年前大阪市の図書館(こども本の森中之島)が子供たちのために作られて話題になり、同じ建築家が設計した図書館が神戸にも最近作られ話題になっていた。そして見学に来た子どもたちが何の躊躇(ためら)いもなく言ったそうだ。「何でこんなん作ったん?」と。それが子どもの素直な感想だった。高〜いところまで本棚を作り、空間を有効利用しようという建築家のアイデアであったが、子供には直ぐには受け入れられなかったようだ。飾りじゃないからね、本棚は。手に取れるところにあって、見たいものを直ぐに見つけられる、それが子どもの偽らざる感想だと思う。王国の民からチヤホヤされている裸の王様が子どもの呆気ないほど率直な指摘で我にかえることもあるだろう。

 つまり最近の大人は「忖度」が流行っているから、もしそれが間違っていたとしても、その人を立てて慮(おもんばか)る。それが大人の社会だから。だからと言って暗殺された訳でもなかろうけれど、そういうことがやがて当たり前になってしまい、何も感じなくなって「人間にとって真実は何か」という人が一生かけても追うべき大事なテーマを蔑(ないがし)ろになっていたとしたら….。子どもたちの指摘を待つまでもなく、いずれ人は気がつくだろう。

 今日はやはりあの大国のことを書かない訳にはいかないのかな。テーマは「三峡ダム」。誰か最近山に登った人が中国人ばっかやったわと呆れていたけど、へえと首を傾げて聞いた。大国への入国にやっとビザを許可したばかりだけど、まだ来日中国人の数は以前と比べ微々たるはずだから(多分雪を見るのも珍しい台湾の方と間違えたためと思われる)。

 YouTubeでは2月1日付【上流で異常な増水!】と題して三峡ダムの水位を測って現状を伝えている人がいることを知った。普通ならそんな暇なことって思われるかもしれないけど、実はそうでもないらしい。度重なる洪水の原因ともなっている(当局は隠すけど)から、ダムの放水は重要な問題だ。現にこの三峡ダムが決壊すれば、たちまち南京や上海、武漢、重慶など大都市が水没して大被害をもたらすともされてもいる。詳細は、下記のチャンネルです。

にしやんチャンネル防災部

 それに中国は他国にも技術者を派遣してダムを作っているが、そのダムが危ないとも指摘されている。インドネシアで新幹線を走らせるという大事業で当時日本は中国に負けたことがあったが、現在はインドネシアもさぞかし後悔していることだろう。似たような話で、それがエクアドルで建設されているダムで、いつ崩壊してもおかしくないところまで来ているという。詳細は下記のYouTubeチャンネルでの妙佛(ミャウホウ)氏の説明に任せたい。

妙佛 DEEP MAX

 そして前述した三峡ダムに関して政治的には、中国の台湾侵攻と重要な関連性がある。もし中国が台湾に対して武力行使を伴う侵攻を始めようものなら、台湾軍はまず「三峡ダム」に対してミサイル攻撃を仕掛けるだろうというもの。なぜそうするかといえば、そうすれば中国の大都市は一瞬のうちに壊滅的打撃を受けてしまうからに他ならない。よって台湾の同盟国は絶えず三峡ダムについて衛星で監視を続けているのである。

 こういった政治的に扱われた「三峡ダム」については次の記事が参考になります。

月刊Hanada Plus 

 2月3日の節分の日に台湾大学出身の若者が10ヶ月の企業研修を済ませ帰国するにつき、京都を案内しようと彼を誘った。京都は初めてで、帰れば大学院(奨学生で給与付らしい)生で、その後はドイツ留学(博士課程)と見定めている。彼は生まれた地のインドネシア語と中国語、日本語、英語を話す。今日はまず北野天満宮に行き、お守りを買って上げた(彼はドイツまで持って行ってくれるとのことだった)。次は八坂さん。ちょうど節分の豆まきをしている最中で、かなりの人だかりだった。後は先斗町で二軒食事して語らった。こんな優秀な25歳の若者にも人に言えない悩みを抱えていることを知った。国籍取得を日本と見定めていた時期があったようだけど、ある事で失望した気持ちもあり、今はドイツに変更している。彼にある言葉を伝えた。「何でも経験ですよ」「悪いことも、失敗したことも、身に被ったことも全てね」英語では Call it experience . この言葉は、アメリカの作家で「タバコロード」を描いたErskine Caldwellの言葉であり、彼の著作の題名でもある。

3月19日補追;彼からLINEが長文で入っていた。日本では最悪で1日一食を余儀なくされたり、そこまで落ち込んでいたのを知っているのは私だけだったし(日本の関係書類はみんな処分したらしい)なぜ台湾帰国を急いだかも食品会社の誰も知らないことだろう。今は天国と地獄の差があるとやっと自分を取り戻していると張り切って伝えていた。学費は要らず、逆に過分の給与をもらい、工学研究を続けられ、他国からのアプローチもあったという。2年後のドイツでの博士号を最大の目標としているので頼もしい人物だと思うし。最悪の日々だったのを、少しぐらいは日本の良い思い出を作るのに一役買ったのかも知れないと思う。



 お互いに有頂天になっていたり、またある時は失意に落ちたりしたかも知れないけど、それは運命という名の天の計らいなのかも知れないし、自分が選んだことが結局失敗だったと思っても、その先をちゃんと見通したら、きっと一筋の光明が見えているはずやから。だからいつまでもそんな顔しないで、お前は笑顔がいちばん似合うん人なんやから。希望を持って歩いていこうな….。




2023年1月23日月曜日

あらためて公文書について考える

  2039年と聞いてあなたは何を連想するでしょうか?これから16年後の2039年には、ケネディ大統領の暗殺に関しての公文書が公開されるのです。かつて落合信彦氏が著した「2039年の真実」は、彼のライフワークとも呼ばれるものであり、読み応えがあった。要一読の書であると思うから、現役時代に先輩から「お薦めの本」はあるかと聞かれた時、即その本がいいと答えたことがあったのを思い出す。

               Ameba〜Canaco Almendrosさんの画像より


    YouTubeをほぼ毎日見る習慣がついているけど、おかしなもので時々以前の動画が出てくることがある。きっと誰かがこれを見た方がいいよと囁いているのかも知れない。下にリンクを張りました。確かに長い動画で、見ていると自分の母校のことを優良大学(加計学園問題)と言っておられたから好きになったのではないけれど、当時森友問題やサクラの会でこの公文書のあり方が問題になっていたから、古い動画でもきちんと最後まで見てしまった。 

 2018年に自殺した近畿財務局に当時在職していた赤木俊夫さんが財務省理財局長だった佐川宣寿氏に文書の改竄を命じられたかどうかが裁判の焦点になっていた。赤木さんの奥さんが訴えた裁判は、国が約1億円の賠償請求をあっさり認めたことで終結した。しかしいわゆる「赤木ファイル」は、黒塗りにされたまま真相は闇に葬られたのだった。

  磯田道史教授が会見したYouTube動画(2018年)

 磯田教授は会見の中で公文書の歴史的扱いについて説いていく。その中で大久保利通を現代の歴史家が信用しているが、彼は自分をよく描き、西郷隆盛のことをよく描くはずがないとか、独特の見解を述べておられるが、特に大事なことは、彼が指摘する「空気の支配の恐ろしさ」である。つまり社会が「誰も反論できない空気」になっているというのである。当時連日のように報じられていた安倍内閣の諸々の問題や日大アメフト問題とか個人が組織に潰されるという構図のことを言っているのである。

 公文書問題については、当時色々騒がしく言われており、以下のネットの質問コーナーでも取り上げられ、私も答えたことがあった。 

Quoraというwebsiteの質問コーナーで以前質問者から出された公文書に関する質問

Q「公文書を改竄したら、その文書も公文書だから問題がないと安倍内閣が見解を出しましたが、これについてどう思いますか?

 A「公用文書は改ざんした段階で公用文書ではなくなるという性質のものでしょう。つまり、公務員が文書を作成し、決済を受けて公文書となる。(或いは、少し違いますが捜査機関に従事する公務員が、被疑者の面前で調書を作成し、被疑者が署名押(指)印した文書など。)つまり、保管方法が紙であれ、デジタル化した文書であれ、仮に公文書だとして認定されたものは、手を加えることは意味がないことですし、決してやってはいけないことです。」

 公用文書と言ったのは、公務員だけでなく私人が作成し公務所に保管した文書も公用文書に含まれるので、それらを毀棄すれば公用文書等毀棄罪が成立します。設問の件ですが、公文書を改ざんした後に、それを「それでも同じ価値がある文書です」と言って問題ないという政治家ないし官僚がいたというなら教えて下さい。私は聞いたことがありません。(実際は北村議員が言ったのだそうな)

 予算委員会を含めて国会に提出された公文書が白塗りしたり、或いはコピーを改ざんした場合は、以前財務省が認めたように、間違いなく犯罪でしょうね。罪については、以下の記事が詳しく記載されており参考になります。

 公文書の改ざんについて問題となる罪は?(園田寿) - Yahoo!ニュース

あと、廃棄された公文書についての質問の回答は、こちらです。参考まで破棄された名簿を復元しろと言う主張と、正式に破棄されたはずの公文書がどこかに復元できる状態で残っているのは保安上マズイと言う主張。どちらが正しいと思いますか?に対するNozaki Kenさんの回答

補追;(2023年2月15日付産経digital)神戸連続児童殺傷事件で殺された土師淳君の父親が当時の事件記録の閲覧を強く求めてきたが、裁判所で保管されていた記録自体が既に廃棄されていた問題で最高裁判所が「適切ではなかった。反省し、申し訳なく思っている」と謝罪した。だがこのような裁判記録の廃棄は全国で立て続けに起きていて、そのこと自体が問題とされることはなかった。

新中東戦争のゆくえ