今年のワールドシリーズに初めから関心を持って見続けてきた。一つ一つの試合は録画もしていた。それなのに何故書かないのって思う人も一人や二人いるかも知れないと思って今頃になって書いてます。
既に投稿しているけど、延長18回の狂気的なくらいのお互いの鍔迫り合いは確かに見応えがあった。キャッチャーのウィル・スミスはもう13回で足が痙攣を起こしていた。それだけに試合をモノにしたチームが優勝するかも知れないとの前評判もあった。後半はフリーマンのサヨナラHRは誰しも狂喜したことだろうけど、午前0時近くまでの延長戦に山本を連続で登板させると聞いてフリーマンも意気に感じたのだと後で述べていた。決勝戦では大谷やムーキー・ベッツは敵投手陣に抑えられていたし、11回表でずっと出場して疲労していたはずのウィル・スミスが会心のHRを叩き出した時には山本も内心安心したんじゃないかな?スミスは、どの回でもここぞと思える時にはHRを打ってきたチームにとって一番頼れる男だったんだから。でもそれだけに1番指名打者から4番バッターまで、どうしても大きな一発を狙うきらいがあったことは事実だったし、それが少しせこいと思わせた敵のトロント・ブルージェイズには有利に働いた。嫌いだったけど敵のシュナイダー監督が最後の会見で、ドジャースのロバーツ監督が山本を送り込んだ時には、流れを掴み切れなかったことを吐露していた。彼の投げる球は、かつてのヤンキースの指名打者Aロッドでさえも困難だと評したくらい、速球のフォーシームと遅い球のスプリットにブルージェイズの選手達は翻弄された。だから優勝戦ではMVPを手中に収めることが出来たんだろうけど、ただ二刀流の大谷翔平と比べると、大谷は50本のHRバッターそれに盗塁もやってしまうときているから、比べることは出来ない。今シーズンのMVPは野球界唯一(若手が一人登場しているが)二刀流の大谷にほぼ決定だと言われている。
写真は、産経ニュースより転載
彼らは土壇場でなぜ勝てたんだと誰しも思うが、それはやっぱりチームワークの良さではないかと思う。もちろんブルージェイズも結束力は強いが、ドジャースは日頃のそれが浸透しているように思える。例えば、フリーマン選手の息子は難病を抱えており、大谷選手が手を差し伸べてフリーマンも奥さんも本当に喜んだし、大谷がHRを高々打った時には必ずTヘルナンデスがひまわりの種を思いっきり浴びせる。これは大谷だけだし、彼も日頃家族やチームメートに感謝していることを吐露している。そういう日頃の行いが、例えば優勝戦の3回までで大谷が3Rホームランを浴びて項垂れて降板した際には選手達は思ったことだろう。誰かが、いやおれが打たなくては、そして敵の打った球は必ず捕球しなくちゃと。日頃見られないような野手の動きとなってそれは表れていたし、挽回していたと思う。6回までに2点差になった時に、日本のファンが映像を見ながらサッカーと同じで2点差ならひっくり返せると言っていた。それが実際にジリジリと追い上げていくことになった。(マンシーとロハス二人は守備で起用された)8回でマックス・マンシーの普段見られないようなHR。そして後で話す「偶然」がジリジリと忍び寄る。9回ではこれまたスタメンがほとんどなかったただロハスが登場する。まずノーアウトでKヘルナンデスがホフマンの投げた外角低めに誘われ空振りした後に、ロハスがファールフライに倒れてもおかしくはなかった。ただファールフライでストライクを数えるとその後のミゲル・ロハスは粘りを示す。ネクストに大谷が控えていたが、彼は一つボールを見送りし待った。彼には良く球が見えていたんだろう。3−2フルカウントに持ち込むとブルージェイズの観客席からもため息混じりの声が漏れた。土壇場でロハスの打った球はレフトスタンドにライナー性のフライとなり吸い込まれていった。「no way(有り得ない)!」とアナウンサーは声を出す。誰もが信じられなかった。ロバーツ監督もこれは何だと頭を抱えていた。ただこの回では続く大谷もスミスも振るわなかった。ボールの見極めが鋭いスミスが、もしも外角ストレートを見逃さずにミートしていたら9回で終わったかも知れない。球審は打者と時々違った審判を下すことがある。そして延長戦になり、遂には11回には上に書いた我らのウイル・スミスの一発の決定打となったのである。勝負はわからない。何が功を奏して優勝に結びつくのか、或いは勝負は決まったと思っていたはずが土壇場で一点で泣く事になるのか…。
この秋「偶然はどのようにあなたを作るのか」という本を見つけた。たった一つの偶然が、歴史を変えていくというもの。この本の冒頭では、日本に原爆が投下される経緯が描かれていて、それは偶然にもアメリカ人の若い夫婦が京都を訪れたからだとされる。それは一体どういうことなのか?読まずにいられなくなる。そして爆弾投下が決まっていた京都に投下されず、小倉が投下先と決定されていたのに気象条件により回避され長崎になってしまったのだという。われわれの日常でもそのようなことは起こり得ることをこの本は教えてくれる。
話をドジャースに戻せば、優勝後ドジャース談義がいくつか耳に入ってきている。祝勝パーティーに大谷は二時間で、酒を嗜まない山本は四時間で消えたとか日本人的な話だとか。しかし山本由伸はマイペースでいるだけだ。ノートに投げた場面を振り返り記す。データ野球ではない彼自身のやり方。そんなことが敵のHRバッターにも怖気付かないピッチングフォームの切り替えになり、リーグ戦でブリュワーズ監督でさえ唸らせたのだった。
最終戦で敵のブルージェイズのゲレイロJr(26歳)は戦いが終わって、かなり落ち込んでいた。父親に30年ぶりかの優勝トロフィーを見せたかったのが叶わなかったからだった。チームの皆も優勝できると思い込んでいたが、人の世には期待と結果が違うことが時々ある。そうなって欲しいと思っていたら、全く違った現実が待っているんだから涙したのは彼だけではない。そんな彼の元に31歳の大谷翔平がチームから抜け出して球場内にいた彼の元にに行く。そして静かにハグをして「君達の活躍は素晴らしかった」と称えたのだ。大谷は彼にグラブを、そしてゲレーロは大谷にバットを送った。トロフィーよりも貴重で、決勝のマウンドに立った大谷の汗で重たくなったそのグラブを、ゲレーロは父親に渡したことだろう。
他にも第二戦で山本がダグアウトで一人グローブやバット等の片付けを行なった後に敵選手にデッドボールを与えたことに心を痛めていた。それで彼はスプリンガー選手に日本の鎮痛薬を添えて謝罪したようだ。また山本は、日本人トレーナーによりこれまでの筋力重視のトレーニングではないやり方を行なっている事も注目されている。筋トレよりも柔軟さが大事ということ。昔20代の頃には私もそう心がけて柔道をしていた。そういった逸話は語り継がれることだろうが、抑えのべシア選手がワールドシリーズにおいて活躍の場が与えられなかったことはチームメイトなら誰しも心に思っていたことだろう。彼が抱えていた悲劇的な家庭内の出来事で、彼らは逆に彼の存在感を感じたことだろう。試合そのものよりも、そういった数々の逸話が今回の優勝戦に隠されていたことを改めて知った。
シュナイダー監督が山本に感服した件