今度はドルの基軸通貨についてYoutuberのモハPワールドがアップしている。
よって今回は別の観点から取り上げてみたい。教材としては、長沼伸一郎氏の本を活用して。現役の数学者や物理学で何らかの仕事に携わっている方なら知らない人がないんじゃないかなぁ、この人は。東大大学院教授でも一目置く人と紹介しておきます。
通貨が現在のように国の代表である地位を与えられたのは、諸説あるとしても、かつてモンゴル帝国が13世紀初頭に初代皇帝についたチンギス=ハンから数えて五代目に皇帝に就いたフビライ=ハンが、その勢力を大ききく伸ばしてペルシャ(今のイラン)まで統一した際に自国通貨というものの有用性を既に認めていて、大英帝国より先に国として通貨を発行していた。バックにはフビライ軍が存在するということが、より流通経済の地盤を強固にしたようだ。
変な話、私が中国の北京北駅から初めて電車に乗り「頂上駅」に着いて、あの無用の長物と謳われた「万里の長城」を見学しての帰り、今度はタクシーでホテルまで帰ろうと運ちゃんと交渉していた。彼は100ドルを要求した。50ドルという人もいたと交渉し、75ドルに値切った。ところが高速のパーキングで両替した後に彼は車内で女性と繋がったケータイを渡しやっぱり100ドルに吊り上げてきた。結局渋々了承していたが、もう私には彼がチャイナマフィアと見当が付いていた。北京の市街地に入ってから交代したタクシーの別の運ちゃんに分け前を手渡していた。余程「100ドル紙幣」が満足で嬉しかったのだろう、本当に得意げだった。単純に言えば、メーターのない車の運転手に日本で言えば1万円札を払ったのだから。
長沼氏は本の中で「現代のドルは、『核兵器という電磁石によって磁化された特権的な世界通貨』なのであり、第二次世界大戦後の国際経済の中で、最初はイングランド型の国際通貨として出発したドルは、いつの間にやらこの種のモンゴル型の国際通貨に変貌を遂げてしまっていたのである」と説明する。元々自国通貨であるはずのドルを国際通貨としてしまったところに無理が生じていると言うのである。お前が生まれた頃に「ソビエト」が崩壊の兆しを迎え、1980年代はこの核兵器という力のバランスを背景にアメリカは一人勝ちをすることになる。つまり単一のドルという基軸通貨が資本主義の経済体制の中で生き残っていくことに繋がったのだ。一中国人がドル紙幣を得てほくそ笑んだように、双子の赤字を抱えたレーガン政権のアメリカは、尚もドル高というそれだけで生き残っていく。そして2000年代に入り、かつての「核の時代」はコンピューター・ネットワークの時代に様変わりし、ドルが売られてしばしば「円高」の時代へと向かっていくことになっても、もちろん核兵器を持たない日本の円は基軸通貨としての raison detre (存在理由)は持たないということになる。
誰しも「マネー」には興味が尽きない。先に取り上げた暗号通貨(仮想通貨)であるビットコインも、様々な人間の発明した貨幣の「成れの果て」である。そして騙されるものと騙すものという構図も、現代の貨幣を介した流通と言えなくもない。今日仕事中に母親から電話があった。女性の声で「通帳が使われています」というもので、確認して下さいとも言うから電話を切って連絡をしてきたのだ。特殊詐欺とピンときたので、最寄りの生活安全課の当直の方に自宅を訪ねてもらった。得をする人もいれば、損を被る人もいる。長沼氏は本の最後で現代の暗号通貨の特徴についても記述している。数学的知識はなくても資本主義の本質を理解することは私たちにも出来る。後編は、また別の経済学者に登場してもらい、少しまた別の角度でこの問題について話していきたい。
出典;長沼伸一郎「現代経済学の直観的方法」講談社刊
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