ヘーゲルいわく「経験と歴史が教えてくれるのは、民衆や政府が歴史からなにかを学ぶといったことは一度たりともなく、また歴史からひきだされた教訓にしたがって行動したことなどまったくない、ということだ」(板谷敏彦「金融の世界史」より)
米大統領が広島サミットに直接は参加しないと表明した(5月13日時点では参加するに変わった→いつの時代でもそうだが、為政者の一言が大きく経済動向を変えるということは肝に銘じていなければいけないと思う)。5月1日にはFRBイエレン財務長官が「議会が債務上限の31.4兆ドルの引き上げ乃至停止を決めなければ、米政府は債務不履行(デフォルト)に陥るリスクがある」と議会に異例の勧告を行なったことに関係する。同日、米地銀のファースト・リパブリック・バンクが経営破綻(JPモルガン・チェースが買収して決着)した。今アメリカは失業率3.4%、マネーストック(M2=預金を含めたマネー残高)が前年比−4.05%で世界恐慌以来90年ぶりに悪化している。2008年のリーマン・ショックでは25行の破綻で債務合計は3736億ドルであったが、今回の4行の破綻(シリコンバレー・バンクとシルバーゲート・バンク、シグネチャー・バンクを入れた)の債務の合計は、既に5485億ドルに達している。
歴史は繰り返す。今回は、まず世界大恐慌について取り上げたいと思います。
1929年 世界大恐慌
ウォール街の大暴落(10月24日の木曜日)Black Thursday から世界に広がったのであったが、時代はアメリカではベーブ・ルースとルー・ゲリックがNYヤンキースの黄金時代を作り、リンドバーグが無着陸大西洋横断を成し遂げた一方で、アル・カポネをはじめギャングがアメリカの夜を支配していた。FBIが活躍し出したのもこの頃で、世界に先駆けて、スーパー・マーケットに人々が殺到し、電化製品や自動車が売れ、そのための割賦販売と株式の信用取引がバブルを押し上げ、繁栄と狂乱の時代が始まったばかりだった。映画もサイレントからトーキーに移ってはいたが、その陰で失業者が既に1400万人もいたのである。株価はピークを迎えようとしていた。バブルが始まった1924年から5年が経っていた。お金を借りてまでして元本以上の投資をすることをレバレッジと呼ぶが、さらに投資家は証拠金取引を使って借金してまで株を購入していたのである。誰も歯止めがかからない状態に陥っていた。
GDPは1929年9月の大暴落により、1933年までに4分の1に大きく落ち込んでいる。
次に世界恐慌時に「現役」だったケインズについて触れたい。いつの時代でも、どの国にでも(中国でも)そうだけれど、経済が収縮均衡の状態である時には、人件費削減のために「大量解雇」という切り札を使うことがある。経済学でいう古典派は失業問題においては「神の手」が「需要と供給の関係」に従い、賃金を一人当たりカットすれば上手く作用すると考えた。しかしケインズは、そもそも緊縮均衡が問題なのであり、経済を拡大することでなければ解決されないと考えていた。このことに関しては日本でも国鉄が大量解雇して解決を図ろうとした時代があった。あの松本清張が描いだ戦後間もない混乱期に発生した殺人事件「下山事件」で迷宮入りを目論んだ警察と、不審点を洗い出そうとした検察の攻防を思い描くのもいいかも知れない。
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