2025年3月28日金曜日

文学はほんとうにAIに凌駕されたと言えるのか?

  第170回芥川賞は、昨年の文藝春秋3月号で発表されている。九段理恵氏の「東京都同情塔」に決まったが、執筆者は、「生成AIが作品中に登場するところで、AIの言葉を使う必然性があった」としている。当代人気の平野啓一郎氏や吉田修一氏はじめ著名な選者が8名もいる中の一人島田雅彦氏は、次のように語っている。「作者は実際に生成AIを創作に活用したそうだが、AIにコマンドを出しさえすれば生成されたテキストは人並みになる。ただ、私が思うに、このディストピア(※この言語は、否定的に描かれたユートピア=理想郷を指すと、グーグルAIは説明する)に生きる当事者たちの狂気や抵抗をもっとアクションとして作品に盛り込んでいたら、より多くの読者のシンパシーを獲得できたはず」と評した。問題は、文学作品にAIを活用した事そのことではないのか。

 折しも昨日GoogleのGemini2.5proが発売された。他の生成AIを比べても半端ない結果を叩き出す注目の生成AIと言えるだろう。つまりchatGPTを抑えて登場したdeepseekでさえも飛び越えるシロモノだから。ただ有料版であるから個人ユーザーは少しだけハードルは高いと言えるかも知れないが。そして昨日のニュース(以下のリンクは産経新聞のニュース記事)では、くだんの九段理恵氏が95%生成AIで作った短編小説を博報堂から出したと発表した。芥川賞作品はほんの5%だから、次は逆に作家が5%という皮肉だろうか。既に文学界もAIに凌駕されたと解してよろしいのだろうか?次には直木賞が同じような事になりかねない。最近TBSがシナリオを募集していたが、流石にAIはダメと謳っていた。でも内容を評する選者が果たしてどういう風にAIと人間の創作を見分けるのだろうか?前に既にAIについてはここで扱っている。東京オリンピックでデザインが盗用された事から新たに差し替えられたことはまだ人々の記憶にあるはずだ。AIを活用した時点で既に著作権フリーと判断して良いと思うが、いかがだろうか?(注釈;4月5日著作権フリーと書いたが、実際には他の著作権を大きく侵害する危険性を孕んでいることを付け加えておきたい)

 よってデザインや小説、シナリオなどの文学作品をはじめコミックや挙げたらきりがないが、それぞれ著作物は著作権法により適正に守られているものなのだ。AIは人間の創出した領域を踏み越えていくと言っても言い過ぎではない。今後AIを活用した直木賞が現れるのを心待ちにしているものである。

昨日3月25日産経新聞記事

  画像は、DOORS DX Media より

出典;文藝春秋2024年3月号


2025年3月22日土曜日

悪貨は良貨を駆逐する

  タイトルの言葉は、16世紀の英国の財政家トーマス・グレシャムの言葉

   Bad  money  drives  out  good

であるが、googleによるAI検索の結果によれば、当時ヨーロッパでは貨幣として銀貨が流通していた(日本でも最初銀貨が使われていたが、次第に財政を圧迫するようになり銅貨が用いられるようになる)が、財政が悪化すると銀の含有量の少ない粗悪な貨幣が発行されるようになることを言うが、人々は銀の含有量の多い良質の銀を手元に置き、粗悪な貨幣の方で支払うようになることで、転じて悪人や物が世に溢れると、良い人や物が追い出される(=駆逐される)ことを意味する。


 トランプ政権が始まると、予想通りというか、ある人々にとっては予想に反してというか困った現象が起きている。トルドー首相に変わったカナダの現首相マーク・カーニーもトランプ関税に対する措置を講じはじめたし、早速欧州に飛びフランスやイギリスのトップと会談を設けて対米姿勢に対する理解を求めている。

          画像は、coincheck.com より

 トランプはジェレンスキーとの会談が物別れに終わると、すぐにプーチンとホットラインを通じてウクライナとの30日間の停戦合意に漕ぎつけた。漕ぎつけた、と思わせたはずが、エネルギー施設の攻撃はしないように合意したが、直ぐにロシアが攻撃に出て(当然エネルギー施設の攻撃も含めて)、またウクライナも相当規模の攻撃を行い、双方和平どころか蓋を開ければ戦闘は続行されているのだった。加えて、ウクライナは自国で戦闘ドローンの量産に成功しているし、これまでにない爆弾250キロを積み2000キロに及ぶ航続距離を成し得るドローンも産み出すに至った。そしてロシア国内の空港や軍事施設へのピンポイント攻撃を可能にして、当初ロシアのウクライナに対する一方的な侵略だった戦争は、今は自国内に留まらない様相を帯びてきている。サイコパスな大統領と揶揄されているトランプのメンツ丸潰れだが、平和を希求するのじゃなく、資源が欲しいだけなのだということがEU諸国も勘付いている。ウクライナの原発を管理下におくとか、グリーンランドを自国のものにするとか、カナダを51番目の州にするとか言いたい放題だが、プーチンと同じくどれだけ身体が保つかではないか?バイデンも日本の菅元総理も公の場に出るにはおぼつかない。ただ一つだけトランプの良い点を挙げるとすれば、何でもかんでも実行力と、ケネディ大統領暗殺に関する文書を公開した点だと思う。後者については、あまりに膨大なファイルだから google notebook LM  の AI 機能で押し問答しているところだから、少しでも真相に近づけばここで紹介したいと思う。

   AIといえば、今朝YouTubeチャンネルの妙法さんの動画で、deepseek に関わった技術者の国外への渡航を制限(パスポートの取り押さえ措置)している、というのがあった。

 DEEP MAX 妙佛さんのチャンネル

 一方で、X で、毎日のように漫画家の東雲くによし氏がAIの研究を行っている東大松尾研究室の中国人の女子留学生が医療費を只遣いしていると盛んに掻き立てているが、今後ひょっとしてそうした留学生も身の置き所に気づいて自国に帰らないようになるかも知れない。日本の政治家は、どういう訳か中国人や韓国人など外人を優遇して仕舞いには選挙権まで上げようかなどと言っているし(かのヘイトスピーチの代表者の桜井誠の方がまともかと思える時があるのは私だけだろうか?)外国人にとって医療費ただで生活費保護の日本ならそりゃ住みやすいでしょ。

 話はそれたけど、先に取り上げた google notebook LM  の凄さはやった人ならその凄さは分かるでしょうが(自ら考えるというところで、幾らかの問題は孕んでいるが)、本来ならdeepseekの技術者たちは、非常に高価な給与をもらうか、自ら起業してサム・アルトマンのように億万長者になっていてもおかしくはないのだから。

 結局この問題も、悪貨が良貨を駆逐する、と言えようか。

2025年3月12日水曜日

「マルコポーロ」1995年2月号

    本日はタイトルに挙げた件を取り上げたいと思います。雑誌「マルコポーロ」は、文藝春秋社が1991年から4年間ほど発行した雑誌である。写真の2月号は、1995年のちょうど阪神淡路大震災の発生した1月頃に発行されたもので、ナチスのホロコーストは存在しなかったかのような記事を特集している。そのことによりシオニストやユダヤ人の団体から強い抗議を受けて廃刊に追い込まれてしまった。

 しかし私がここに取り上げたのは、そのことではない。そのことも世界的にも大きな問題を孕んでいるのだけど、もっと重大な記事が他にあったことを忘れてはならない。それは、これも特集として記事を組んだもので、右下の写真のごとく前年6月に発生し、6人が死亡、約600人が負傷した「松本サリン事件」のことを取り上げていているからだ。この事件は、長野地方裁判所松本支部田町宿舎などをターゲットにしているが、翌年東京の地下鉄サリン事件、さらに国松警察庁長官殺人未遂事件へと続く物々しい時代を予兆していたのだった。米化学兵器研究所副所長オルソン氏が来日して雑誌ではインタビューを試みている。その中で氏は、松本サリン事件では妻共々被害者である河野義行氏が真っ先に警察に疑われて2年に亘り取り調べを受けているが、その割にこれはあくまで予兆であってこの地域が実験として使われていたのであり、何故警察はこれに続き今後都市部で発生した場合などの対応を怠っているのだろうかと疑問を呈している。警察とすれば、この雑誌が廃刊に追い込まれて、飛んでもないことを掲載したからだと言いたいのかも知れない。だが、周知のように後に東京都心を未曾有の大混乱におとしめた事件を考えるとき、この記事の持つ意味を絶対忘れてはならないように思うのだ。



写真は、雑誌マルコポーロ2月号の一部内容である。
 東京で発生したオウム真理教による地下鉄サリン事件は、1995年3月20日の地下鉄が通勤客で混雑する早朝で起きた。丸の内線で2組、日比谷線で2組、そして千代田線で1組の計5グループがそれぞれサリンを袋に入れて新聞紙に包み持ち、霞ヶ関に向かう人をターゲットにして事件を敢行(サリンの入った包みをこうもり傘の先で突き刺す等して)した。霞ヶ関は、警視庁や国の行政機関が集まる場所であり、官公庁が多いところであるので狙ったのだ。死者は14名、負傷者は6300名となった。
 同時多発テロの状況は、それぞれ
⚪︎丸の内線(荻窪行き)では、池袋駅で乗車した広瀬健一が御茶ノ水駅で実行。
⚪︎丸の内線(池袋行き)では、新宿駅で乗車した横山真人が四ツ谷駅で実行。
⚪︎千代田線(代々木上原行き)では、千駄木駅で乗車した林郁夫が新御茶ノ水駅で実行。
⚪︎日比谷線(東武動物園前行き)では、中目黒駅から乗車した豊田亨が恵比寿駅で実行。
⚪︎日比谷線(中目黒行き)では、上野駅で乗車した林泰男が秋葉原駅で実行したことになっている。よって発生当初から110番が相次ぎ、対応する警視庁や消防庁も最初それが化学防護服を着用すべき事案であることを知らないで警察官等を突入させることになってしまった。そのような緊迫した模様は、下記のYouTubeサイトで伝わってくる。


地下鉄サリン事件当日無銭記録 ※いくつかの警視庁通信指令室の無線記録があるが、元々YouTubeチャンネル「日曜アカデミー」が最初に出していたように思うが、解りやすく図示できているこのチャンネルのリンクを貼っておきます。

 この日我が家の母をはじめ親類縁者が東京都で結婚・披露宴があり詰めかけていたが、地上でタクシーに乗車したため事無きを得ている。当然地上でもパトカーや消防車、救急車が現場急行しており、地下鉄出入口でも規制線が張られていたはずで、パニックに陥っていた状況であると推察する。

 また救急車の数も足りないくらい次々に運ばれる救急患者については、日比谷線築地駅付近の中央区明石町に所在する「聖路加国際病院」(当時日野原院長)が当初から患者受け入れを表明しており、多数の患者が運び込まれることになった。

 「当時の日本の警察の関心は、誰がサリンをつくって松本で散布したかであった。」(杜 祖健著「サリン事件」)警察は第一通報者である河野氏をまず疑った。警察が彼の自宅から化学薬品No IIを押収した際に「ナンバー2」と記載して驚いたという。「それは二酸化窒素ですよ」と河野氏が指摘したエピソードが残されている。松本サリン事件では河野氏を犯人と誤認し後に損害賠償することになったのだが、被害を受けた薬剤の成分をサリンと警察が断定したのは、「ガスクロマトグラフィ成分検査」だった。今でもこの機械は覚醒剤の成分分析に利用されている。警察庁長官に対する殺人未遂事件もご承知のように警視庁(公安部)はオウムの仕業と最初から思い込み信じて疑わなかった。そういう先入観が、誤認が誤認を呼び二進も三進も行かない状態になっていくのだった。ただ地下鉄サリン事件だけは警視庁刑事部が総力を上げて捜査した結果、上九一色村(長野でキャンプした時に村を通過したことがあった)の第七サティアンで製造されていることを突き止めていく。そして製造したのは、まず土谷正実で村井秀夫からの指示であった。松本で成功した彼らは製造工程を簡略化して製造するようになっていた。地下鉄を攻撃現場として決まったことにより村井は次に遠藤誠一に命じて第4過程から製造を行った。これについては、既に大量に「メチルホスホン酸ジフルオリド」という化合物が保存出来ていたからだった。そこに中川智正が加わる。

 一連のオウムによる日々積み重なった重大性が世間や警察に認知されるまでには、長野県をはじめ各地で地元住民の絶え間ざる苦労と活動があったことは付け加えなくてはいけないだろう。3月16日の「サンデー」でも地元住民の苦労が紹介されていた。家族からも「止めなさい」と言われても徹底してオウムの悪事をしつこく追及している人がいた。そういった涙ぐましい努力があってこそ重い腰の警察や及び腰の自治体が動いたのだった。全国からオウム信者に子供を誘拐同然で連れて行かれた家族でもどうすることも出来なかった時代だった。



参考文献、出典等;ユキペディアの関連記事

         杜 祖健著「サリン事件」(東京化学同人 社発行)

2025年3月7日金曜日

地球は緑を保つことが出来るだろうか?

 写真の本は、経済の分野にはなく、環境のコーナーの棚に置いてある。それで少し前にあの本どこだっけ?と気になって探したが中々見当たらなかったのだ。地球に住む人々は、今後地球環境を最適に整えることが出来るだろうか?既にトランプ大統領は、パリ会議で採択した決議書からの離脱を表明している。表題で「資本主義」と名打っているのが肝だ。この本の冒頭で早速取り上げられているのも、トランプ大統領の言葉である。資本主義でもCO2規制は到底達成できない項目であるし、共産主義なら尚更発展途上であることを良いことに地球規模の環境問題に対応する動きはない。トランプ自身レアメタルはどこだ、原油が見つかれば掘って掘って掘りまくれとGoサインを出す人である。

                         

 いま世界は、アメリカのトランプ大統領の一挙手一頭足に影響され、動かされている。株価ひとつとってもそう。好むと好まざるとに関わらず世界の趨勢はそのように動いている。トランプ大統領の新政権が発足してアメリカのGAFAのトップや日本からはSBの孫正義氏が大統領の周りに集まった。既にイーロンマスクは閣僚の中にいる。ひとりキャップ帽を被って言いたい放題言い、大統領が「今の彼の言葉に異論はないよな、あるならこの場から出て行ってくれ」と牽制する始末。もう両議員での大統領の演説でもそうなっている。文句があれば退場させられるし、「忖度ロース」でなければ、立身出世は望めない。ひと頃日本もそんな雰囲気があった。ゼレンスキーでさえ、歓迎を受けるどころか罵倒される。ウクライナは英仏をはじめヨーロッパの主要国が支援しているが、微妙な綱渡りを今後は強いられるはずだ。アメリカをはじめ日本でも株価が急激に下がった。それは中国が仕掛けたdeep seekにある。いくら孫正義氏がサム・アルトマンと組んで新しいAIの分野を開拓しようが市場は冷ややかだ。
 そしてトランプ発言がそこに輪をかける。カナダやメキシコ、中国に対して関税を強化する保護主義を鮮明にしたからだ。よく唾を天に向かって吐けば自らにかかると昔から言われてきた。それはアメリカも同じだろう。自由貿易を蔑ろにした政策がどのような結果をもたらすかそんなに時間がかからないと思う。

 冒頭で紹介した今書店で並んでいるこの本の冒頭で、作者であるアクシャット・ラティ Akshat  Rathi  は、10年ほど前にドナルド・トランプが「クリーンコール・テクノロジー」の有用性を説いたのだと言う。しかしそれは誤解が生んだものだった。二酸化炭素を回収し、地中に貯留するのがクリーンコールだが、その意味を間違えて、クリーンな石炭が開発されたと思い込んだ(あるいは側近の出鱈目を信じ込んだ)のだった。日本の大阪府の知事が新型コロナにヨードチンキが効くと本気で思って記者会見まで開いたのとよく似ている。徒然草の第五十二段に「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」とあるが、そのような事なのか。
 この本の中では、「世界の平均気温が産業革命前と比べて1.5°Cではなく2℃上昇すると、世界規模で100兆ドルの経済損失が生じる。2050年に二酸化炭素排出量ゼロどころか、さらに意欲的な目標の達成が求められる。現代文明を支えるエネルギーシステムを再構築し、地球上の80億人を養う農業システムを再考し、人類とこの惑星の関係を作り変えるのに、残された時間は30年足らずだ。」と述べている。
 しかしトランプ大統領は、パリ協定に離脱する大統領令に署名している。

トランプ大統領のパリ協定離脱の影響を伝えるニュース(NHK)

 トランプ大統領の側近がこのような、まるで裸の王様が裸でうろうろして外出するような時に気分を害するような指摘をするのは期待できないし、そのような人が共和党から現れるとは到底思えない。そこは、「そのようなことを続ければ、ものすごく株価が下がり、トランプ関連株ももちろん甚大な損失を被ることになりますよ」と娘のイバンカ氏あたりからやんわりと御指導して頂かなくてはいけないだろう。

追記;3月8日。EUではイーロン・マスクの車テスラにNonと言い、テスラ株が落ち込んでいる。これは参考で動画を載せておくけど、例のトランプ就任に際して彼がヒットラーの真似みたいなポーズを取ったことに対する嫌悪感から来ている。

テスラに乗らないヨーロッパ

 そして(3月9日)またこれもイーロンマスクが仕掛けたと言えそうだ。

別にスターリンクなくてもウクライナは勝てる!

新中東戦争のゆくえ