「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」は、最近発売された村上春樹の本である。絵は台湾の漫画家の高妍(ガオ イェン)。この小説に出てくる主人公の僕は原宿の大通りでまさしく「100パーセントの女の子」に出逢ったのだった。
そして現実の僕は、ちょうど初めて大阪で万博があった年の翌年に同じような経験をする。その時の光景をまだよく覚えている。ちょうどそこは万博に合わせて大阪市の阪急や地下鉄御堂筋線やJRが集まる場所である梅田にムービングウォーク(動く歩道)が出来ていた辺りで、僕はちょうど阪急百貨店から阪急三番街の地上階にある「紀伊国屋書店」の方に向かって歩いていた。彼女も同じ年齢くらいで見た目可愛い感じの人だった。まだ二人の距離は30メートル以上はあったと思う。彼女とは行き先が違っていたようだった。ただその時僕は彼女を視認していた(クローズアップされたようにfocusしていた)、彼女の目線も僕をちゃんと捉えていた。そして二人の進む先は微妙に違っていたし、特に知り合いでもなければ声をかけることもお互いにできる訳でもないから、彼女の顔に一瞬残念な表情というか、少し哀しげな顔が見て取れた。今の若い人ならそんな話を聞いて、なんだそれ声もかけないなんて、などと悔しがるというか信じられない反応を示すかも知れない。でもこの時とは限らず似たような経験を僕はいくつもしている。ただその時心の中で彼女に対して思ったことは「100パーセントの女の子」だったという事実だった。なかなかその100パーセントの女の子に出逢うなんてないと思うが、三十五はそうだった。季節は九月だったけど、自分がそう思う前に三十五が僕に先にフリーズ起こしたみたいになっているのを今でも思い出せる。さっきの17歳の時から僕は長いことその子を追っていたのかも知れない。もしかして長い年月の間には色んな事が発生しているから、亡くなっているのかも知れないし、生まれ変わっているのかも知れない。
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