角川の元代表取締役会長の角川歴彦氏(80歳)は、東京五輪での贈賄により東京地検特捜部に逮捕されたが一貫して犯罪事実を否認。未だ第一回公判の予定はない。持病が悪化しており、保釈までの226日を違法な拘束として国家賠償の裁判を起こした。そして最近「人間の証明 勾留226日と私の生存権について」と題した本を出版した。
この本の題名「人間の証明」というのはカドカワから出版された当時人気の推理作家森村誠一の代表作であるが、後にまたカドカワから映画化されて松田優作主演で人気を博した。当時大学生のオレは文庫本片手に一人信州に出かけた。群馬県にある古びた旅館に宿泊した。秋田犬のような番犬がお前ら何しに来たというような目で見ていたが、泰然自若な犬をこの時はじめて見た。昔人を助けたことがあるそうな。温泉に浸かって旅の疲れを癒していると、お呼びがかかった。東京の多摩美術大学だったと思うけど二人の女子大生ともう一人もオレと似たようなどこかの大学生で、別に麻雀はじめたわけではないけど、合流したら最後夜通しトランプに馳せ興じることになってしまった。その二人から一方的に「山本君」とよばれることになった。でも楽しかった。その時にナポレオンや大富豪、ブラックジャック、ページ1などという遊びを覚えたんだから。でも皆目的は同じだったのだ。この小説の真髄は西条八十の詩だ。そして霧積温泉は、この小説では重要な要素を示す場所だ。
母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね? ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、 谿底へ落したあの麦稈帽子ですよ。母さん、あれは好きな帽子でしたよ、僕はあの時、ずいぶんくやしかつた、だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。母さん、あのとき、向から若い薬売が来ましたつけね。紺の脚絆に手甲をした。そして拾はうとして、ずいぶん骨折つてくれましたつけね。けれど、たうとう駄目だつた、なにしろ深い谿で、それに草が背たけぐらゐ伸びてゐたんですもの。母さん、ほんとにあの帽子、どうなつたでせう?あのとき傍に咲いてゐた、車百合の花はもうとうに、枯れちやつたでせうね。そして秋には、灰色の霧があの丘をこめ、あの帽子の下で、毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。母さん、そして、きつと今頃は 今夜あたりは、あの谿間に、静かに雪が降りつもつてゐるでせう、昔、つやつやひかつた、あの以太利麦の帽子と、その裏に僕が書いたY・Sといふ頭文字を埋めるやうに、静かに、寂しく。
イニシャルお前に似ているやろ?角川映画は「セイラー服と機関銃」や「時をかける少女」など次々に映画にすると主題歌と共に若者の心を鷲掴みにしたのだった。そんな中で角川春樹が監督としてメガホンを取った「天と地と」は圧巻だった。それを薬物のせいだとか言う直木賞作家もいたが、オレはそうは思わない。川中島の戦いを再現する映画のロケは全てカナダで行われた。そして和歌山県の北山村の筏師を集めて現地に連れて行った。そこで筏を組み、川を流して迫力ある映像を作ったのだ。筏師の代表の山田叔父さんと一緒に彼の北山村の家で酒を飲みながら当時の角川社長や映画の裏話を語って聞かせてくれたものだ。その山田叔父さんももういない。
角川の映画について、今も(7月1日現在)なおネット検索は出来ない状態が続いている。なぜなら最近傘下のニコニコ動画のドワンゴ初め角川に対するランサムウェア攻撃の影響である。よってニコニコ動画も見れてない状態が続いた(ニコ動はもうだいぶ前に止めた)。仮に書店から最近角川から刊行された「世界一やさしいポーカーの勝ち方」とかいう本を注文しようとしても予約は出来なくなっているのだ。
アメリカの大手石油移送パイプラインが2021年5月7日にこのランサムウェア(身代金目的のマルウェア=サイバー攻撃)に感染し、身代金440万ドルを支払ったとされる。全長8850キロに及ぶパイプラインが約一週間操業を停止に追い込まれたのだから。日本でも同様にこのランサムウェアの被害が発生している。一つは徳島県のつるぎ町立半田病院が2021年10月被害にあった。電子カルテは閲覧できず、診療報酬の請求もできなかったが翌年1月復旧している。病院側は身代金を支払っていないと発表したものの、犯人側(Lock Bit)が病院関係者から3万ドル(450万円)の支払いを受け復元プログラムを提供したという事実が明らかになった。つまり仲介のデータ復旧業者が支払ったのではないかという疑惑が新たに生まれたのだ。もしそれが事実なら素人でも仲介業者になれば儲けられるということも意味する(業者側が不正に金銭を取得すれば詐欺罪が成立するとの見方もある)。徳島県では鳴門市の鳴門山神病院も同じ被害に遭い、大阪でも2022年10月大阪市住吉区にある総合医療センター(大阪に3つある高度救急救命センターの一つ)が、このランサムウェア被害によって電子カルテが使えない被害に遭い、緊急以外の手術や外来診療を停止せざるを得なかった。10億円をこえる被害であると専門家は見ている。
犯人は、盗んだデータを暗号化し、いわゆるダークウェブで拡散する。角川の場合で言えば社員の免許証であったり、関係業者の個人情報やその他契約情報等であったりする。
KADOKAWA側がBlack Suitに約4億7000万円相当の身代金を払ったと暴露する一部報道もあった。
が、7月1日現在で真偽は不明である。支払わなければ同日データを闇サイトで公開すると犯人側のBlack Suitは脅しており、KADOKAWAの対応に注目が集まっている。
参考文献;「ランサムウェアから会社を守る」(日経BP)
「ランサムウェア対策実践ガイド」(マイナビ)
「ダークウェブの教科書」ホワイトハッカーCheena著
補追;昨日の7月2日付のNHKニュースで、犯人が警告した通り、盗んだデータを闇サイトに公開し始めた。よって身代金を支払っていないと推測されるが、犯人側はダークウェブにおいてこのようなデータを売買できるから痛手はないのだ。今後もこの事件からまだ目を逸せない。
補追;7月9日。上記の記載で身代金を支払ってそれをマスコミがリークしたことについて訴訟を起こす云々の話も出ていたが、ここんとこ何故犯人側がデータを公開したのか?という点について考えていた。そして思い当たったのが、KADOKAWAにはBlackSuitが関わっており、ニコ動のドワンゴに対してはK ILLNETであり、つまりダブルでマルウェア攻撃されていたのだということなのだ。後者はタチが悪く、支払っても復元キーを提供しないことも知られている。その辺で会社組織にチグハグさが出ていたか、或いは例の前回話題にしたみずほ銀行のように元々違う会社であったためすぐさま共有出来なかったのではないか。
ドワンゴは支払った→データは復元出来ず
KADOKAWAは支払ってない→脅迫期限を過ぎてデータを公開した
という感じではないかと思う。