2022年9月16日金曜日

64(六四)

  この間 Netflix で映画「64-ロクヨン-」(前編&後編)を見た。佐藤浩市が主演で、昭和64年に発生した少女誘拐事件が時効を迎える頃に、群馬県警捜査一課を外され広報課に配属になり、広報官(警部)として全く違う立場で戦うという役どころを演じている。私の息子は平成元年生まれで、同級生には、昭和63年生まれと64年生まれの3パターンがあるのだが、私にとってもこの昭和63年から平成元年にかけては現役だった当時仕事柄忘れることができない凝縮した思い出がある(内容は三十五にしか言わないけど)。けれど、昭和64年は1月7日に天皇陛下が崩御されたため短い期間で終わってしまう。※ちなみに私と息子の違いは、例えばnetflixで(日本のドラマは息子は見ないが)私が「BORDER」を見ていたとして、切り替わりの所が不自然だと思う、息子はそれはコマーシャルが入っていると直ぐに解る点だろう。

 映画「64-ロクヨン-」予告編 (予告を見るだけで、何だか涙が出てしまう)

 イギリスではエリザベス女王が死去したので全土で喪に服しているが、コードネーム「ロンドン橋作戦」Operation London Bridge  はもう60年以上も前からイギリス当局が死去後の綿密な計画を立てていたと知った。日本でも昭和63年当時「Xデー」が天皇崩御で、「Yデー」は皇后陛下に関するコードネームであった。その最中の11月14日半旗が翻ったことがある。三木武夫元首相が亡くなったためだった。

 話を戻そう。群馬県を含み北関東地区では幼女誘拐殺人事件が複数件発生しており、未解決事件が多い。すでに解決した宮崎勤に関する少女誘拐殺人事件もこの地域が主であったし、捜査に携わる刑事も不眠不休の対応を迫られる結果になったとしてもおかしくない。そして佐藤演じる刑事の家庭も妻が同じく刑事であったが、家庭崩壊につながり娘はぐれて家出してしまう。残された母親は毎日帰りを待つ、電話が鳴るのを待つ日々を送ることになる。夫(父親)はと言えば刑事を離れて心が晴れる分けではなく、かえってマスコミの厳しい追及の矢面に立つというシーンが繰り返される。それでもいつかは娘がただいまと帰って来るのを妻と待つことに賭けているから、どうしても彼の感情的な面が露わになってしまう。しかし辞表寸前まで自分の仕事をしたといえる人が世の中に何人いるだろうか?映画の随所に重たい雰囲気が流れているのは、冒頭の誘拐事件で犯人に身代金だけを奪われて、娘は殺されてしまうという父親の嘆きのシーンがあるからだろう…。


  時代はもう平成から令和へと移っているが、悲劇的な事件は後を絶たず発生している。平成元年(1989年)については既にブログで扱っている。

 平成の終わり 令和へ (2020年5月2日投稿)

 歴史の大きな流れがこの時ヨーロッパやアジアで起きていた。そして中国でもその記憶はまだ人々の中に消えずに残っている。香港の人々や北京にいる人だって、平静を装ってはいるが、思いは一つだろうと思う。彼らはそれを「六四」と呼ぶ。

 奇しくも64の年は同じである。中国では1989年6月4日の日曜日に起きたからそう呼ぶ。天安門広場に民主化を求めて集まったデモ隊に対して中国当局は武力で弾圧しようとする。既に過去のブログでも取り上げたように、政府要人と民衆との間には驚くほどの乖離があった。胡耀邦亡き後は、先に香港で施行された国安法(国家安全維持法)でも明らかなように、中国ではおよそ「自由」や「安全」というものを抑え込むという方向に向き、当時ハンガリーやドイツで人々が自由を叫び民主化を成し遂げて行ったのと180度異なる動きを見せた。

 

 
 習近平と女王;JーCAST ニュース プーチンと女王;AFPBBNews より

 その中国では日本の企業もそろそろ脱出しようという動きを見せている。バブルがいつ崩壊するか不透明だからだし、周りを気にしない中露のトップは「裸の王様」になりつつある。失業者2億6千万人とは驚くべき数字だけれど、若者が職にありつけない現実を中国政府はまるで容認しているかのようだ。

 アメリカがベトナムに勝てなかったように、ロシアによるクリミア侵略に次ぐウクライナ侵略も9月に入って形勢が逆転しているように見える。それは女王陛下の英国の特殊部隊(SAS)の役割がなければ達成されなかったに違いないだろうけれど、ロシア国内の反プーチンの動きが今後カギになることは間違いなさそうだ。

   

2022年9月3日土曜日

時の流れをとめて…

    この歌は中島みゆきの「世情」の歌詞である。既に中国は香港の反対派(蘋果日報や民主化議員)を押さえ込んでしまったし、本土では自由な活動は実質できなくなってしまった。雨傘革命は、雨と共に完全に消えてしまったのか…。

中島みゆき「世情」香港バージョン

香港の現状(いま)NHK

 台風11号が大きく進路を変えて日本を直撃している。既にパキスタンも国土の3分の1が水没したが、シェリー・レーマン気候変動大臣も「これは温暖化の結果」と話している。中国でも旱魃になったと思ったら今度は洪水に見舞われたりして、コロナだけではなく自然災害に遭っている。

 ところで8月は中国では大事な会議があった。「北戴河会議」である。特に今年は共青団(中国共産主義青年団)派の活躍が喧しいという。胡錦濤によって作られ李克強首相を筆頭に、汪洋、胡春華といった幹部が「幅を利かしている」というのだ(石平氏)。彼らがゼロコロナ政策の失策を声高に話せば習近平の力が弱まるということになる。季節は9月に入ったが、中国通の人やマスメディアもここにきて中国の異変を報道し始めた。中国の失業者は2億6千万人で、若者の失業率は都市部では18%もあるらしい。これは今年1000万人以上の若者が卒業することを除いてのデータであるから深刻度が増している。(YouTube〜KENNY STYLEに詳しい) 中国のいわゆる経済統計は信用できないとはよく聞かれるが、いくら独裁であるからと言って何時までも人々も黙ってはいない。

 他の国とは違って感染を防ぐには直ぐにロックダウンしてしまう(いわゆるゼロコロナ政策)から、人々は外に出れず、生産ラインがストップしてもおかしくないだろう。海外の企業が中国にはたくさんある。日本のトヨタもそうだしアップルやボーイングといった企業も製造中止を余儀なくされることが現実に起こっている。

 柯隆さん(東京財団政策研究所主席研究員)もゼロコロナでは経済の成長を阻んでしまっていると警告している。大規模停電も起きたからそれも原因しているが、中国ではエレベーターは停めるし、信号機も動かなくなるというから日本では考えられない。それは一つには、中国がオーストラリアに科した経済制裁で石炭を輸入しなくなったという笑えない話があるらしい。中国の70%は火力発電で67%は石炭火力だと柯隆さんは言う。時々ウケを狙って話がすべってしまうこともあるけれど、この人が話す中国に関するものが一番信頼がおけるから、よくラジオでもpodcastを通じて伊藤洋一の「Round Up World Now!」の中国スペシャルを聞いている。

 中国が世界の国々に貸している148カ国のうち47カ国が債務不履行に陥り、その額52兆円にも上るという。(YouTubeニューソク通信に詳しい)スリランカが債務の罠に陥り債務超過による破産宣言したのは記憶に新しい(日本に助けを求めている)が、債務国よりも債権国を直撃すると言うのだ。不動産バブル崩壊については大手メディアも扱っている。ローンだけ組まされて、その実住むべきマンションは頓挫して殆ど建設できず、幽霊化しているのが現状である。(中国では先に全額分譲マンション購入費を不動産会社に支払って、その後で購入者がローンを組んで返済しているが、ほぼ全てのマンション建設が途中で頓挫している)そのことと今起きている預金引き出し騒動は関係があるかも知れない。

 債務と債権は反対のことであるが、いずれ日本がバブルで体験したように不良債権が山のように積もり積もって債権放棄をせざるを得なくなったように、中国でも近々似たようなバブル崩壊の兆しがあるのではないか?各都市の地方銀行で人々が殺到し、殆ど暴動寸前になっているというのだ。全国4000行の銀行がヤバくなっている。一体この先にあるものは何だろう。

 国が奨励している地方銀行の地方債を国民が信用せず、利率の高い商品に飛びつくのはどこでも同じこと、各銀行も競ってネットでの金融商品や不動産がらみの貸付(頓挫したマンションからは何も生み出さない)をやり、それが今噂やSNS(LINEなど)に乗って国民の間に不安感を煽っているのだろう。「あの銀行、いつ潰れるかわからないわよ」なんて…。

 最後に13億人の個人情報が流出した件。出処は香港の「サウスチャイナ・モーニングポスト」。上海の新型コロナアプリから5千万人規模の個人情報流出があったと報じた。ハッカーはこの情報を日本円で53万円で販売するとしているが、それとは別に上海の警察当局がデータベースで管理している10億人分の身分証番号や住所、氏名、生年月日、携帯番号、犯罪歴などの詳細な個人情報(ハードディスク22Tb分)を10ビットコイン(日本円で約2千700万円)で販売する者も現れたようだ。データベースで人口分の管理ができているはずの中国で1億人ほどは未だDB化できていないようだけれど、10億人分の後にも追加で流出したとあったので丸々人口分が流出したかも知れない。人民解放軍には世界一、ニのハッキング部門があるが、その逆は極めて脆弱だということを意味している。


 この間、東北の桃を大量に盗んでは売り捌いていたベトナム人が数名警察に捕まった。ウクライナの人々のように帰りたいが直ぐに帰れない難民もいる反面、悪さをする外国人も受け入れているという現実があることを私たちは知らなければならないだろう。侵略以降ロシアからかなりの優秀な人々が出国しているが、中国からも今後隣国に押し寄せてくる可能性がある。


   (写真は、VCG/GETTYIMAGES より)


 日本は住みやすい国だと思う。無駄に監視されないから。「弾丸列車」Bullet Train のPRで来日したブラッド・ピットは京都をおとづれて満足して帰って行った。私も彼が歩いた「哲学の道」を久しぶりに歩いた。そして早速9月2日には大阪ステーション・シネマで相変わらずスキスキの座席でポップコーンをほうばりながらその映画を観た。CGてんこ盛りの映画は「トップガン/マーヴェリック」と一緒には出来ないけど、もしお前が横にいたなら頭を肩に寄せて甘えてしまうかも知れないね。カルメン・マキの歌う「時には母のない子のように」を聴きながら….。

 その日、映画館を出たら外はいっぱいの晴れ間、ルクアの中で仙台の牛タン定食を食べて、蔦屋書店で手嶋龍一の新刊「武漢コンフィデンシャル」を買う。そして阪急のESTまでひたすら歩き(途中携帯がけたたましく鳴って訓練用の緊急速報を告げている)「スタンダード・プロダクツ」(ダイソー)を見つけて、中でやっと「CRAFTSMAN PENCIL」を買ったのだった。


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向我呼吸





新中東戦争のゆくえ