2024年6月10日月曜日

Postmortem なぜ不正は起きるのか?

    最近人の「不正」にまつわる様々な事象が日本で起きている。日本の工業メーカーの技術の「品質管理」は定評があるはずだし、だからこそ新幹線のような列車やホンダジェットが世界に伍していけるのだろう。「品質管理」は今や食品会社(工場)やどの分野の会社でも取り入れており、社内にはそういう課もある。それほど外されない要素である。松下電器が先駆けてQC(品質管理)サークルを立ち上げていたのは、その頃高校生でバイトしていたのと母も同社でその一翼を担っていたから知っていた。

 トヨタやホンダやヤマハといったメーカーがこぞって国交省で定められた基準から逸脱した方法で安全基準を無視して出荷していたことが明らかとなり、それぞれ社長が謝罪会見するにまで至り、出荷停止に追い込まれた。これまでにも自動車メーカーは日産や三菱、スバルといった会社が車検(車両検査)で不正があったし、ダイハツの認証不正問題も最近発覚し親会社の豊田社長が謝罪したばかりだ。エアバッグで独占企業だったタカタは、補償が膨らみ倒産してしまったことも記憶に残っている。その昔建築基準から外れた会社が摘発されたこともある。

 ところでどうして不正は起きるんだろうか?この問題は、「人はなぜ殺すのか」ほどの命題ではないにしろ、人間がこの世に生を受けて生きていく上での永遠のテーマとなるかも知れない。

 今読んでいる本はタイトルにあるように「ポストモーテム みずほ銀行システム障害 事後検査報告」。この本の冒頭でpostmortemという用語の解説がしてある。ポストモーテムとは、「検視」もしくは「死体解剖」という意味だ。警察が遺体が事件性があるかどうかを判断するために「司法解剖」するあれだ。みずほ銀行のシステム障害は今回の故意の検査逃れと違って、不正というよりどこの銀行でも起きそうなことだし同列には扱えないが、度重なる障害が起きるとどうなっているんだろうと思ってしまうし、当事者にとっても最新のシステムを構築したはずなのに現実に障害(キャッシュカードや通帳が出てこなくなるトラブルが相次いだ)が起きてしまうと非常に悩ましい事であり対処に困ったことだろう。昔日本の六大銀行が分解して、様々な銀行と結びつき変容を経たことは外資といういわば「黒船」に対応するためだったからだ。みずほという銀行は三十五が二十歳の時に興銀、第一勧銀、富士銀行が合併して誕生した銀行だ。だからこれまで言われ続けてきたのは、それぞれが自分なりの砦やそれまでの個別のやり方に固執して共有すべきところが中々出来なかったという点だ。今回の不正に対してのトヨタ社長の態度は誰が見ても謝罪とは言えない気がする。それだけトヨタは世界での地位が大きくなり過ぎたということか。同じことが大阪府知事にも言える。市長時代に水道汚職があったが、ぶら下がりの記者会見でおざなりの立ち話に終られたことがあったが、この人の人間性かとガッカリさせられたものだ。なぜその時にきちっと記者会見して謝罪しなかったんだろう。つまり人に頭を下げることが嫌いなのだ。しょうもない子供騙しのようなヨードチンキが新型コロナに効くと記者会見まで開くのにと、頭を傾げてしまう。

 また海の向こうの彼の国では「武漢金凰」というそこそこ大きな会社におけるイミテーション・ゴールド問題が膨らみはじめているそうだ。偽りの金ゴッド事業に貸し付けた銀行も巻き込んで、この不正も大きくなっていきそうだ。詳しくは下のYouTuber 妙法さん のチャンネルをご覧になって下さい。

妙法チャンネル

 そして今揺らいでいるのはやはり、鹿児島県警の不祥事に絡む逮捕劇と部内の不正に関する県民やマスコミに対するリークである。最近までは静岡県警がこれでもかと相次いで不祥事が続き問題になるはずが、静岡県知事のあまりに破廉恥な発言に食われてしまい、知事の辞任劇がクローズアップされてしまった。少しはJR東海も静岡県警も胸を撫で下ろしたに違いない。大阪府だと生安(生活安全)部長と言えば警視長という階級で本部長は警視監であるが、鹿児島のような地方であれば、階級は生安部長が警視正で、本部長が警視長である。今回の鹿児島県警の元生安部長の本田氏は叩き上げだ。本部長はいずれ警察庁に帰る人である。いわば「腰掛け」に過ぎない。しかしあまりに不祥事が続くと出世に響くだろうことは想像がつく。件の井上元刑事部長も今回退職だからおそらく叩き上げだろう。今回はその両者の戦いの構図になってきているように見えるが、刑事部長は実は人身御供でその陰に本部長がいたということらしい。しかし何れにしてもそもそも警察官の不祥事である性的犯罪を本部長が直接指揮することは有り得ないし、それはかつてのオウム事件で警視総監が(被疑者を現職の警察官に仕立て上げた)自ら指揮をしたということがあり、同じ轍を踏むことになってしまうだろう。本田氏は今の本部長の元では職員は物を言うことも否定されてしまい疲弊していると指摘しているが、かつて存命中だった安倍総理に皆がこぞって忖度した様相と似ていなくもない。いわゆる「裸の王様」ってやつだ。

《これは余談だけれど、事件後法廷で本田氏があくまで「内部通報」という事で話しているが、「事件指揮簿」というのが話に出てくる。これは事件の経過、進捗状況を報告して上司の決裁を仰ぐ性質のもの。有能な取調官(刑事)は何時の世でもいくらでもいる。部下を信用しないから「事件指揮の伺い」を立てても印鑑を押さないのだ。上記内容で「部下が萎縮してしまい」というのと繋がる。昔「吉展(よしのぶ)ちゃん事件(幼児誘拐殺人事件)」で名を馳せた平塚八兵衛という刑事がいる。今その人が当該事件を調べていたとする。(一課事件ではないが、監察事件では一課の刑事が取り調べることがある)もし事件指揮を本部長がやると言ったなら、「それじゃどうぞどうぞ。わしはそばで見てますんで」となることだろう。ところが、この「事件指揮簿」自体本部長は関わっていないというのだ。元生安部長がおかしいのか?どちらかが嘘をついているということだ。》

                       金の星社の絵本「はだかのおうさま」より


 会社組織には会計監査があり、名のある会計事務所が付いたりするのをよく耳にする。会社は不正がないようにしたいし、監査委員は取締りで摘発する目的はないからなるべく穏便に監査を終らせたいはずだ。昨今のコンプライアンスやコーポレイト・ガバナンスという制度を生み出すことになったエンロンの「不正会計」がきっかけで生まれたのが「内部通報制度」である。今回の本田氏も弁護士が援護しているように、この内部通報を日本で法律化した公益通報者保護法がまず保護法益であり逮捕は違法であると主張する。そして本田氏は部内の不正会計も指摘しており、本庁(警察庁)を巻き込んでしばらくはこの問題に決着がつきそうもない。

補追(6月13日);既に情報漏洩で先に鹿児島県警に逮捕されている曽於署巡査長藤井光樹容疑者(懲戒免職処分)は、本田元生安部長とは面識がないという。しかしどう言うわけか本田氏が文書を送った札幌市の小笠原記者が福岡市にあるネットメディア「ハンター」に同文書(コピーだろう)を送る前には、藤井容疑者が福岡の会社役員に内部文書を送り同文書が「ハンター」に送られているので、県警が「ハンター」を捜索した。その際に本田氏の内部文書も一緒に発見したということらしい。香港で国家安全維持法違反で「りんご日報」が捜索を受けているが、なぜか被ってしまう。これはあくまで個人的な感想だけど、退職金をもらってからリークして逮捕された(捜索中自殺未遂している)本田氏と比べ、この先もっと有用な道が開けていたかも知れない藤井氏には執行猶予付きの判決を出してもらって、新たな人生を生きてほしいと願う。

MC183



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