北海道のオソツベツ地区で2019年に28頭(1400万円の被害)の乳牛が襲われ、その後33ヶ所の範囲にわたり計66頭もの牛が殺されたとして、駆除を生業とする漁師はあるヒグマの行方を追う羽目になった。映画なら「明日に向かって撃て」のような件(くだり)である。ヒグマの名前は、コードネームで「OSO(オソ)18」と呼ばれた。オソツベツ地区で被害があったのと、足跡の大きさが18センチ(実際は20センチ)あったことからそう呼ばれることになった。北海道大学大学院(獣医学)の坪田敏男教授はいう。「人への対応を十分学習している、ちょっと変わったクマ」であると。そのようなクマは今まで一頭もいなかったし、それだけに脅威でもあった。何故ならそのクマは、夜間にだけ行動し気配を残さず、沢を移動して足跡を残さない。いわゆる「忍者グマ」と呼ばれて恐れられた。通常ならばヒグマは、ドングリ等の樹木の実を食べたりして牛を襲ったことなど一度もなかった。体長は優に2メートルを超え、体高は1.2メートルの大きさだった。そのクマが最近捕獲された。道民は安心したと言う者もいたし、「遊びじゃなくて生きるためだったから、ちょっと複雑だなぁ」と呟く人もいた。
人の生活圏にクマが山から降りてきて、人を襲ったりすることが多くなり、そういう事例が全国的に拡大した時に、人々は恐れると共になぜそうなったのかと考えはじめた。本来なら森林に生息する野生の動物は「植生」という自然界の営みの中で人と共存していたはずだった。いつ頃から、クマや猪、鹿や猿たちが人の生活圏に現れて田畑を荒らして人の脅威となったのだろうか?OS18の実例は、おそらくそれだけに留まらない要素を孕んでいる。人が水力発電のためダムを作るために(あるいは太陽光発電の名目で)森林を切り開き、植生を壊し、本来の自然の領域に生きる動物たちを追いやることを始めた。今は農作物は電気柵なしには守れない程になった。環境を破壊したのは人間であり、動物ではないという点が大事な視点である。
人間は勝手な生き物である。先ごろも、政府は漁民の反対を押し除けて原発処理後の汚染水を海に流す決定をした。「安全」だとか「安心」だとかいうが、それはきっちりと納得がいってのことだろう。東京都も神宮の森を伐採する決断をしたばかりだ。故坂本龍一や村上春樹といった著名人の反対意見も押し潰して、100年も育てた樹をあっけなく伐採することにしたようだ。これも「都民ファースト」なのだろうか?(流石に都民の反対にあい、伐採計画は頓挫している)
写真はヤフーニュースより(標茶(しべちゃ)町役場農林課林政係提供)
しかし待てよ、と私は考えてしまう。何かが変だ。OSO18は多分復讐だったのではないだろうか?彼の身近にいる守るべき肉親を人間に殺されているかも知れない。乳牛の殺し方だって、ライオンやハイエナのように十分食べ尽くすというような食べ方はしていない。昨日だったか、どっかのニュースでOSOが食肉として出されていることを伝えていた。人の通常の食として出されたことに違和感を感じた。これで全ては解決したよ、退治したんだからどうぞみなさん召し上がれ。そんなこと言った分けでもないだろうけど、これが解決とは程遠いし、処理水も海に捨てても基準値の放射能は検出されませんでしたから大丈夫と言われてもねぇ。問題はそんなに単純じゃない気がする。それだったらなぜそもそも原発を推進してきたの?(私は朝日や毎日の回し者でもない、ごく普通に生きて普通に疑問を持っている者です。)核融合発電の技術にもっと早く本腰を入れるべきだったのではないか。産経新聞をはじめ(私は産経デジタルを購入している)原発推進のキャンペーンは半端ない。なぜそこまでと首を傾げたがるがそれが日本人の「大多数」の総和だと言うなら、それも認めよう。軟弱な地盤の夢洲にカジノや万博を誘致する維新、外国人に参政権を与えようとするれいわ新選組、9月に総選挙を実施したい自民党はこのままでは統一教会の信者の力を借りないと当選しないんじゃないか?既に若者はつまらないバラエティしか放映できないからTV離れが出ていることだろう。いやYouTubeだってしっかりとした他人のマネではない独自のチャンネルを持っているユーチューバーは少ない。
魅力ある国にするには、まず動物と共存できる自然を回復することが先なんじゃないだろうか?処理水に関する中国人の動静を気にするよりも、もっと日本人がもう一度落ち着いて考えないといけないことがあるはずだ。
※ 先に私は核融合発電について触れていますが、下のリンク先で小出氏は、その核融合発電も危険であると指摘しています。
参考文献等;米田一彦著「人狩り熊」(つり人社刊)
YouTube動画1️⃣ 十和利山熊襲撃事件
YouTube動画2️⃣ 小出裕章氏「原発汚染水はなぜ流してはならないか」
追記;10.26 NHK特集で「OSO18」を見た。集められた老練なハンターが言う。捕獲されたクマの前足が20㌢なのもおかしい、腫れているし、痩せていたと。大学関係者の研究も含めて考察するに、群から「爪弾きにされた」まだ9歳にしかならない彼は、周囲の自分がいる領域では生存出来ず群れを遠く離れて、何も食べずに単に職員に簡単に仕留められたのだろう。そして彼を含めて他の動物を食べる事を身につけてしまったクマは哀れだし、何らかの事後の対策も必要であると研究者は言う。何故ならクマという生き物は本来なら森の豊潤な植物を主食にしており、決して動物は食してはいなかったから。今やそれが人も襲って食べる術を身につけてしまった。
このOSO18の事例は単に北海道の一地域に起きた特別な事ではなく、(秋田のスーパーKが有名)これからも彼のような個体は現れるだろうし、もう一度森のあり方を問い直さなければいけないし人間の未来もない。子供たちや子孫が既に危険に晒されているのだから。