2023年8月28日月曜日

OSO18

    北海道のオソツベツ地区で2019年に28頭(1400万円の被害)の乳牛が襲われ、その後33ヶ所の範囲にわたり計66頭もの牛が殺されたとして、駆除を生業とする漁師はあるヒグマの行方を追う羽目になった。映画なら「明日に向かって撃て」のような件(くだり)である。ヒグマの名前は、コードネームで「OSO(オソ)18」と呼ばれた。オソツベツ地区で被害があったのと、足跡の大きさが18センチ(実際は20センチ)あったことからそう呼ばれることになった。北海道大学大学院(獣医学)の坪田敏男教授はいう。「人への対応を十分学習している、ちょっと変わったクマ」であると。そのようなクマは今まで一頭もいなかったし、それだけに脅威でもあった。何故ならそのクマは、夜間にだけ行動し気配を残さず、沢を移動して足跡を残さない。いわゆる「忍者グマ」と呼ばれて恐れられた。通常ならばヒグマは、ドングリ等の樹木の実を食べたりして牛を襲ったことなど一度もなかった。体長は優に2メートルを超え、体高は1.2メートルの大きさだった。そのクマが最近捕獲された。道民は安心したと言う者もいたし、「遊びじゃなくて生きるためだったから、ちょっと複雑だなぁ」と呟く人もいた。

 人の生活圏にクマが山から降りてきて、人を襲ったりすることが多くなり、そういう事例が全国的に拡大した時に、人々は恐れると共になぜそうなったのかと考えはじめた。本来なら森林に生息する野生の動物は「植生」という自然界の営みの中で人と共存していたはずだった。いつ頃から、クマや猪、鹿や猿たちが人の生活圏に現れて田畑を荒らして人の脅威となったのだろうか?OS18の実例は、おそらくそれだけに留まらない要素を孕んでいる。人が水力発電のためダムを作るために(あるいは太陽光発電の名目で)森林を切り開き、植生を壊し、本来の自然の領域に生きる動物たちを追いやることを始めた。今は農作物は電気柵なしには守れない程になった。環境を破壊したのは人間であり、動物ではないという点が大事な視点である。

 人間は勝手な生き物である。先ごろも、政府は漁民の反対を押し除けて原発処理後の汚染水を海に流す決定をした。「安全」だとか「安心」だとかいうが、それはきっちりと納得がいってのことだろう。東京都も神宮の森を伐採する決断をしたばかりだ。故坂本龍一や村上春樹といった著名人の反対意見も押し潰して、100年も育てた樹をあっけなく伐採することにしたようだ。これも「都民ファースト」なのだろうか?(流石に都民の反対にあい、伐採計画は頓挫している)

 

       写真はヤフーニュースより(標茶(しべちゃ)町役場農林課林政係提供)

 しかし待てよ、と私は考えてしまう。何かが変だ。OSO18は多分復讐だったのではないだろうか?彼の身近にいる守るべき肉親を人間に殺されているかも知れない。乳牛の殺し方だって、ライオンやハイエナのように十分食べ尽くすというような食べ方はしていない。昨日だったか、どっかのニュースでOSOが食肉として出されていることを伝えていた。人の通常の食として出されたことに違和感を感じた。これで全ては解決したよ、退治したんだからどうぞみなさん召し上がれ。そんなこと言った分けでもないだろうけど、これが解決とは程遠いし、処理水も海に捨てても基準値の放射能は検出されませんでしたから大丈夫と言われてもねぇ。問題はそんなに単純じゃない気がする。それだったらなぜそもそも原発を推進してきたの?(私は朝日や毎日の回し者でもない、ごく普通に生きて普通に疑問を持っている者です。)核融合発電の技術にもっと早く本腰を入れるべきだったのではないか。産経新聞をはじめ(私は産経デジタルを購入している)原発推進のキャンペーンは半端ない。なぜそこまでと首を傾げたがるがそれが日本人の「大多数」の総和だと言うなら、それも認めよう。軟弱な地盤の夢洲にカジノや万博を誘致する維新、外国人に参政権を与えようとするれいわ新選組、9月に総選挙を実施したい自民党はこのままでは統一教会の信者の力を借りないと当選しないんじゃないか?既に若者はつまらないバラエティしか放映できないからTV離れが出ていることだろう。いやYouTubeだってしっかりとした他人のマネではない独自のチャンネルを持っているユーチューバーは少ない。

 魅力ある国にするには、まず動物と共存できる自然を回復することが先なんじゃないだろうか?処理水に関する中国人の動静を気にするよりも、もっと日本人がもう一度落ち着いて考えないといけないことがあるはずだ。

 ※ 先に私は核融合発電について触れていますが、下のリンク先で小出氏は、その核融合発電も危険であると指摘しています。

 参考文献等;米田一彦著「人狩り熊」(つり人社刊)

 YouTube動画1️⃣ 十和利山熊襲撃事件

 YouTube動画2️⃣ 小出裕章氏「原発汚染水はなぜ流してはならないか」

 追記;10.26   NHK特集で「OSO18」を見た。集められた老練なハンターが言う。捕獲されたクマの前足が20㌢なのもおかしい、腫れているし、痩せていたと。大学関係者の研究も含めて考察するに、群から「爪弾きにされた」まだ9歳にしかならない彼は、周囲の自分がいる領域では生存出来ず群れを遠く離れて、何も食べずに単に職員に簡単に仕留められたのだろう。そして彼を含めて他の動物を食べる事を身につけてしまったクマは哀れだし、何らかの事後の対策も必要であると研究者は言う。何故ならクマという生き物は本来なら森の豊潤な植物を主食にしており、決して動物は食してはいなかったから。今やそれが人も襲って食べる術を身につけてしまった。

 このOSO18の事例は単に北海道の一地域に起きた特別な事ではなく、(秋田のスーパーKが有名)これからも彼のような個体は現れるだろうし、もう一度森のあり方を問い直さなければいけないし人間の未来もない。子供たちや子孫が既に危険に晒されているのだから。

 







2023年8月13日日曜日

百合と回転式銃

    昨日8月12日に梅田のT・ジョイで映画「リボルバー・リリー」を観てきた。フロント大阪の人混みと比べれば、館内はひっそり閑としていた。小曽根百合は、細見欣也(水野寛蔵と同一人物)という男が作り上げた諜報機関「幣原機関」に属していて、三年間で57人もの人を殺害したという曰く付きの殺し屋であり、20歳で行方を眩ましてから陸軍からも別の殺し屋からも付け狙われる羽目に陥る。大正時代の台湾が舞台になっているが、山本五十六は当時大佐の身分で出ている。ラスト近くで百合が五十六に銃を突きつけ面と向かい、人が人と殺し合う世の中になるのではなく何とかして戦争を回避して欲しいと頼み、彼の言質を取りつけるシーンもある。歴史は決して彼女の理想どおりには進まなかったが…。陸軍と海軍は元々仲が悪かったが、水野が握っている資金源を巡る争いに百合も巻き込まれることになる。それは百合が愛したスパイの上官細見が実は水野であり、理想家の水野の家族を皆殺しにされる中で唯一逃した息子を命懸けで守ることを彼女に託したからだった。息子が狙われるのは、軍の機密情報を身に纏っているという事もあった。百合の脇を彼女の支援者(弁護士岩見や女中達)の何人かが援護射撃して固めている。陸軍の大勢の軍人とは別に、南という一匹狼の男(清水尋也)と繰り広げた死闘は何より見ものだった。彼女が女将である花街の銘酒屋でレコードがかかるシーンがある。我々でも懐かしいエノケンの歌(小学校の頃TVのコマーシャルソングだった)で、その曲に乗り射撃シーンが始まる。

エノケン(榎本健一)の「東京節」(大正生まれの婆さんはバナナをよくパナナと言っていた)

 彼女が手にする S&W M1917リボルバー という拳銃は六発の弾丸を弾倉に入れ、打ち終えれば排莢子桿を指で押し直ぐに薬莢を押し出し新しい弾丸を装填する。最後の方の海軍省前での陸軍との死闘ではその仕草を繰り返すシーンがある。イタリアの拳銃ベレッタも登場するが、彼女のはアメリカ製のスミス&ウェッソン社の45口径の銃で銃身が結構長くて命中度は上がるが、本当なら女性には向かないはずだけど。撃った人ならわかるけど、凄い反動で片手で撃った瞬間銃身が十センチ以上は上がるから。両手把持でなければとても無理、が本当のところです。余談ですが、同じ会社製で「SAKURA」(M37エアウェイト)があるけど、現在の日本の警察官が所持しているもので、昔のニューナンブと比べても命中精度は格段に低い。何故なら銃身が4センチ程度で、至近距離から発砲しても5メートル程度なら当たるが5発しか装填できないし、実際にはただ軽いだけの使い物にならない銃なのだ。日本はアメリカと違い、銃規制がしっかりされているからそんなに銃所持事案を心配することは少ないが、それでもナイフを手にして攻撃されれば、もう拳銃よりその辺にある椅子とか棒切れの方がマシ。よって「地形地物を利用せよ」と言われているのである。

映画「リボルバー・リリー」秘蔵映像

 

  写真は、2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズより

 綾瀬はるかは、銃でも刀でも(映画「ICHI」)かっこいい。格闘シーンも含めてハリウッドのアンジェリーナ・ジョリーよりも優れていると思う。取扱注意の奥様でも好演していたし、今後が楽しみの女優である。この映画の新調された礼装の白色のドレスを纏った彼女の戦闘シーンは、血だらけになり実に勿体無いと思った女性が多かったんじゃないだろうか。

 そのドレス、衣装担当の黒澤和子がデザインしたものらしい。

衣装デザインが決め手

 でもいつになったら、隣にお前が座るんだろうか…。



新中東戦争のゆくえ