なぜいけないんだろう?どこが間違っていたんだろう?自分たちの過去において何かをしようとして、例えば事業を始めようとして失敗した人もいるだろうと思う。その時に自分自身に何かの言葉を投げかけていたとして、皆さんはどういう言葉を投げかけてみますか?(そんなことをある記者会見を見て思ってしまいました。)
国産初のジェット旅客機のこと。実は私はニューヨークに行った時(2004年8月)滞在スケージュールが1日余ってしまっていて、それでワシントンに行けるかどうか思案したことがある。1日で行けるかどうか?取り敢えず直ぐに実行したがる性格から、ラガーディア空港に向かっていた。そして空港カウンターで質問した。今朝ここを出発して今日中に帰って来れる便はありますか、と。そしたら直ぐに返答が返ってきた、あります、と。一も二もなくその運行スケジュールで1日を組み立てて、ビジネスマンがよく利用する小型ジェットに乗りワシントンに飛び(約1時間)、有名なスミソニアン博物館とケネディ大統領が眠っているウェリントン墓地を訪ねることが出来て満足したのだった。ワシントンのその博物館は、ライト兄弟の初飛行機や、子供を身代金要求されて殺された悲惨な体験もした(それは「オリエント急行殺人事件」の元になった)リンドバーグの大西洋無着陸飛行を実現したスピリット・オブ・セントルイス号、日本に二発の原子爆弾を投下したエノラゲイ号、それに宇宙ロケットで月面に初めて着陸したアポロ13号の機体やスペースシャトルも展示できる日本と違うスケールの大きい博物館であり、それらを目の当たりにして興奮もした。中でもトム・ハンクスが監修したジェット機に関するものや宇宙もののIMAX映像は圧巻だった。
本題は、「MRJ(三菱リージョナルジェット=現スペースジェット)が事業を正式に撤退」というニュースについて。1兆円もの開発費を投入した「日の丸ジェット」は大きな期待を背負い、JALなど国内の航空会社も含め400機の納入を見込んでいた。2月7日泉澤清次社長は会見で、あっさりと様々な事業計画を断念せざるを得ない理由を挙げて、開発中止を判断したと述べた。既に受注していた航空会社などは蚊帳の外であったし、名古屋空港近くに設けられた量産工場にしてもそうだが、部品メーカーでも旭精機工業といった会社は22億円をかけて神戸に主翼の部品を加工する工場を設けていたのだったが閉鎖せざるを得なかった。ちょうどパナソニックがTV製造のために尼崎の海沿いにどデカい工場を作っていたのを湾岸高速を通るたびに見ていたのを思い出した。シャープをはじめ次々に国内のTV産業は当時韓国や中国などの国際競争に負けて撤退することになった(その時にずっと後のことを考える余裕があったらソニーのように次の主力製品を生み出せたはずだった)。
社長は失敗の要因として、型式証明のことでの経験不足や脱炭素化等で巨額の資金が必要になった、「開発を再開するに足る事業性を見出すことが出来なかった」等語っている。
しかし、例えばTBS NEWS DIGというBS番組では ①自前主義に拘った②市場への向き合い不足③国際環境の認識の甘さ④協業体制の弱さ⑤技術偏重などがあったと指摘する。更に
・日本の製造業がビジネスが出来ないための問題点
・dicision making(意思決定)=決断能力の弱さ
・責任の明確化が出来ていない→誰も責任を取らなかった
などの指摘を行なっている。それとは別に当初から社員がこのMRJの失敗を見越して他社に転出した人が続出したらしい(ホンダへ?知らんけど)。「型式証明」とは、航空機が一定の安全基準を満たしていることの認証で米連邦航空局がチェックするもの(国内のボーイング787MAXという欠陥ジェット旅客機の製造には甘いのは合点が行かない)で、それについても国交省のバックアップが手薄であると言われている。ちょっと性質が違うが、東芝が、ウエスティングハウスという米原発を手に入れようとして失敗(購入後9.11後のテロ対策に莫大な費用がかかってしまったから)した事例があるが、その時対照的に三菱重工は早期に引き上げて救われていたのを思い出す。
誰か識者も似たようなことを言っている人がいたけど、もしジェットがダメでも宇宙産業で繋げていけたんじゃないかと私も思う。さすがというか親方日の丸だからか、あまりに企業が大きすぎて失うものがないと思うのか知らないけれど、発想が貧弱なのはどうしてなのだろう?躓いた時の対処が出来ない人間はダメ人間になるが、会社も同じである。かつてカナダのロンバルディアから訴訟を提起され、その後和解して共同で製造することになったという経緯も思い出されるが、ホンダ・ジェットが輝かしく飛び出して行ったのとは好対照なのは何とも皮肉だと思う。各界のリーダーも今回の撤退を悔しがって見ていることだろうと個人的には思っている。
上がホンダ・ジェットの最新モデルHonda Jet Elite II、下が改名したMRJ
ホンダジェットのCM このCMの曲は、ワンオクのタカが作って歌っている。
私が今いる食品会社ではコージェネco-generationという機械がある。ガス会社と協働で三菱のターボエンジンがエネルギー(熱)を生み出す仕組みである。(関連会社;三菱重工エンジンシステム(株)、三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株))、大阪ガス(現Daigas Group)
それは、今後原発に変わる次世代の軽水炉として注目されているが、核融合発電も水素を燃料として安全性に優れたものとして注目され三菱重工が中心となっている感がある。だから余計に惜しいのは、企業が大きすぎていざという時に知恵を絞り出すことが出来ていない状態にあるから。国産の主力戦闘機についても日本は後手に回ったことがあったが、いつの世でも遊ぶことに熱心で金儲けに走ったりする社長(例えばゴーンのような男)しかいなかったり、一票のためにどっかの宗教団体に頼ることしか知らない政治家しかいないからなのかも知れない。
私が特に言いたいのは、「一度乗りかけた船」なんだから、例え様々な困難を伴う諸問題があったとしても(Quoraではそのような指摘がされており無理もないと擁護されている)、途中で放棄しないで最後まで責任を持ってしなさいということです。「三菱」は、戦前からそのような重大な国を背負った責任を背負っているからに他ならない。
補追;初号機はアメリカにおいて本年3月8日に解体され、テストされた他の関連機も以後順次解体される。国内に残った関連機については、知見をいかし社長の判断で次期戦闘機の開発に活かすこととされている。