2022年11月28日月曜日

白紙革命 the A4 Revolution

    折も折カタールでFIFAワールドカップが催されているが、ここにきて中国が俄に騒がしくなって来た。

 上海や北京という首都圏でデモが起き、それが日に日に拡大の兆しを見せている。そのデモは深夜になるまで続き、逮捕者も相当出て来ている。彼らは一様に「自由」を求めて戦っている。

 発端は、新疆ウイグル自治区ウルムチ市で起きた高層住宅での火災だった。その火災で10人の住民が死亡している。17階建住宅の15階が火元であったが、思うように消防の消火活動や救出活動が出来なかった。それはなぜか?現下「0コロナ政策」により、全て市民活動に制限を設けているためだった。だから住民が上手く避難できず(当局は逆に中に留まるように指示している)、封鎖バリケードが元で救援活動が困難になったのだ。ハシゴ車からの放水も離れていてか届いていない状態だった。そしてそのことを国内のwebsiteであるWeibo(微博)で誰かが拡散し始める。

 ウルムチ市では120日以上当局の封鎖があり耐えきれなくなった市民が「解散せよ」とデモを起こし始めた。デモは北京市や上海市にも飛び火したが、上海市のウルムチ通りでは、白い紙に何も書かれていないカードを掲げて行進し「不要核酸(PCR検査は不要)」「我想要自由(私たちには自由が要る)」と声高に主張した。

※当初、南京放送大学の女学生がこの何も書かれていないA4の紙を掲げたところ、先生がそれを取り上げ、学生の友人がそのことをSNSでupしたことで拡散したようだ(東京財団政策研究所の柯隆さんの話)

 「政府は決して0コロナ政策を止めることはない。止めたら自らの過ちを認めることになるからだ」。当局の代表が市民の抗議活動を鎮圧しようとすれば、市民は逆に封鎖を「解散しろ」と迫り、仕方なく退散する一幕もあった。北京でも同じように「3年間我々は耐えてきた。例えデモで自分が死んだとしても尊厳を持って死ぬことができる」と話す若者もデモ隊にいた。まるでひと頃の香港市民にも似た状況のようだ。しかし中国では0コロナ政策によってもこのところ感染者は増え続けている。



 香港では国安法によりほとんどの反政府分子が一掃されたように見える。そしてかなりの香港人が自由を求めてイギリスに移住している。それはジョンソン政権が受け入れを発表したからだった。それまで旧統治国のイギリスは香港市民の自由を求めるデモに殆ど反応していなかったと思われる。まるで中国当局との秘密裏の取引でもあったかのようだった。日本も相当冷たかったという印象を持った。

香港市民32万人が出国(モハPch)

 今中国の市民は「自由」や「正義」を掲げて自らの命と引き換えにこのデモを行なっている。先の第20回共産党大会では李克強首相が退陣し、胡錦濤前総書記の封じ込めに成功し独裁政権を盤石のものとして内外にアピールしたかのように見えたが….。しかし綻びはあちらこちらで見られている。

・iPhoneの工場(ホンハイ)で従業員が逃亡している。これは30万人と言われる従業員のうち一部がコロナにかかったため封鎖されたことによる。

・今回のデモは、実は各地の大学からはじまっている。これもコロナ関連で、授業が出来ないという「不自由」が招いた結果である。

・少し前のことになるが、誰かが北京の街中の歩道橋に垂幕を掲げたことがある。堂々と習近平政権を批判したのだ。しばらく気づかないまま放置されたが慌てて当局が回収している。

 こういうことが重なっているのであるが、仕舞いには収拾出来ない程の大きなうねりとなっていくことだろう。中国大陸における「地殻変動」と言ってもよく、人々がようやく「自由」を渇望し、声を上げ始めたのだ。私は以前ブログで中国国民もいつまでも馬鹿ではないと言ったが、そろそろ限界に来ているように思える。ちょうど台湾では統一地方選で民進党が国民党に敗れ、蔡英文総統が辞任したタイミングだったが、中国共産党はしばらく外に目を向ける暇はないかも知れない。

<参考>

bloombergの記事(2022.11.27)

DW(ドイツニュース);習近平反対デモ

DWニュース;中国のコロナ対策

モハP ch(デモ全土に拡大)


2022年11月15日火曜日

誰か後ろ戸を閉じて

    しばらくの間宮崎駿の「千と千尋の神隠し」が316億円で国内の歴代興行収入トップだったのを、「鬼滅の刃」が2年前に404億円と簡単に抜いてしまっていた。ちなみに「君の名は」250億円、「もののけ姫」201億円。今回の映画は新海誠監督が満を持して送った作品だったようだ。アニメ映画「すずめの戸締まり」はこれらの興行成績を塗り替えるかも知れない。

 「すずめの戸締まり」ヒロインは、岩戸鈴芽。九州の漁村に近い小高い家に叔母と二人で住んでいる。彼女は自転車で通う女子高生。ハプニングが起こるのは、東京の大学へ通う草太というイケメン男子に出会うことがきっかけで、その後変な猫が現れて、「後ろ戸」を閉じる「閉じ師」の草太がイスに変身させられてしまい、鈴芽がその役を担うことになり、二人の地震(みみずの動き)を治める旅が始まる。終わりの方で鈴芽が幼い記憶を辿り母と生き別れとなった東北の地で、津波に飲まれて廃墟と化した街に辿り着いた時に、やっとあることを思い出すシーンがある。そこで涙が出た。

 東京からは草太の友人が鈴芽を乗せてオープンカーを運転するが、カーステレオから流れる懐かしい曲はブラピ主演の映画「ブレット・トレイン」を思い起こさせるが、この「すずめの戸締まり」は「もののけ姫」とも共通した主題があるように私は思う。ポンコツの車はルパン三世にも共通するしね。映画がクライマックスに近付いた時に母からケータイの電話が鳴り止まないのには弱った。そう言えば映画が始まる前にケータイの中のお前に一緒に見ようねと囁いたっけ。

 もう一人のおれがこの冬にアンデルセンのメルヘンに応募するらしくて、お前をヒロインにするって張り切っていたよ。テーマは「約束」약속 だってさ。



     かけまくもかしこき日見不の神よ

     遠つ御祖の産土

     久しく拝領仕つったこの山河

     かしこみかしこみ謹んでお返し申す

 


 映画を見た11月14日夜(17時9分ころ)ニュースが流れた。「東北地方福島県浪江町、茨城県つくばみらい市で震度4を、東京都や横浜市でも震度3を観測する地震がありました。」また石川県でも深夜最大震度4を観測する地震が起きている。前者は、ずっと離れた三重県南東沖を震源地とする地震で「異常震域」といわれるめずらしい現象であることが気象庁により発表された。

新中東戦争のゆくえ