見出しは、JA職員であった窪田新之助氏が昨年発表したノンフィクション「対島の海に沈む」(開高健ノンフィクション賞受賞)である。毎年JAで「優積表彰」を受け続けてきた対島農協の実績トップの職員である西山義治(44歳)という男性が突然、飲酒会合の帰りの早朝車を運転中に駐車場のストッパーを越えて海に真っ逆さまに突っ込み死亡するという事故シーンから始まる。
彼西山は良く「年収はプロ野球選手並み」と豪語していたという。作者は自分がJAにいて、どうしてこんなにも自分一人で数字を叩き出してこれたんだろう?もしかして一人の仕業ではないのかも知れないと疑念を持ち始め、彼に関して資料を集め、ついに自ら対島の地を踏むことにする。
JAというのは正確には総合農協の意で、全国で1036万人の組合員がいるという。そしてJA共済連の総資産は、57兆6870億円で国家予算の半分を示している。彼が「実績」を作り出すには、架空の名義人とその印鑑が必要になる。その架空名義人が作り出した共済保険契約は膨大なもので、支払われた虚偽の申し立てにより振り込まれた共済金は彼が作った口座へと振り込まれるシステムになっていた。ただ失敗だったのは、正規の契約者が申立てた共済金にも手を出してしまったことである。十分過ぎる資金がありながら、その辺で既に奈落の底へと駆け落ちていたのかも知れない。良く選挙で町ぐるみ村ぐるみで不正が問われた事例を耳にするが、これは彼一人で作り上げたいわば王国みたいなものだった。
最近ドクターヘリが対馬で急病人を回収して飛び立ち、対島の海で墜落し、6人のうち患者と医師ら3人が死亡する事故があった。まさに対島の海に沈んだのだった。
世の中には色々な不正がまかり通っている。4月13日様々な問題を残しながら(案の定大雨と人の多さ、トイレ使用不可等で不満が噴出)開幕した万博での中抜き工事。これは手抜きというより、いわゆる土建業界で当たり前の慣習になっている下請制度のことである。東京五輪でも然り。大手企業が受注すれば、その子会社、孫会社に請けさせ工事丸投げの中で莫大な中抜きが発生する。その万博で一際目立つ大きな木のリング。フィンランドからパソナの竹中こと李平蔵(小泉内閣で経済財政政策担当など)が兄のミサワホーム会長と組んで木材を輸入し344億円もの木造リングを完成させ巨額の利権を得ているとネットでは騒がれている。JAと並んで日本の闇を追求している人は郵政民営化も問題にしている。アメリカはプラザ合意の際にも日本に対して構造改革を盛んに迫っていた経緯がある。小泉内閣(竹中大臣)が使命のように成し遂げた郵政民営化も実はアメリカの意に沿うものだった。日本の貯め込んだ資産がアメリカに流れたと言われている。もし自国民のためだと言って他国に利する行為を行なっていたのだとしたら昔風でいうなら「国賊」と呼ばれても仕方ないであろう。
話は戻るが、JAグループの中でも信金のような金融機関の存在が、農林中央金庫、略して「農林中金」である。組合員から集めた貯金を外貨建ての金融商品に投資し、売買益や利ざやで稼いでいる。2023年度の貯金残高は108兆3824億円に達するのだ。先ごろトランプ関税が仕掛けた際に、目立たないような動きが日本からあった。それは日本のある機関投資家が米国債を大量に売ったが、他国もその流れに乗り、米国債は短期間に暴落した。信任が強いドルも売られている格好である。ちょうどその後に90日間の猶予を相互関税に与えるという発表に繋がったのだった。この機関投資家は一部では農林中金だと言われている。まさか政府が後押ししたとは思えないが。農林中金は、外債による運用損益で昨年秋に最終赤字が5000億円くらいになると予想していたが、今年になり3月期の最終損失を、その4倍である1兆9000億円になると修正発表し、奥和登理事長が責任を取って辞任している。
これだけ巨額だから今農林水産省が調査に乗り出してはいるが、先のJA職員の個人の不祥事もそうだが、特別背任あるいは背任の疑いがないわけではない。個人は被疑者死亡だからという理由でも捜査はすべきで、周りの団体あるいは黙認した人間の責任も追及されなくてはいけないだろう。
長期金利の指標である10年物米国債利回りが、1月(就任時)4.5%程度だったものが、トランプ関税の影響下で逆に3.9%を下回り、今週は急に4.3%に急上昇した。米国債もそうだが、信任が高いドルも売られている。こうした有価証券などの値動きが不安定化する中、元FRBのイエレン氏も今の政府による反グローバリズムの政策を非難し始めた。トランプの周囲では株や債券やデリバティブ等インサイダー取引の疑惑を追及する声も出ている。今後の90日の間に世界のグルーバル経済について、これまでになかった動きが出てきそうだ。ベトナムの中国離れなどの動きがそうであるが注目する必要がある。
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