2022年2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻して20日程が経つ。開戦のかなり前からアメリカやイギリスの情報機関などがロシアの侵攻作戦を予想しており、入念に準備を重ねていたようだ。ロシアが所期の目的(早期に首都を陥落させること)を果たせないでいるのは理由があった。ウクライナは、対戦車ミサイルの通称ジャベリン(FGM−148)1万7000基や地対空ミサイル(通称スティンガー)2000基を西側から提供され配備しているし、そのほかにドローン爆弾、ロケット砲などの兵器も備えている。昨年米陸軍が70キロ先の目標に命中するカノン砲の実験をしているが、ジャベリンと同じく「戦場」が最も兵器の能力を試す絶好の機会であるとそれば、実戦で試す価値は十分あるだろう。(※日本もアメリカも資金提供を行っているが、資金=武器という意味である。ここにきてドイツなどウクライナに同調して武器を調達する動きが出てきている)ロシア軍が苦戦している背景には、FSBの問題(組織内部の反発、プーチン側からの粛清といった報道)や若手の軍関係者の士気や軍隊の統率能力(実際に最前線のロシア将校4人が死亡している)もあるだろうけど、ロシアの作戦が早い段階でウクライナ或いは西側に「読まれていた」ことも影響しているような気がする。最近(3・21)では、高性能な戦闘爆撃機(Su-34など)が性能の良い誘導爆弾を搭載していないという指摘もある。
チェチェンやクリミア併合など歴史的に見ても彼(プーチン)が今回の侵攻を企てたのは理由がある。私が既にこのブログで取り上げた1989年(平成元年)は、ベルリンの壁崩壊と共に東欧の諸国では次々に人々が自由を求めて「国境」を脱出したのであるが、その様を人一倍危機意識を持って見ていたのがKGBの彼だったからだ。(そのブログの内容は次のリンクを参照)※ KGBはかつての諜報機関の名称であり、現在はFSBなどと称されるが、組織の名称が変わっても、アメリカのCIAやイギリスのMI6と同じように対外任務は少しも変わっていない。
今回の軍事侵攻は、ちょうどアメリカがベトナム侵攻をし、北ベトナムのホー・チ・ミンが民族を結集して戦った有様と非常によく似ているので触れておきたい。戦争の大義名分とは何だろう?非赤化というドミノ理論(国防長官のマクナマラが提唱したのでマクナマラ・ドクトリンとも称される。後年彼はこの主張を撤回している)は、当時の大義名分のはずだったが、ちょうどウクライナ侵攻とは真逆の関係になる。
ベトナム戦争は、フランス、イギリスといった大国に翻弄されたベトナムがアメリカが介入することで二分され、1973年1月27日のパリ協定で停戦合意がなされたのであるが、アメリカ側からはキッシンジャー、ベトナム側はレ・ドクトが秘密裏にパリで会して成った和平の合意も、長い泥沼の戦争を脱し、サイゴン陥落という結果を見るまでには2年を要したのである。しかし、アメリカが撤退し、次はどこに焦点を移したかは、歴史が教えている。9.11後、アメリカはテロリストを一掃するためと称してアフガニスタンに侵攻している。(その後大量破壊兵器をフセインが隠し持っているとしてイラクを攻撃した。)ベトナム、ビルマ(現ミャンマー)、ラオス、タイなどを結ぶメコン川流域は、肥沃な大地で、黄金の三角地域(Golden Triangle)と呼ばれており、大麻の世界最大の供給拠点となっていたが、アフガンがそれに変わったのは単なる偶然だろうか?
今回ロシアの大義名分は、ウクライナがNATOの同盟国として西側に移ってしまうことや経済圏のEUに組み込まれる等を阻止するためだろう。プーチン流に言えば、ゼレンスキーはネオ・ナチであり、ロシア人民と同族であるウクライナ人を救うためということになる。しかし彼はユダヤ人であり、ネオナチであろうはずもなく、無理に西側と同調する必要もないはずだ。ひょっとしてゼレンスキー大統領は、かつてパルチザンを率いたユーゴの英雄チトーを尊敬しているのかも知れない。確かにチトーは対ソ連との関係からNATOから同盟国的な立ち位置を演じてはいたが、その実「非同盟中立」の精神は彼の身体の中に浸透していたはずだからだ。
ソビエト連邦(Union of Soviet Socialist Republics)の共産党書記長(ソ連崩壊前に初の大統領に就いた)となったゴルバチョフは、グラスノスチ(日本ではよく風通しの良い環境とかいうが、ガラス張りの政策を言うのだろう)を推進し、ペレストロイカという改革を断行していた。韓国でもそうだが、どの国にも改革を阻止する人間は現れるものだ。彼がちょうどクリミアの別荘に滞在中に拉致され、クーデターにより敢えなく失脚することになるという歴史を私たちは見てきたが、そんな昔のことではないように思える。彼の片腕として手腕を発揮したシュワルナゼは亡くなったが、共にソビエト崩壊の状況下で新しい風を起こし新生ロシアへと導いたことで私たちの記憶にはある。
ロシアにはよく政治局(かつてのKGB)出身の大統領が就くのは、政敵を把握する必要があるからだろうか。加えて最近ニュースでよく登場するのにロシア財閥のグループ「オリガルヒ」の存在がある。アメリカにも隠れた勢力「ネオコン」がいるが、プーチンといえども彼らオリガルヒの存在を無視することは出来ないし、西側から彼らが既に資産を一部凍結されている実情があることからも、FSBの動きと共に彼らオリガルヒの反対派(エリツィン派)による何らかの進展が期待出来るかも知れない。
そして最後に記しておきたいのは、今ロシアに完全と戦いを挑んでいるサイバー犯罪集団「アノニマス」の存在だ。彼らは毎日twitterを更新しているが、元々彼らの仮面は、映画「V for Vendetta」から来ている。Vと呼ばれる男は仮面を被っているが、イギリスの近未来の都市ロンドンで独裁者により政敵とされ焼かれた人物である。熱い炎で焼かれ、阿鼻叫喚の中で生まれ変わって人々のために復讐を果たすというストーリーである。ちょうどロシアの独裁者プーチンに果敢に戦いを挑んでいるのがゼレンスキーというウクライナの男であるなら、アノニマスは仮面を被ってはいるが彼の代弁者であり、ちょうど映画の中でもあったように国外からロシア国営テレビをも占拠してしまうのである。反対にロシアからのサイバーテロもありトヨタの関連企業もロシアへの制裁措置の反動として身代金を要求するマルウェア(通称ランサムウェア)を仕掛けられている。
ちょうどこのブログを作っていた3月16日(日本時間)の夜は、深夜にかけてゼレンスキー大統領のアメリカ議会演説(ドイツのDW放送がYouTube でlive公開)があったが、前日にはキエフにおいて列車で駆けつけたポーランド首相、チェコ首相、スロベニア首相らと会合を開くなど精力的に動いており、ロシア側も少しずつ態度を軟化しつつあるようにも見え、和平に向けての動きが加速しているようにも見られる。
その頃日本では福島、宮城を襲った大規模地震があり、オミクロンの他に混乱の状況が新たに加わった感がある。(海外では新種の株が流行する兆しもあるが…)まだまだウクライナ情勢、ロシア国内の経済状況は見通せないが、それは日本人にとっても遥か遠い国の出来事でないことだけは確かである。
※俄かに作成したブログであるので、改変、補追することもあることを予め断っておきます。
参考文献;クラウス・ドッズ「新しい国境 新しい地政学」
板谷敏彦「金融の世界史〜バブルと戦争と株式市場」など
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